近年、上司と部下が定期的に行う1対1の面談である1on1ミーティングを導入する企業が増えていますが、外国人社員を採用した企業にとって1on1ミーティングは、重要なコミュニケーションの場となります。今回は、実際に1on1ミーティングを導入している企業例や、質問例を合わせてご紹介します。ぜひ外国人社員の採用後、マネジメントの一環として1on1の導入を検討する際に参考にしてください。
1on1とは
1on1ミーティング(以下1on1)とは、上司と部下が1対1で行う定期的なミーティングを言います。1on1は、部下の成長を促進することを目的としたミーティングです。米国シリコンバレーでは、当たり前に行われていましたが、日本では2012年にヤフー株式会社が導入したことをきっかけに、近年導入する企業が増えています。
1on1は、月1~週1の頻度で30分ほど実施している企業が多く、部下の現状やキャリアの悩みを上司と共有し、上司はその内容に解決策やフィードバックすることで、部下の成長を促進します。そのため、上司が部下に報告を求めるような会議とは異なり、部下が自分の悩みを解決できたり、進むべき方向性を理解できることがゴールとなります。
1on1の効果
パーソル総合研究所の日本で働く外国人材の就業実態・意識調査 結果報告書によると「職場に孤独感を感じている」の外国人は32.6%と、社内のコミュニケーションに課題を感じている外国人が多いことが分かります。孤独感を感じていると、「ジョブ・パフォーマンス」「継続就業意向」「会社満足度」への低さに繋がり、転職意向も高くなる傾向があります。一方で、オンボーディングや会社からのサポート・配慮が手厚いと、孤独感を感じる人の割合は低くなっています。
つまり、日本で働く外国人社員の場合、言語がネイティブでないからこそ上手く伝えられない場面が日本人よりも多く発生します。そのため、コミュニケーション不足で孤独感を感じやすく、日本人社員よりも定期的なコミュニケーションを取れる場が必要となってきます。それゆえに、会社から1on1のような定期的にコミュニケーションを取れる場を設定することによって、外国人社員の不満や悩みを解決するきっかけになる場合があります。孤独感を感じやすい外国人社員にとって、気軽に悩みや現状を共有できる場があることにより、孤独感を感じることが減り、上司との信頼関係が作られ、外国人社員の定着や活躍に繋がることが期待されます。
また、2020年7月末現在、新型コロナウイルス感染症拡大によって、各企業で感染防止対策としてリモートワークの導入が進んでいますが、オフィスで仕事をしていたときよりも、コミュニケーションの機会が減ると言われています。コミュニケーションの機会が減っている今だからこそ、1on1を導入することにより、コミュニケーションロスによるパフォーマンスの低下を防ぐ一つの対策になるのではないでしょうか。
1on1を実施している企業例
ここまでで、実際の1on1のメリットや実施目的などを説明しました。ここからは、外国人採用を行っている企業で、1on1を実際に導入している企業例を紹介します。
- 【目的】モチベーションアップ
- 【質問例】
- 自身のコンディションを自分の言葉で話してもらう(日本語能力向上の意味も兼ねて)
- 今苦戦していることはなにか
- 自分が実現したいことはなにか
参考:中国出身留学生を新卒採用!初の外国人受け入れで重要なこととは? 【株式会社エヌアセット】
- IT業/従業員40名(うち外国人社員11名)
- 【目的】業務組織改善/キャリアアップ
- 【質問例】
- 業務や会社全体で不安に思っていること、気になっていることはあるか
- 業務の改善点や要望はあるか
- チャレンジしたい分野はあるか
1on1の質問例
1on1を実施するときに、どのような質問をすればいいのか分からない方に向けて、外国人社員が悩みやすいポイントをまとめた質問例を用意しました。ぜひ1on1を実施する際に、参考にしてください。
1on1の導入するための前提事項
1.1on1の導入する理由・目的を伝える
評価面談とは違うミーティングであることを伝え、本人が本音で話せる場であること、ミーティングを自分の成長の機会として活かす場として理解してもらうことが大切です。
2.上司が傾聴するスキルを身に着ける
1on1は、部下の考えていることや気持ちを引き出すことが最も重要です。そのため、上司自身に傾聴スキルが乏しいとせっかくのミーティングの場が活かせません。もし苦手と感じている方は、コーチングや傾聴に関連する本を一度読んでみるとよいでしょう。また課題に対して、答えを与えるのではなく、外国人社員本人が考えられるような課題解決のためのヒントを提供することが必要です。、加えて、外国人社員に期待していることをハッキリ伝えることで、課題解決後の未来を想像させることも重要です。
3.ミーティングのログを残す
1on1で話した内容と次回アクションのログを残すことをおすすめします。部下が「できるようになったこと」「改善できたこと」を互いに把握することに、より部下のモチベーションアップへ繋げられるでしょう。
1.相互理解/心身の状態チェック
- 最近なにか嬉しい事はあったか?
- プライベートで熱中していることや趣味はあるか?
- 日本で生活していて、困っていることはないか?
- (家族が離れている場合)母国の家族と最近連絡取ったか?
- 最近寝れているか?体調の変化は感じるか?
2.業務・組織課題チェック
- 自身のコンディションを晴れ、曇り、雨で例えるなら何?それはなぜか?
- 業務で困っていること、改善したいことはないか?それはなぜか?
- 業務でうまくいったことは、なにか?それはなぜか?
- チーム内のコミュニケーションで、うまくいかないときがあるか?
- 会社や業務に対して何か要望はあるか?
3.キャリア思考のチェック
- 現在の業務でやりがいを感じるのは、どういう場面か?
- 自身の強みと弱みは何だと思うか?それをどう活かしたいか?
- 日本に何年くらい在住したいか?もし母国に帰る場合は、母国で何をしたいのか?
- チャレンジしたい分野や学んでみたい分野はあるか?
- 日本語教育など会社に支援してほしいことはあるか?
- 相互理解、心身のチェック(5分)
- 前回の1on1のアジェンダの振り返り、次回アクションの確認(5分)
- 業務・組織課題のチェック、キャリア思考のチェックとフィードバック(15分)
- (4.上司から会社やチームの方針、戦略の共有事項があれば)
- 次回アクションの確認(10分)
まとめ
社内コミュニケーションは、どうしても直属の上司次第になってしまいがちですが、全社で1on1を導入することで、定期的にコミュニケーションを取れる場が作られます。外国人社員に関わらず、上司との信頼関係を築き、社員に気づきの場を与える。そして部下が自走できる機会を与えることが、企業として社員の定着や活躍で重要なポイントになるのではないでしょうか。