外国人の採用が決定後、入社までどのような手続きをすべきか分からない採用担当者や人事総務の方も多いのではないでしょうか。日本人の入社手続きと大きく異なる点は、まず在留資格(ビザ)の準備です。しかし在留資格の準備以外にも外国人が安心して入社できるように、企業側による入社前サポートがリテンション施策としても重要です。今回は、採用企業の手続きのプロセスから必要書類などを解説していきます。
目次
外国人の入社手続き7つのプロセス
外国人の採用が決定後から入社までは、以下の1~7のプロセスに分けられます。採用する外国人が国内在住、海外在住によって在留資格の手続きや受け入れ準備が異なるので、移住地別に分けて解説します。またそれぞれプロセスで、どのような関連機関に相談や問い合わせをすべきかも合わせて解説するので参考にしてください。
1.雇用契約書・内定通知書の作成、送付【社労士】
まず外国人の採用が決定したら、雇用契約書・内定通知書を作成します。日本語が話せる外国人を採用する場合は日本語の書面で大きな問題はないですが、採用する外国人の母国語や英語も明記された書面も合わせて用意できるとベターです。また日本語が話せない外国人を採用する場合は、外国人の母国語や英語の書面を用意しましょう。労働条件に関する日本語は、日常的に使う日本語とは異なるので、理解の相違がないように多言語で用意することが理想的です。
英文の雇用契約書は、厚生労働省が公開している「外国人労働者向けモデル労働条件通知書(英語)」を参考にすると良いでしょう。
また書面を送付するだけでなく、本人に書面を見せながら労働条件や仕事内容を説明する時間を作る、もしくは本人から質問を気軽に受け入れることことを伝えましょう。国によっては、雇用契約書の内容を重要視するため、入社後に契約書に明記されていない業務はやらないというトラブルも起こり得ます。そのため、本人に内容を理解させ、納得してもらった上で双方のサインを取り交わしましょう。
はじめての外国人採用では、少し手間がかかる印象があるかもしれませんが、入社後に後々発生するかもしれない労使トラブルを未然に防ぐために大切なポイントです。契約書や就業規則などは、社労士に相談をしましょう。
2.在住資格(就労ビザ)の申請・変更【行政書士】
入社承諾を得たあとに、在留資格(就労ビザ)の申請・変更の手続きを行います。本人の在留資格によって在留資格の申請・変更が必要か、不要か異なります。
国内在住者
一般的には、留学生などの学生を採用する場合は、在留資格の申請は必要となります。一方、中途採用は、【1.在留期限が迫っていない(入社日から3ヵ月以上先)2.本人の前職と同様の職務を行う】場合は、現在の在留資格のまま転職ができるので、申請が不要のケースもあります。まずは行政書士に相談をしましょう。また転職エージェントに依頼している場合は、エージェントの担当者にも確認すると良いでしょう。
海外在住者
海外在住者は、基本的に必ず在留資格の申請が必要となります。海外在住者の場合は、在留資格が許可されるまで3ヵ月前後かかるため、何より先にまず在留資格の申請の準備、行政書士の相談に取り掛かりましょう。
3.受け入れ準備【関連サービス】
在留資格の準備と同時に外国人が日本で生活するためのサポートを進めましょう。具体的には、以下のようなサポートを外国人は求めています。
国内在住者
- 住居の確保
- 役所の手続き
※必要に応じて対応
国内在住者で引っ越しを伴わない場合は、企業側でサポートすることは少ないでしょう。一方国内在住者で日本の生活が長くても、引っ越しを伴う場合は、一人で引っ越しの準備をすることは困難なことがあります。一度本人に企業のサポートが必要か確認しましょう。
海外在住者
- 住居の確保
- 住民登録などの役所手続き
- 銀行口座の開設
- 携帯電話の契約
- 日本での生活全般、防災時の対応の説明など
※通訳など書類準備の対応
海外在住者は、日本での生活の基盤を作るために基本的に会社側で生活サポートを行いましょう。外国人にとって、何かを「契約」すること自体のハードルが高いからです。住居の確保は、来日前に会社側で準備するか、マンスリーマンションを借りて、来日後に自分で探してもらいましょう。
外国人向けの生活サービスを展開している会社があるので、それらの会社に委託することも一つの方法です。
日本での生活については、法務省が公開している「外国人生活支援ポータルサイト」のガイドブックの情報を参考に、外国人に共有すると良いでしょう。
4.入社前手続き【社労士】
受け入れ準備が整ったら、入社前の書類提出などの準備を進めましょう。「外国人の社会保険はどうなるのか?」疑問に思う方も多いと思いますが、基本的に外国人も日本人と同じ条件で社会保険に加入する必要があります。そのため、日本人同様に社会保険の手続きを進めます。社会保険の不明点は、社労士に相談しましょう。
また「在留カードのコピー」「パスポートのコピー」は、今後の在留資格の更新のために必要となるので、入社前に提出させましょう。
国内在住者
日本人同様に社会保険などの入社手続きを進める。
海外在住者
国内在住者の手続きと大きな違いはありません。税金は、原則として「租税条約」により免税の適用がある場合を除き、所得税は20%が源泉徴収の対象となります。ただし、 給与所得控除は適用されません。また住民税は、来日1年目は前年に日本に居住していないので原則として住民税は非課税です。2年目以降は、日本人と同じように課税となります。
5.入社【社内】
入社時のオリエンテーションは、日本人よりも就業規則や社内ルールなどを細かく説明しましょう。特に出勤時間などの時間についての考え方は、文化の違いからギャップが起きる可能性があるため、具体的に時間を例に説明すると良いでしょう。
また外国人の採用を今後も拡大させる予定がある企業には、入社した外国人に就業規則や社内ルールなどの日本語を英語や母国語に翻訳させることがおすすめです。今後入社する外国人は日本語以外でも社内情報を把握できるので理解が深まります。
6.外国人雇用状況の届出の提出【社内・社労士】
外国人が入社後、入社月の翌月末までに「外国人雇用状況届出書」をハローワークに届け出ることが義務づけられています。氏名、在留資格、企業情報などについて届出を提出します。申請内容は、難しいものではなく、またオンラインで申請可能なため入社後の社内フローに入れ込むと良いでしょう。外国人雇用状況の届出を申請し忘れた場合の罰則となるので、注意しましょう。
7.在留資格(ビザ)の更新【行政書士】
在留資格の期限に応じて、入社後に在留資格の更新が必要となります。在留期限は、1年・3年・5年のどれかなので、入社時に在留期限を必ず確認をしましょう。
一般的には、期限が近くなったら外国人本人から申出があることが多いですが、資料の準備などに1ヵ月ほどかかることがあるため、企業側でも入社時に在留期限の管理をすると良いでしょう。
また入社時と職務内容に大きな変更が無ければ、申請は更新となるので、申請の難易度はそこまで高くありません。在留資格については、行政書士に相談をしましょう。
まとめ
今回は入社手続きのプロセスについて解説しました。手続きは、やらなくてはいけないことが多い印象を受けるかもしれないですが、すべて社内で対応する必要はありません。社内で担当すること・社外へ依頼することを分けることで、業務改善にも繋がります。これを機会に社内外の担当業務を整理してみてはいかがでしょうか。