【外国人雇用専門家が教える】企業が知っておきたい外国人の受け入れ準備とは?

大企業に限らず、中小企業においても人材不足の課題を解消したり、優秀な人材を確保することで、販路を世界中に拡大したりと、外国人社員の採用を進める企業が増えています。

しかし、初めての外国人採用においては、外国人社員との文化や価値観の違いから、現場では外国人社員の離職や不活性などをはじめとするさまざまな問題が起こることも少なくありません。

そこで、外国人社員の入社後受け入れのために、マネジメント側が受入れ体制を整えることが重要になってきています。、そこで、マネジメントの準備をするという観点で受入れ研修や勉強会など参考になるだろうポイントや注意点などを解説していきます。

マネジメント(経営陣)の準備として、特に重要なことは、目次であげた4つの内容です。それぞれ概略をつかんでいただき、自社にあったプログラムを作り、外国人社員の受入れとともに実践してみてもらいたいと思います。

勉強会(インプット)

まず、受入れ側の準備として一番重要なのは、外国人社員と日本人社員の違いを知ることです。ただし、外国人社員だからといって特別扱いすることは、NGです。外国人社員であっても、日本人同様にマネジメントや接する機会はかなり多くあります。

一方、外国人社員特有の違いもあるのでそれらの点を中心に社長、経営者、直属の上司、メンター、人事担当者など関係する人たちで勉強会をすることをお勧めしています。

やり方としては、外国人受け入れ研修など外部のサービスを受講することなどもできますが、社内の情報蓄積のためにも自社の関係者数名で持ち回りで調べ、シェアするなどの方法も有効です。最近は、ネットの情報、動画、書籍によって情報が多くとれます。

重要なのは、それらの情報をもとに関係する皆で認識を揃えて、違いを理解し、自社はどうしていくべきかを議論するプロセスにあると思っています。具体的には、以下のようなポイントで違いを知ることをやっていきましょう。

文化・慣習・宗教などの価値観や習わしの違いを知る

雇用する外国人社員の国籍などの情報をもとに生まれ育った環境を理解しましょう。

国や宗教などの情報は探せばいくらでもでてきますので、注意点なども理解しやすいかと思います。特に宗教・慣習などによる行動を把握しておくとその社員の考えの背景が理解できるので、事前に調べておきましょう。

仕事内容・キャリアに対する捉え方、考え方

外国人社員の場合、日本でキャリアを作ろうと思う段階で中・長期のキャリアプランなどに対する考えが日本人より強い傾向があります。

よって、外国人社員には「些末な作業・下積み」という価値観がないことも多いのも事実です。採用は完全に職種別で、専門職としてのキャリアを歩むのが一般的という欧米的なジョブ型の価値観で育っている場合は特にそうだと思います。

長く活躍してもらうためにもキャリアプランを明確にし、お互いが理解しながらキャリアにあわせて仕事の機会を提供できるような評価と配属の仕組みを作り、関係するマネジメント陣で事前に検討しておくと外国人社員の早期離職を防ぐことができると思います。

まずは、外国人社員がなぜ、日本で働きたいのか、自社で働きたいのか、という働く目的を受入れる社員は全員で共通認識をもちましょう。

また、「どうしてこの仕事をするのですか?」と質問する外国人社員も多くいるとよく耳にします。そう言われるとイラっとするマネジメント陣の日本人社員がいることがまれにあります。世界的に見ても日本は独特です。グローバルスタンダードで言えば、仕事について理由や根拠を明確に説明するのは当たり前という文化があります。日本人感覚で「空気を読む」ことを期待しすぎると、なかなか信頼関係を構築するのは難しいと思います。

ハイコンテクスト・ローコンテクストなどと言われますが、簡単に言うと曖昧なものがハイコンテクストだと思ってもらっていいと思います。外国人社員に指示や説明をするとき、また報告を求めるときなどはローコンテクストとして、何らかの基準や数値でしっかりコミュニケーションできるようにしましょう。

