近年、日本では少子高齢化の影響で働き手が不足しており、外国人の採用は当たり前のものとなってきました。大企業のみならず中小企業においても、人材不足への対処、さらにはグローバル化による業績向上の目的で外国人を採用する企業が増えています。
一方で外国人をせっかく採用しても、すぐに辞めてしまう、期待していた通りに活躍せず、本人のモチベーションも下がっている、といった悩みを抱えている方もいるのではないでしょうか。
そこで今回は、外国人が活躍している企業ではどのような特徴があるのか、3つのポイントを説明します。
1. 社内でのコミュニケーションを重要視
外国人を雇用する多くの会社は、日本人を含めた社内でのコミュニケーションを重要視しています。なぜなら、外国人と日本人ではミスコミュニケーションが発生しやすいからです。
日本人のコミュニケーションでは「暗黙知」を含むことが多いです。これは日本語がハイコンテクストと呼ばれる、「すべてを言葉にする必要はなく、お互いになんとなく理解することができる」という特徴を有しているからです。例えば、職場でゴミが落ちていた際に上司が部下に対して、「ゴミが落ちているよ」といったシーンがあります。これは言葉の裏に「ゴミを拾ってください。」という意味が込められており、聞き手もこれを理解することで素直にゴミを拾います。
このように、ハイコンテクストの文化では、曖昧な表現を好んだり、多く話さないといった言葉の背景が伝わりにくい特徴があります。そのため、話し手よりも聞き手の方が責任が重く、聞き手の解釈に依存していると言えます。
しかし、価値観・文化・慣習が違う外国人では、言葉の後ろにある意図が伝わらない可能性が高いでしょう。これは、自分の伝えたいことを明確な言葉にするローコンテクストな文化で生活した人も多いからです。そのため、コミュニケーションギャップが起きてしまい、日本人が思ったように外国人社員が動いてくれないということがよく起こってしまうのです。
ミスコミュニケーションがよく起きる場では外国人は自分の仕事に自信を持つことができず、自分の力を発揮することはできません。また、コミュニケーションにストレスを感じてしまい、孤独を感じてしまう可能性があります。外国人に指示を出す際には、目的・期限をしっかりと言葉で伝え、理解の確認を徹底しましょう。
コミュニケーションを重要視するもう一つの理由は、外国人社員を一人にしないためです。日本語に自信がない外国人社員は、コミュニケーション不足で孤独感を感じてしまう場合があります。株式会社パーソル総合研究所の「日本で働く外国人材の就業実態・意識調査」によると、外国人社員のうち32.6%が「私は孤立しているように思う」と回答しています。また、孤独感を感じている外国人社員は、仕事のパフォーマンスや会社満足度が低く、転職意識が高くなる傾向にあるとの報告があります。
安心して職場で働けるように、日本人と外国人社員とのコミュニケーションの場を提供したり、1on1制度などを設けて、不安や悩みを聞いてあげることが重要です。
・目的・期限をしっかりと言葉で伝え、理解の確認を徹底している。
・1on1制度などの、不安や悩みを相談できる場がある。
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2. 日本人と同じ評価制度
外国人が活躍している企業では、外国人だからといって日本人とは別に扱ったり特別扱いはしていません。国籍の関係なく、昇進や昇格の機会が与えられており、日本人と同じ評価制度が用いられています。
特に評価制度に関しては、明確な評価基準を作ることが重要です。日本での就労を希望する大半の外国人は、向上心が高いです。そのため、自身が正当に評価されていないと感じると、不満が溜まり転職してしまう可能性があります。評価基準を見える化し、客観的な評価・処遇を行う必要があります。
また、評価について丁寧なフィードバックをすることも重要です。ただ評価の結果だけを伝えられただけでは、納得できない社員も存在します。優れていた点、悪かった点について説明を行うことで、その後の業務へのさらなる活躍が見込めます。
外国人が活躍している企業では、年に2回社員と上司とで評価について面談を行うケースが多いです。部下と上司の認識をすり合わせることで、双方が納得いく評価につながります。フィードバックの場では、「よく頑張っているよ」といった抽象的な説明で終わらせるのではなく、できるだけ具体例を示しつつ説明しましょう。具体的なフィードバックを心掛けることで、評価面談は上司と部下の間での重要なコミュニケーションの場になるのです。
・評価基準を見える化し、客観的な評価・処遇を行っている。
・評価面談の場を設け、双方が納得するよう評価についてフィードバックを行う。
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3. 柔軟な休暇制度
外国人社員が母国に戻る際には、飛行機移動だけで2~3日要するので、長期的な休暇を希望することが多いです。そのため、外国人が活躍している企業では、固定された休暇などではなく、柔軟に休暇を取れるような制度を取り入れています。必要な時期に休暇を取得できるようにすることで、家族との時間を大切にでき、結果的に本人のモチベーション向上につなげられ、外国人社員の定着と活躍が期待できるのです。
では、外国人が活躍している企業では実際にどのような休暇制度を取り入れているのでしょうか。例えば、帰国休暇制度を設置している企業があります。外国人社員に与えられる休暇制度で、有休とは別に年に3~5日程度与えられています。帰国休暇と有休を使うことで、移動に時間がかかってしまう外国人社員も長期的な休暇を取得でき、家族との時間を大切にすることができます。その結果、会社への満足度が上がり、定着や活躍に期待できるのです。
また、国の文化や宗教によっては、伝統的に休暇を取る期間が存在します。例えば、ベトナムの「テト」と呼ばれる旧正月(2月上旬頃)では、長期休暇を取り家族と過ごすことが伝統的です。その他にも、イスラム教のラマダン(絶食期間)の後には休暇をとる習慣があり、多くのイスラム教信者である外国人が帰国を希望します。
そのため、企業はいつ帰国して休暇を取りたいか、事前に外国人社員にヒアリングしておくことが重要です。海外の文化・宗教に理解を示して、柔軟な対応を取りましょう。
・固定された休暇ではなく、柔軟な休暇制度
・海外の文化や宗教に理解を示し、柔軟な対応を取っている。
・社員の家族との時間を大切にしようとしている。
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4. まとめ
今回は、外国人が活躍している企業の特徴について解説しました。これらの特徴をもつ企業では、外国人だけでなく日本人もエンゲージメントを高く保って仕事をしています。外国人が働きやすいように社内を整備することで、結果的には日本人も働きやすい環境を作ることが可能となるのです。
ぜひ、外国人を雇用している企業は、今回紹介したことを参考にしてみてはいかがでしょうか。また、新たな制度を設ける際には、会社側で一方的に設定するのではなく、社員と対話をしながら一つずつ設計し、働きやすい環境を作っていきましょう。