外国人の採用をすることが決まるとまずは、採用プロセスを検討することになります。日本での外国人就業者も160万人近くになり、日本の労働人口の2%を超えました。その労働市場のなかで自社の採用・募集をしっかりと計画を立てて採用プロセスを決め、活動していかないと優秀な人材の採用はなかなかできません。「自社でほしい人材はどんな人材なのか?」「その候補者はどこにいるのか?」
そして、「どうやったら応募してくれるのか?」それらを考慮したうえで、応募者を選び、内定を出して、双方が合意すれば入社となっていきます。この一連の採用プロセスのなかで一番重要なことが、ターゲティングとメッセージングなのです。今回は、外国人採用におけるターゲティングとメッセージングの重要性を詳しく解説していきたいと思います。
採用プロセスのフレームワーク「TMP」とは
まず、採用活動全般においては大きく分けると「集める・伝える・選ぶ・決める」という4つのステップがあります。そのなかで一番重要な集める、伝えるの部分は、「TMP」というフレームワークを使ってご紹介したいと思います。
そもそも、TMPとはなんぞや?と思われるかもしれません。これは、私が人材採用の基礎を学び、経験したリクルート社(現リクルートキャリア)でよく使われていた考え方の枠組みの通称なのです。
このTMPの詳細を説明する前に、まず集める、伝えるというのは、どのような活動なのかから説明します。まず、そもそも集める、伝えるというのは、一種のマーケティング活動です。マーケティングの基本は「誰に・何を・どのように」を事前に検討し、準備することです。
どの市場に出回っている広告も、この3点を当然、熟慮してから作られています。逆に「誰に・何を・どのように」が考えられていない、もしくは、漠然としている広告は、いくらお金をかけて広告などをだしても効果はほとんどあらわれません。なんとなく多くの人見られたい、そういう広告だと見た人の心に残らなく、広告効果は低いでしょう。
つまり、「誰に・何を・どのように」を決めることが最大の採用成功のカギになるわけです。この「誰に・何を・どのように」の3点がそのまま「TMP」に言い換えられます。
それでは、『TMP』の説明です。
TMPとは、下記の頭文字を取ったものです。
- Targeting:「誰に」⇒適切な採用ターゲットの設定
- Messaging:「何を」⇒ターゲットを動かす魅力あるメッセージの作成
- Processing:「どのように」⇒最善・最適な採用プロセスの設計
通年で多くの新卒採用や中途採用を行っている企業であれば、しっかり考えられているケースもありますが、外国人採用のように年間にスポットで採用することが多い場合には、しっかりTMP設計をやっていないケースが多いように感じます。
この3点をきちんと採用計画段階で押さえられれば、外国人の採用においても優秀な人材の採用成功につながります。
外国人採用などでしっかりTMP設計を行い活動すれば、他社より採用優位性があがり、優秀な人材を獲得しやすくなるといえると思います。
それでは、次から具体的なTMPの設計について説明していきます。
ターゲティング(Targeting)の設計
TMP設計でいうところのターゲティングは、「誰に」の部分です。採用プロセスでいうと、誰に入社してもらいたいか、誰に応募してもらいたいか、を決めるということになります。
優秀な人材が欲しいのは、皆一緒です。そこでまずは「優秀な」「良い人材」の中身を細分化して考えましょう。
外国人採用を考えている企業に「どんな人材がほしいですか?」と聞くと、良くこんな返答が戻ってきます。
「国籍はこだわらないけど、地頭が良く、前向きで、勉強熱心で、日本語もできて、日本の文化や日本の会社に慣れている方がよいな。更にしっかり腰を据えて働いてくれる人が良い。」
これに中途採用だと経験などの要件も加わるわけです。当然、そんな方が応募してくれたらどこでも採用されると思います。このような候補者がたくさん応募してくれたら理想です。しかし、労働市場にはそれほどパーフェクトな人材はそうそう出てきませんし、本当にそのすべてが必要でしょうか?
ターゲティングは、どの要素は削れるのか・どの要素は必ず持っていてほしいのか、その要素を因数分解すると本当に必要なものはなんなのか、などを改めて整理し、優先順位をつける必要があります。
ターゲティングで要素を見定めるために一番良い方法は、外国人社員のみならず日本人でもよいので、現在自社で活躍している人材にインタビューをしてみることです。内容は以下のような観点です。
- 入社したきっかけ
- 自分が一番成長したなと思うところ
- やりがいに感じていること
- 苦手なこと
- 現在の環境で今満足している点、不満な点
3人程度のインタビューを実施するなかで、なにかしら共通点が見えてくると思います。
例えば、「OJTなどを通して、企画提案力が向上したのでお客様から喜ばれるのがやりがいだ」という活躍人材の声があれば、ターゲット層は「企画力が弱くても率直に先輩から学ぶことができる人材」ということになるかもしれません。
このように自社のなかからヒントを見つけることでターゲティングが可能になります。
メッセージング(Messaging)の設計
TMP設計でいうところのメッセージングは、「何を」の部分です。前の章でターゲットが決まったら、そのターゲットを動かす魅力ある情報をメッセージとして伝えないと応募も入社もしてくれません。つまり、ターゲットの心を動かす(喚起する)内容である必要があります。
例えば、自社の優位性・魅力が「給料はそんなに高くないが、リモートワーク可能で働き方を選べる」ことが魅力だとしましょう。
先ほどの例であげたインタビューをした活躍されている人材の共通項である、「OJTなどを通して、企画提案力が向上したのでお客様から喜ばれるのがやりがいだ」から導いたターゲット層が「企画力が弱くても率直に先輩から学ぶことができる人材」としたときにこの魅力を伝えて「良い会社だな!働きたい!応募しよう!」となりそうでしょうか?
お気づきだと思いますが、少しずれているのです。ターゲットの人はこう思うでしょう。
「先輩からしっかり学べる会社が安心できて良いけど、リモートワークの会社だとなかなか、先輩から学ぶチャンスがすくないかもしれないからこの会社はやめておこう。」
となるケースが多いと思います。そうならないようにするために、ターゲットにあったメッセージを探しましょう。
一番良い方法は、先ほどインタビューした方にもアイデアを出してもらうことだと思います。その活躍されている人材が良いと思う魅力は、これから採用するターゲット人材にも刺さる可能性が一番高いと思いますのでぜひ、実践してみてください。
プロセシング(Processing)の設計
TMP設計でいうところのプロセシングは、「どのように」の部分です。ここは、今回のメインテーマではないのですが、ターゲットに対してのメッセージが決まったら、それを「何で伝えるか」を最後に検討します。
ただし、なぜ、ターゲティングとメッセージングが最重要と言っているかというと、ターゲティングとメッセージングは自社のことを良く理解している経営者や幹部、人事などが考えたほうが良いからです。
プロセシングに関しては、それらが決まっていれば、紹介会社や求人広告の営業担当者に相談することで適したものは何であるか、検討することができます。
上記のような記事であれば、外国人専門の紹介会社の使い方や求人広告で外国人を募集する際のポイントなどについて書かれているので、プロセシング設計の参考にして頂ければと思います。
まとめ
最後までご覧いただきましてありがとうございました。
採用プロセスのなかで一番重要なことは、ターゲティングとメッセージングを考え、決めることです。これは、一度決めても、実際に採用プロセスを実施してみて、目的とずれていたら軌道修正をしながら自社にとっての優秀な人材の定義を見つめなおしていくということも重要です。これらを磨いていくことによって、既存の社員の育成や評価、活性化策にも繋がっていくと思いますのでぜひ、実践してみてください。今回の記事がお役に立てば幸いです。