【年間400件の申請業務を経験した専門家に訊く】採用担当者が行政書士との上手く付き合うには?

外国人採用を決定したときに、外せないのが在留資格(ビザ)申請。その申請業務の取り次ぐ行政書士の付き合い方ひとつで、在留資格の申請がスムーズになり、入社までトラブルなく進めることができます。今回は、採用担当者がスムーズに申請を依頼するために、申請前・申請中・申請後のフェーズごとの行政書士との付き合い方を竹田紘己行政書士事務所にお伺いしました。

1.初回面談時に必要な3つの確認事項

一口に外国人採用といっても、海外からエンジニアなどを呼び寄せる場合と、日本国内の学生などから新卒採用、中途採用をする場合では、申請する行政手続が違います。そこで、今回は両方のケースに共通している「行政書士に依頼する場合にどの様にしたら円滑にいくのか」という観点で説明をします。

【年間400件の申請業務を経験した専門家に訊く】行政書士を選ぶ3つのポイント」という記事のなかで「行政書士を選ぶポイント」の一つに、「依頼人と実際に会ってくれる行政書士に依頼すると良い」という事を挙げさせていただきました。

それに関連して、まず初回面談時に(現在はコロナの状況もあるので対面でなくwebであってもそこは差し支えないと思います。)確認しておくべきポイントを挙げさせていただきます。

1.今後の手続きの流れを確認する

初回面談の時点からの今後の手続きの流れについて、きちんと説明を受けましょう。初めての事ですので流れやタイムスケジュールを把握しないと、いつの間にか手続きが進んでいたり、逆にいつまでも手続きが進まず、いつになったら申請してくれるのかとヤキモキすることにもなりかねません。

2.見積書の提示をしてもらう

当たり前のことかもしれませんが、行政書士の報酬見積もりを初回面談時に提出してもらいましょう。行政書士は、申請書作成の対価として、もしくは行政手続きの申請代理(や申請の取次)の対価として、報酬を受けることを仕事にしております。申請の結果、ここでいうとビザの許可を得ることを報酬の対価にして仕事をしているわけではありません。行政手続の許可、不許可は、各行政官庁が法令に照らし合わせて、裁量で決めますので、許可が出るかどうかは、行政官庁が決めることなのです。

あくまでも、行政書士が報酬を受けるのは、書類作成、書類手続の対価、あるいはその相談の対価になりますので、行政書士にビザの手続き相談に行ったその段階で、報酬(相談料)を請求されても、致し方ないことになります。

従って、見積書の提示を受けずに進めてしまうと、後になって「こんなハズじゃなかった」ということになりかねません、追加料金やオプションなども含めて、依頼した行政書士に提示してもらい、お互いの齟齬をなくし、双方合意の上進めるのが安心です。

よく聞くのは「許可が出なかったのに、報酬を請求された」とか、「許可が出なかったのに報酬が返金されなかった」という声です。

行政書士としては、行政手続を手伝ったので、その時点で報酬を請求しても問題ないという認識がございます。お互いに誤解がないように、あらかじめ初回の面談の際に、確認しておくことが必要になります。

3.行政書士担当者の連絡がつきやすい時間帯を確認する

行政書士の多くは、一人で責任を持って案件を担当しています。従って、複数の案件を同時並行して受任しているため、立て込んでいるときは、連絡がつきにくくなることもあります。従って、行政書士担当者の比較的連絡が取りやすい日時(曜日・時間帯)を予め、確認しておくとストレスを抱えにくくなります。

2.面談後~申請までの応対について

1.書類作成にある程度時間がかかるのは、しっかりと仕事をしている証拠

面談後、場合によっては現地取材後、行政書士が書類作成に入ると思いますが、ここで申請を焦るあまり、行政書士にしつこく進捗状況を確認するのはあまり望ましくありません。

しっかりとした申請書類の作成をするのであれば、それなりの時間がかかることを知っておくとよいかもしれません。出来上がったフォーマットに入力して、ただ書類を提出するというものではないので、それなりに時間がかかります。具体的には、会社や現場を取材し、事業の状況などと照らし合わせて書類を作成するため、予想以上に時間を要する場合があります。

申請までは素早く対応してくれたが、いい加減な書類が出されているというケースよりも、ある程度時間がかかっても、しっかりとした書類が出されている方が、結果的にみても当事者利益にかなっていると思います。

もちろん、あまりにも遅い場合は、進捗状況を確認した方が良いです。進捗を確認するタイミングとしては、書類収集後3週間を過ぎても作成が終わっておらず、その間の状況の報告や内容の確認もないような場合には連絡し、進捗確認した方が良いと思います。

しかし、信頼できる行政書士を見つけて頼んでいる以上、信頼して任せる事も上手く付き合っていくためには大事になってきます。

②書類の提出に協力する

行政書士に書類作成の過程で、当初は想定していなかった補強の説明書類を求められることもあります。その場合でも「最初から言ってくれればいいのに。」と思ったり、「今ごろ何でそんな事を言ってくるのか。」と頭にきてはいけません。

特に、ビザ申請は、判断する地方出入国在留管理局の裁量が大きく、当局のホームページに案内されている提出書類を出せばそれで許可が降りるかといえば、決してそうではありません。

