外国人を採用する時には、就労ビザの申請が必要です。しかし、申請したからといって、全ての申請が許可されるのではなく、申請内容によっては不許可になる可能性があります。特にはじめての外国人採用の場合は、不許可になった際に、採用企業や外国人本人が大きな不安に感じることが多いです。しかし、申請が一度不許可になったからといって、採用自体ができなくなるのではなく、再申請を行えば採用できる可能性があります。
今回は、年間400件もの申請業務を担当されている竹田紘己行政書士事務所の竹田紘己先生に「就労ビザが不許可にになった場合にどうすれば良いのか」をお伺いしました。
*今回の記事は、就労ビザのなかでもホワイトカラーの外国人が取得している在留資格「技術・人文知識・国際業務」を想定して書かれています。「技術・人文知識・国際業務」の在留資格申請をした方は、ぜひこの記事を参考にしてください。
目次
就労ビザが不許可になる理由
就労ビザが不許可になる理由は様々ですが、いくつか具体的な理由を分類すると4つのポイントに分類できます。
- 従事する業務に「資格該当性」があるかどうか(その在留資格に当てはまるかどうか)。
従事させる業務が単純な作業ではなく(非専門的・非技術的分野の仕事ではなく)、入管法別表に掲げる在留資格に該当する業務(専門的・技術的分野の仕事)であるかどうかが判断されます。 - 法務省令で定める基準(上陸基準省令・日本にその在留資格を取得し、上陸してくる際に当てはまっていなければならないとする基準)に適合するかどうか。
- 素行不良がないかどうか(在留状況が不良でないか、入管法などに違反していないか)。
- 提出された申請書、添付資料などが真正なものかどうか(偽物の書類を提出していないか)。
例えば、2.の法務省令で定める基準の一つに、「日本人が受ける報酬と同等以上の報酬を受けるかどうか」などがあり、これらが適合するかをを出入国在留管理局は、判断しています。
こうした基準や資格該当性、申請人本人の素行など一つ一つ審査され、実態と説明に齟齬があったり、判然としない点が一点でもあると、出入国在留管理局は「申請を疑義なしとしない」となり、不許可となります。
不許可になったら企業担当者がするべきこと
不許可通知が到着後、国内に既にいる外国人の在留資格の変更申請(「在留資格変更許可申請」。以下「変更申請」といいます)や在留期間の更新申請(「在留期間更新許可申請」。以下「更新申請」といいます)の場合は、申請人本人と会社担当者で管轄の出入国在留管理局に行き、不許可となった理由の説明を聞くことができます。(その申請を取り次いだ行政書士の同席も可)
この不許可の説明は、申請人である外国人本人が出入国在留管理局に呼ばれる形式になりますが、一人で出入国在留管理局に不許可理由を聞きに行くと、専門性が高い話や日本語の問題で、完全に理解できない場合もありますので、必ず企業担当者様も申請人と同行し、不許可の理由を聞きに行くことをおすすめいたします。
ここでの聴き取りの精度によって次の再申請の方向性が定まりますので、非常に重要な場となります。入管の審査結果の意図を汲み取り、次の再申請に円滑に繋げる必要があります。
行政書士がその申請を取り次いでいない場合で、国内での変更申請や更新申請を行いたい場合は、不許可理由の聴き取りに同席することは原則できないことが多いものの、ケースバイケースで、申請人の同意があれば立ち会いが許されることもあります。
海外からの外国人を採用する場合に、外国人を呼び寄せるための在留資格認定証明書交付申請(以下「認定申請」といいます)の場合は、申請を取り次いでいなくても、会社からの依頼があれば行政書士も、不許可理由聴き取りの場に同席可能です。
再申請しても許可を得るのが難しいケース
変更申請や更新申請をして1回目の不許可であれば、その不許可理由によって再申請して、許可を得ることができることも多いですが、そうでない場合もあります。
例えば、本人に問題がある場合(3.の在留状況が不良の場合)は再申請しても、また不許可となってしまうケースがほとんどです。本人に問題がある場合(在留状況不良)でよくある例としては、資格外活動許可の範囲内である週28時間を超えてアルバイトをしているようなケースです。
こういったケースでは、いくら基準適合性があり、資格該当性のある業務に従事するとしても許可が下りるのは難しくなってしまいます。そのような場合は、一度帰国して、再度、在留資格の認定申請手続きを行い、会社から改めて就労目的で呼び寄せるのが良いでしょう。
再申請に関して、厳密には出入国在留管理局は形式が正しければ受付はしてくれるので、再申請できないということは無いのですが、そもそもの許可要件を満たさないと、受付し即日に却下する、いわゆる門前払いのような扱いをされることもあるようです。
再申請の手順(期間・費用・行政書士への依頼)
期間
再申請するまでの期間は、不許可理由にもより変わってきます。資格該当性がない、基準省令を満たしていない理由となると、その不許可となった理由を改善してからの申請になりますので、時間は相当かかります。
立証不十分、説明不足、審査の過程で申請内容を誤解されてしまったのであれば、再度その部分に関わる事実を示し、裏付ける資料などを提出する必要があります。その準備に数週間かかることもあります。
費用
費用は、出入国在留管理局で、不許可の説明を受けた時点で、在留カードの在留期限が切れてしまっている場合は、現在行っている申請を、特定活動(出国準備)へと切り替える申請に変更し(申請そのものを変更する)、特定活動(出国準備)ビザへ切り替えることになります。その際に収入印紙代4,000円が必要となります。
再申請を、外国人本人が申請する場合(自社申請の場合)は、その結果受け取りの際に、法定手数料4,000円を収入印紙で納付いたしますが、それ以外の費用はかかりません。(認定申請の場合は簡易書留郵便代として404円分の切手を貼った定型封筒が必要なります。)
行政書士に書類作成や、申請の取次を依頼する場合は、その費用が別途必要になります。
不許可になったのち、行政書士に依頼する場合
企業申請や本人申請で不許可になってしまったら、専門家である行政書士を頼るのもいいでしょう。その場合であっても、過去の申請記録は消えませんので、不許可となった申請と次の申請内容で整合性を取る必要があります。1回目と2回目の申請内容に齟齬があると、その点で不許可理由となってしまうこともあるのでご注意ください。
当事務所でも1回目の申請で不許可になってしまいご相談にくるケースはよくあります。前回の申請書を保管されていない場合も多いので、申請内容はお聞きした内容でまとめるしかない事も多く、確認漏れがあったりしたまま再申請すると、前回の申請と整合性が取れていない点を指摘されてしまいます。そのため、申請内容はコピーを取っておくと後々役立ちます。
手元にない場合は、保有個人情報開示請求を行い、入管当局に提出された申請書一式を取り寄せることもできますが、1ヶ月程度時間がかかってしまうこともあるので、やはり手元に保管しておくと良いでしょう。
まとめ
不許可の通知が届くと申請者やそれに関わった人々は、嫌な思いをします。ただ、不許可であっても出入国在留管理局で不許可の理由を確認し、出入国在留管理局が疑義に思っている点を払しょくすれば、再申請して許可に繋がることも多々あります。不許可になったからといって悲観せず、まずは出入国在留管理局へ行き、不許可理由の聴き取りをきちんと行いましょう。
今回は採用企業様が、採用する外国人の申請を行うケースを想定して記事をまとめました。費用は掛かりますが、初回から専門家である行政書士に依頼された方が、就労ビザの申請はスムーズに進むことが多いので、専門家を頼ることをおすすめします。
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