受入れ準備としては、マネジメント陣数人でグループを作って、日本人社員に指示や説明している様子を模擬的にやってもらい、それらが数値・基準・背景(目的)など表現としてアウトプットされているかをチェックしてみたりしてみましょう。

言語の違いによるミスコミュニケーションやコミュニケーション不足

外国人社員のマネジメントで一番難しいのは、言語の壁です。

社員同士がうまくコミュニケーションがとれないと、誤解や不満が溜まったりして定着・活躍が難しくなります。

もともと英語を公用語にしている会社は、日本では少ないので、まず初期の外国人採用についてはビジネス会話以上の日本語が話せる外国人を採用したほうが良いでしょう。

一方で、それでも言語の壁や齟齬が生まれるので、図示>文章>口頭を常にマネジメント陣は意識ができるように数回、皆で実際のマネジメント業務に照らし合わせて練習をしてみてください。理解度の違いが痛感できると思います。

日本人でも同様かと思いますが、口頭より、文章を書いたものを見てもらう、文章よりも絵で見てもらう方が圧倒的に理解度はあがります。時間を短縮したり、めんどくさがらずにしっかり伝えることを目的に、図示>文章>口頭の順を意識してみてください。

異文化マネジメントや異文化理解をする研修をやる前の事前図書としては、この本がおすすめ!

異文化理解力――相手と自分の真意がわかる ビジネスパーソン必須の教養 (日本語) ハードカバー – 2015/8/22エリン・メイヤー (著), 田岡恵 (監修), 樋口武志 (翻訳)https://www.amazon.co.jp/dp/4862762085/ref=cm_sw_r_tw_dp_x_0c8dFb7H1Z0P0

研修(ワークショップ)

一つ目で「外国人と日本人の違いを理解」したと思います。これはあくまで知識・情報をインプットした状態です。次に重要なのは、実際に外国人社員を受入れるマネジメント陣を中心にワークショップ形式で実践をしてみることです。頭で理解して頂くものを使えるものにしていきましょう。

研修(ワークショップ)については、初めてであれば、外国人社員の受入れ研修や異文化マネジメント研修などを皆で受講することがおすすめです。経験豊富な専門家に聞くことで、育成計画の継続性は高まると思います。

ただ、コスト的にもそれなりにかかりますので、自社で内製してやってみようという会社に関しては、以下のような観点で研修を組み立てると良い思います。

1.自分が初めて海外で外国人として働くことを想定する(チーム議論)

  • 自分が初めて海外で仕事をするとして、上司や周りに何を期待しますか?
  • その時に何が不安ですか?

2.文化・宗教・慣習の違い(個人ワークとチーム議論)

コミュニケーションの傾向の違い

  • 連絡なしに10分遅刻をしてきた外国人社員がいます。どうしますか?
  • 2週間でできる仕事を依頼しました。1週目が終わって、報告が欲しかったのにありません。どうしますか?
  • いずれも日本の「暗黙知」「常識」を見える化・言語化する必要があります。出てきた答えを明文化していきましょう。

日本のビジネスマナー・ルールを考える

  • 皆で日本だけのビジネスマナーだと思うものを挙げられるだけ列挙してみましょう。
  • それらに対して、「なぜ、そのルール・マナーがあると思いますか?」答えを書き出していきましょう。
  • 自分の仕事の進め方を書き出してみてください。それを他の人と交換してプロセスの違いに気が付いたら、その差がなぜ生まれているのかをお互いに確認しましょう。

上記が終わったら、その情報をまとめて外国人社員にも共有してあげることで、自社で働くには上記で示したようなルールが求められるのだなと事前に外国人社員も理解できるので後から、日本のビジネスマナーの細かさに外国人社員のモチベーションが下がるということも減少すると思います。

3.外国人社員とのコミュニケーション活性練習(チーム議論)

