外国人を採用する際に、国内在住の外国人か海外在住の外国人と移住地により採用手法が異なります。この記事では、海外在住の外国人を採用する際に、国内在住に外国人の採用と何が違うのか、注意すべきポイント、採用フローについて解説していきます。
目次
海外在住の外国人を採用するメリット
まず日本国内に在住する外国人と比べて、企業が海外在住の外国人を採用するメリットとデメリットを整理してみましょう。
優秀な若手人材の確保
海外在住の外国人を採用する最大のメリットは、優秀な若手人材が確保できることです。優秀な外国人は国内でも働いていますが、ITエンジニアや技術者などの採用の需要が高い職種は、すでに採用競争が激化しています。そのため海外在住者まで採用候補者を広げることによって、優秀な若手人材を取りこぼしなく採用できるでしょう。
営業やマーケティングなどのビジネス職は、日本語力が求められるため、海外在住の外国人より日本での生活経験のある国内在住の外国人を採用するケースが多いです。しかし業務内容によっては、自国の現地法人の経験などが活かせる人材を求めて採用するケースもあります。
移住地にこだわりがない外国人が多いので地方企業で採用の可能性が高まる
日本で働きたいと考えている海外在住の外国人は、日本で就職して暮らしたいという思いが強い人が多いです。日本であれば移住地・職場はどこでも良いと考える外国人も多いため、都市部でなく地方で働くことに抵抗がない場合があります。
一方で国内在住の外国人は、今の生活や家族の事情などで引っ越しを伴わない転職を望む方もいるので、地方企業にとっては国内在住の外国人より海外在住の外国人を採用ターゲットにしたほうが採用の可能性が高まるでしょう。
海外在住の外国人を採用するデメリット
入社まで時間がかかる
海外在住の外国人が日本で働くためには在留資格申請(ビザ申請)が必要なため、採用決定から入社まで3ヵ月~6ヵ月かかります。そのため即戦力をすぐに採用したい企業にとっては海外在住の外国人採用は難しいでしょう。一方で年間複数名採用が決まっている、新卒採用を行っている企業にとっては時間をかけて入社の準備をできるので、海外在住の外国人を採用するメリットを受けられるでしょう。
来日前後の生活サポートが必要
日本で働きたいと考えている海外在住の外国人のほとんどは日本で生活するのが初めてのため、来日前後の日本での生活のサポートを企業がする必要があります。具体的には、住居、引っ越し手続き、銀行開設、携帯電話契約などがあげられます。他の業務もある中で来日前後のサポートを社内でおこなうのが難しい場合は、外国人向けの住居や生活サービスを展開している企業に法人として問い合わせをすることをおすすめします。
海外在住の外国人採用が向いている企業
ITエンジニアなどの技術職の若手人材を採用したい企業
海外在住の外国人採用では、国内では採用難易度の高いスキルを持つ若手人材を採用できる可能性が高いです。日本語レベルは国内在住の外国人より多少低い場合もありますが、日本語は仕事や生活をしていく上で必然的に上達します。そのため海外在住の外国人採用を行う際には、日本語レベルよりもスキル、ポテンシャルでの採用を前提に進めると良いでしょう。
地方企業
メリットでお伝えした通り、海外在住の外国人は「日本国内であれば住む場所にこだわりがない」という人も多いため、地方企業こそ海外在住の外国人の力を入れることをおすすめします。日本語のコミュニケーションが不安な場合でも、1人目の外国人はビジネスレベルの日本語を話せる方を採用すれば、1人目の採用した方を通訳やメンターに入れることによって、2人目・3人目の採用の可能性が広がるでしょう。
来日前後の生活サポート体制が作れる企業
海外在住の外国人採用で内定を出した場合、内定を出された外国人は基本的に一人で来日することになるので、会社側でサポートできる体制を作りましょう。自社ですべて行おうとせずに、外国人の賃貸や携帯電話の契約など専門としている企業へ委託して本人と直接やり取りをしてもらうのも一つの方法です。また業務や生活していく上で課題や困りごとも発生するので、1on1などで定期的に外国人社員に困っていることはないかをヒアリングすると良いでしょう。
海外在住の外国人の採用フロー
海外在住の外国人の採用フローは、国内在住の外国人の採用フローと大きく違いはありませんが、採用フローごとに注意するポイントがあります。注意点を合わせてご紹介するので、ぜひ参考にしてください。
参考記事:【国内採用の手順解説】国内での外国人採用フローを6つのポイントに分けて徹底解説!