依頼した行政書士の判断によっては、書類作成の過程で「ここの説明が弱いな」とか、「ここの事実が当局の誤解を生むな」とか、専門家の観点から、さらに説明が必要だと思うこともあります。その場合に追加して、当初は予定していなかった別の「疎明資料」が欲しいと行政書士が依頼してくるケースもあります。

その場合は、「ああ、しっかりと仕事をしてくれているんだな」と思ってください。全ては、誤解のないスムーズな手続きの為に必要だと思い、時間がかかっていたとしても、書類提出に協力してあげてください。

3.結果受取後の応対について

1.不許可の連絡を受けた場合の対応

ビザ申請の結果は、許可または不許可という形で示されるので、そこで無事許可が出れば、(成功報酬金がある場合は)成功報酬を支払い、在留カードや認定証明書を受け取り終了となります。

他方で、不許可になった場合は、当事者全員がまず、反射的な反応としてショックを受けるケースがほとんどです。誰しもが一時的な拒絶を味わうので、嫌な感情になります。不許可の場合は、入管当局に不許可理由の説明を直接聞きに行けるのですが、ショックのあまり、いろいろな憶測が、申請人、会社、行政書士など当事者の間で飛び交います。「会社の状態が悪かったのか」「申請人の経歴が悪かったのか」「行政書士の出した書類が悪かったんじゃないか」など、様々です。

しかし、憶測でものでいっても、何も始まりません。当局の判断は、当局に聞くまでは何もわからないのです。従って、この段階でも焦らず、依頼している行政書士を信じて、その指示を仰ぎましょう。

2.不許可の説明を受ける際には会社担当者、行政書士、申請人(在留資格変更許可申請、在留期間更新許可申請の場合)の三者で聞きにいくのがベスト

不許可の場合、出入国在留管理庁に不許可の理由を確認することが出来ます。その際に、外国籍の申請人だけで行って説明を聞いても「何のことやらさっぱりわからない」となることが少なくありません。

そこで、専門家である行政書士の出番となります。申請の取次を依頼している案件ならば取り次いだ行政書士が一緒に不許可理由を確認するよう依頼されるとよいでしょう。

再申請する場合は、この不許可の理由が当局のデータベースに残っており、その理由を払拭しなければ、再申請しても許可を得られません。この不許可理由の説明の立会が非常に重要になってきます。

よくあるトラブルの多くは、不許可理由に関する誤解がもとになっているケースが多いです。会社担当者が、不許可理由の説明に行政書士と行かないケースは、行政書士に責任転嫁をして、トラブルになってしまうケースが多くあります。

入管当局の不許可理由の立会に行政書士と行けば、決して行政書士の仕事の不手際で不許可になったわけではなく、当局がそのように判断したから不許可になったことが明らかになります。当事者全員が一緒に、不許可理由の立会に行き、不許可理由をよく聞き、入管当局の誤解や、当方の説明不足の点があった、入管当局と当方の行き違いがあったことを確認し、再申請に備えるというのが、非常によいケースになります。

入管当局も、決して不当に審査しているわけではなく、むしろ、先例や、事例に基づいて、非常に常識的に、公平に慎重に審査をしています。しかし、審査のプロであっても、会社の属する業種、業態のプロではありませんので、提出された資料という限られた情報で審査をすると、申請人側の説明不足で不許可になってしまうこともよくあるものです。

不許可説明は、入管当局がどの様に判断されたのかを直接聞けるので、非常に価値がある場になります。是非とも、当事者全員で、入管当局の意見を聞きにいってください。

3.それでも行政書士を変えたいという場合には

様々な対処をしても、人間同士のお付き合いですので、信頼関係が破綻してしまうと、再申請は、別の行政書士に依頼したいという事態もあると思います。実際に、これ以上の付き合いもしたくないとのことで、不許可となった時点から他の行政書士を探される企業様も少なくありません。

当事務所でも初回の申請に関わっていない案件でも不許可の立ち合いから、再申請を依頼されるケースもあります。その場合、初回の申請資料を集めてもらって出来る限り情報を整理して臨みますが、出入国在留管理局の中には実際に取り次いでいないと聴き取りの同席を断られる場合もあります。

そのため、再申請になった場合も含めて、最初から最後までお付き合いいただけるのかどうか、その後のフォローも含めて確認しておくと良いでしょう。

まとめ

採用担当者が行政書士とうまく付き合っていくためには、相性が合い、信頼できる行政書士なのかどうかという点でお付き合いをされるのがスムーズにいくと思います。行政書士に依頼を丸投げをしないで、コミュニケーションをとっていくことが重要です。

今回挙げたのはあくまでも一例ですので、信頼できる行政書士を見つけられたらその行政書士の指示に従うのも良いでしょう。そんな中でも少しでも気になる点がございましたら質問し、疑問点は払しょくしておくことをおすすめします。その段階で曖昧な回答をするような行政書士だと行政書士選びからやり直してもよいかもしれません。

この記事をご覧の日本企業の皆さまが、信頼できる行政書士を見つけたのち、その行政書士と末永い信頼関係を築いていき、満足のいく外国人採用を進められたら嬉しいです。

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