  • 「多分大丈夫」「察してね」の撲滅
  • 定期的なミーティングを実施しましょう
  • 外国人社員からの改善案を伝える場を設けましょう
  • 仕事以外のことも話しましょう
  • 日本人社員の方から自己開示しましょう。
  • お互いのことを伝えて、違いを認め合いましょう

上記の内容をチームごとにどのくらいの頻度で実施して、何を注意して、何を話すことを目的にするのかを皆で議論して理解したり、実際に導入したりしてみてください。

ルール・仕組み作りミーティング

日本人社員も含めた全ての社員の定着・活性のためにもいくつかルールの整備や仕組み作りで必要なことはないでしょうか?

主に会議体や体制面などの仕組み作りで有効なものを記載します。これらも研修(ワークショップ)のなかなどで関わるマネジメント陣を中心に議論をして、導入を検討するのが良いと思います。

メンター制度

次章「メンタートレーニング」でも記載しますが、外国人社員の受入れ時の重要なポイントは、「特別扱いしない」「一人にしない」ことです。

「一人にしない」ためにも上司ではない、斜め上の先輩などをメンターとしてOJTなどの教育を担当してもらい、業務以外の相談も含めて評価に関係ない心理的安全性の高い関係で相談にのってあげる環境を作ってはどうでしょうか。

1on1ミーティング

1on1ミーティングには、二つのミーティングがあります。一つは、上記のメンターによる1on1ミーティング。もう一つは、上司による定期的な1on1ミーティングです。これらをしっかり、毎週ないし、隔週などで時間をとることによって、外国人社員の成長や心理的な変化をとらえるのに役立ちます。

3か月もしくは、半期ごとの自己評価と上長評価(目標設定も含む)

これは、多くの企業ですでに導入されていることが多いと思いますが、改めて見直すのも良いかもしれません。

特に前段で一部記載しましたが、明確な目標は、いつ、なにを、どのくらいという基準が明確になっている必要があります。外国人社員の場合はとても重要視している傾向が強いのでしっかりと目標設定し、それに対しての評価を実施することを半期単位で回していくことが望ましいと思います。

業務以外のチーム、集団でのイベント開催

「一人にしない」という解決策の一つとして、配属部署以外の社員との関係性の構築などを目的に様々なイベントやコミュニティを意識的にマネジメント陣が作っていくことが組織の活性化という観点から見ても良いと思います。

メンタートレーニング

最後にメンター制度を導入する際は、メンターになる社員向けにも受入れ前に研修(トレーニング)をしておきましょう。内容としては主に以下の3つを二時間程度で行えると良いと思います。

  • メンター制度の導入の目的、背景、期待することなどをマネジメント陣から伝える
  • メンターは、日々の外国人社員からの相談にのる際のルールなど理解する(たとえば、該当社員の評価はしない・責めない、叱らない・心理的安全な環境を意識的に作る・退職懸念などは、上司ではなく人事に共有するなどいくつかのルールを事前に用意しましょう)
  • その上で1on1ミーティングのやり方などをレクチャーと模擬を実施しましょう。経験学習のサイクルなどを使って、日本人社員相手でもよいので、ロールプレイング(模擬)などを実際にやってみましょう。

まとめ

外国人社員受入れの準備として、マネジメント陣の勉強会、研修、トレーニングなどをまとめました。外国人社員が日本の会社で定着、活躍するためには、本人たちのがんばりもそうですが当然、受入れるマネジメント陣の知識、経験などの向上もとても重要です。受入れ前にしっかり時間をかけて準備することで、外国人社員の活躍を期待する気持ちも強くなると思います。

また、特に初めての外国人社員の採用を行った企業などにおいては、今後の事業の拡大のために欠かせない存在となれば、継続して採用、育成していくことになるので、初めてのタイミングこそ、しっかり準備をして迎えいれて頂きたいと考えています。

今回のアドバイスも皆さまの会社のお役に立てれば幸いです。