1.採用計画を立てる
採用計画を立てる際に、明確にしておくべき項目として以下8つがあげられます。海外在住の外国人を採用するには、採用スケジュールを決めることが最も重要です。在留資格の申請の関係で、入社まで時間がかかるため、長期的に入社時期を決め、逆算して募集と選考のタイミングをスケジューリングしましょう。
- 採用スケジュール:入社時期、募集・選考のタイミングの確定
- 雇用理由:外国人材をなぜ雇用したいのか
- 具体的な業務内容:どのような業務を担当してもらいたいのか
- 求める人物像:どのような人物、人柄の人材を採用したいか
- 外国人に求める言語スキル:日本語レベル、その他の語学レベル
- 雇用形態:正社員・アルバイトなど
- 賃金
- 雇用予定人数 など
2.求職者を募集する
採用計画の次は、外国人求職者を募集します。募集の方法は、日本人求職者や国内在住の外国人とほぼ変わりませんが、複数名の採用の場合は、採用企業が現地に行き、採用するケースもあります。
1.外国人特化の人材紹介会社もしくは求人広告へ委託
業務内容で使用する言語が、ネイティブレベルで必要な場合以外は、複数社・複数校の話を聞き、どの国で人材を募集するか決めることをおすすめします。人材紹介会社の場合は、1社複数国の現地ネットワークがあるため、 比較することができるでしょう。
2.現地へ訪問し、現地面接を行える人材紹介会社へ委託
複数人数の採用計画がある企業は、現地で訪問し、1日の現地面接で採用するパターンもあります。その日のうちに内定を出し、内定承諾か分かるので、1日で完結できることが特徴です。注意点としては、現地へ向かうので、面接官のまとまった空いている日程 (3日~5日が目安)を確保することが必要です。
3.現地の大学や学校へ問い合わせをし、大学のイベントに参加、大学で求人を告知する
採用したい国が決まっている場合は、大学に直接問い合わせすることも一つの手段です。日本語学部がある大学は、日本への就職を希望している学生も多いため、日本語学部がある大学へまず問い合わせをすることをおすすめします。
3.書類選考・面接
書類選考は、候補者の学校での専攻内容を必ず確認しましょう。専攻内容次第では、就労ビザが下りない可能性があるため、事前に企業側での確認が必要です。もし自社で確認が難しい場合は、行政書士などに相談しましょう。
面接は、主に現地へ採用企業が行き対面で面接、もしくはweb面接の2パターンあります。
現地での対面の面接は、基本的に人材紹介会社経由で行うことが多いので、必要があれば通訳などコーディネーターを入れて面接すると良いでしょう。
web面接では、候補者の移住地と日本の時差を考慮し、面接日時を設定しましょう。対面の面接と同じように外国人求職者の語学レベルに不安を感じる場合は、通訳として社内で語学が堪能な社員に参加してもらうこともおすすめします。
外国人採用の採用選考においては、スキルマッチよりもカルチャーマッチを重視したほうが良いという考え方もあります。なぜなら、母国を離れて働くため向上心やモチベーションはとても高く、もしスキルが一歩足りない場合でも成長スピードは早いからです。
国籍は違っても、根本的な考え方や意欲はその人次第なので、国によって差があるわけではありません。そのため自社で活躍できる人材かどうかのカルチャーマッチを面接では、慎重に見ると良いでしょう。
4.内定
日本人、国内在住の外国人の内定後の対応と大きな違いはありません。内定が確定した外国人候補者には、「内定通知書」「雇用契約書」を送付しましょう。また「内定通知書」「雇用契約書」は、現地語もしくは英語でも用意することが望ましいです。なぜなら、日本語がネイティブでない外国人と企業が、入社後トラブルが起きないように労働条件や勤務地、勤務内容を本人が不明点なく理解するまで説明する必要があるからです。
母国を離れて仕事をするため、特に来日後の生活について不安に思っている場合が多いため、会社での入社までの受け入れ準備について説明すると安心するでしょう。
5.在留資格認定書の申請
海外在住の外国人が国内在住の外国人の採用と大きく異なる点は、在留資格認定書の申請が必要なことです。
在留資格認定書は、就労など長期在留をするためのビザを申請する場合に、「〇〇するために日本に入国して良い」と国が判断したことを認める文書です。(「出入国管理及び難民認定法」)
在留資格認定書の申請は、日本にいる代理人(採用企業もしくは行政書士)が、入国管理局に交付申請を行います。在留資格認定書を受理した後は、本人に海外郵送で原本を送付します。申請から交付まで約1-2ヶ月かかります。
6.就労ビザ申請
在留資格認定書が交付された後に、外国人本人は母国の在外公館にて、届いた在留資格認定書を提示することでビザ申請を行います。申請からビザ交付まで、約1ヵ月かかります。またビザ発行から3ヵ月以内に入国をしなければ、無効となるので、ビザ交付前から来日後スムーズに生活できるような準備を進めておきましょう。
新型コロナウィルスの影響で、ビザ交付から入国までに3ヵ月以上をかかる場合は、在留期間の延長など一部特例が出ているため、一度出入国管理局に問い合わせをすることをおすすめします。
7.受け入れ準備・入社
ビザが無事に交付され、来日が決まったら企業側と本人で日本で生活するための準備を進めましょう。
- 住居の決定(来日後、決める場合はマンスリーマンションなどを契約)
- 住居の住民登録などの役所での手続きの案内
- 銀行口座開設の案内
- 携帯電話の契約の案内
- 日本語教育が必要な場合は、スクールや教材選び
- 配属部署へ外国人受け入れ研修や説明
在留外国人向けに多言語でサービス展開をしている企業を上手く利用しましょう。
【参考サービス】
GTN
外国人向け向け賃貸サービス、携帯電話の契約サービスを展開
CHINTAI
外国人向け向け賃貸サービス、携帯電話の契約サービスを展開
JAPAN ONLINE SCHOOL
外国人向けオンライン日本語スクール
内定ブリッジ
受け入れ企業の社内コミュニケーション研修
まとめ
今回は、海外在住の外国人の採用する場合に注意する点や採用フローを紹介しました。はじめての外国人を採用する企業で、現地へ訪問し、面接する企業も少なくありません。現地へ訪問する分、時間と費用はかかりますが、その国の国民性や文化を肌で感じることができます。現地で感じたことが、入社後の社内コミュニケーションやマネジメントへ繋がります。自社に合った採用手法で、海外在住の外国人の採用を検討してみてはいかがでしょうか。