【即戦力の外国人を採用するには?】中途採用手法を徹底解説!

人手不足の背景から各業界で、採用ターゲットを広く設定する企業が増えており、そのうちの一つに外国人があげられます。また新型コロナウイルスの影響で、未経験より即戦力を求める企業も増えています。今回は、外国人の就職状況や注意点、中途の採用手法をご紹介します。

外国人の就職状況

厚生労働省が、2020年1月31日に公表した 「外国人雇用状況の届出状況について(報道発表) 」によると、外国人労働者の数は165万人(前年比13%増)に上ります。就労外国人の数は、7年連続で過去最高を突破し、2014年からの5年で2倍に膨らみました。しかし就業者全体に占める外国人労働者の割合は2.2%に留まっており、まだまだ就業者全体で見ると数は少ない状況です。

また本発表での就労外国人の数には、技能実習生や留学生のアルバイトも含まれています。中途採用のターゲットとなる在留資格は、就労ビザ(高度人材、技術・人文知識・国際業務)を取得している人材となります。就労ビザを持つ外国人の数は、約32万人となっており、就労外国人総数の18%になります。

国籍別で見ると最も多いのは、中国の41万人(前年比7%)で、就労外国人全体の25%を占めます。続いてベトナム40万人(前年比26%)、フィリピン17万(前年比9%)と、アジア各国が上位に並びます。

都道府県別で見ると、東京が48万人(全体の26.6%)、愛知が17万人(全体の8.0%)、大阪が10万人(全体の7.3%)の順となっています。主に大都市での採用が進んでいますが、都道府県別の増加率をみると、奈良が前年同期比で 22.9%増加、沖縄が同 22.0%増加、宮城が同 20.6%増加となっており、地方での採用が徐々に進んでいることが分かります。

また産業別で見ると、製造業が 48万人(全体の29%)を占め、次いでサービス業が26万人(全体の16%)、卸売業・小売業が21万人(全体の12%)と続きます。製造業が多い理由としては、就労外国人のうち技能実習生が57%と過半数を占めており、現場での人材不足から採用が進んでいる背景があります。

外国人エンジニアの採用ニーズが高いと言われている情報通信業は全体の4%、教育・学習支援業では4%と産業別でみるとまだまだ採用が進んでいない現状が分かります。

企業が外国人を採用する目的

外国人を採用する事業所は、24万か所(前年比21%増)と年々増えています。企業が外国人を採用する目的、そして課題は何なのでしょうか。

外国人を採用する目的

日本総研が2019年4月に発表した「人手不足と外国人採用に関するアンケート調査結果」によると、企業が外国人を採用する目的は、「人手不足のため(50%)」が最も多く、人手不足の企業がまず採用を検討することがわかります。次いで「外国人採用で組織を活性化したいため」(15%)、「外国人の方がまじめに働くため」(13%)、「外国人ならではの業務があるため」(7%)など、外国人の能力や人柄ゆえという声も上位を占めました。

採用で考慮する点(複数回答)は、「人物・人柄(69%)」、「日本語能力(68%)」と多くの企業が業務を遂行するうえでの基礎的な面を挙げています。一方で、「人手不足で、基本的に誰でもまず採用」のように、採用基準や能力などにこだわりがない企業も2割弱あります。外国人を教育する前提でまず受け入れるという考えの企業が少ないことがわかります。

外国人採用の課題

日本総研が発表した同調査によると、外国人労働者の活躍状況は「期待以上の活躍をしてくれている」と「ほぼ期待通りの活躍だ」が合わせて8割弱と、外国人に対する企業の満足度は高いことが分かります。一方、日本人を中心に人手が集まりにくいなか、2割弱の企業では期待したほど外国人労働者の活用による成果を得ていないという回答もあります。

活用上の課題(複数回答)は、「コミュニケーションに苦労する(44%)」と外国人と日本人のコミュニケーションのギャップにあるようです。次いで、「育成した人材が一定期間しか雇えない(37%)」、「人材のばらつきが大きい(29%)」など、一定のスキルを持つ外国人の確保と定着を望む企業が多いことがわかりました。

日本人の採用でも育成や定着に課題はあります。外国人だからといった人材の側面に重点をおくのではなく、会社として社内のコミュニケーションや育成の見直しをすることが大切でしょう。

採用事例

外国人を中途採用した例を3社紹介します。それぞれどんな狙いがあるのかを考えながら読んでみてください。またこれらの参考事例をもとに自社の採用活動の参考にもしてみてください。

【1】海外企画として外国人を採用し、海外新規事業がスタート
都道府県:東京都
事業内容:出版業
従業員人数:50名
採用した外国人:日本の大学卒/中国人
採用理由:国内売上が伸び悩む中、アジア展開を検討
成果:自らアジア各国の市場調査、販路開拓を担当。中国の大手IT企業と協業して、電子書籍の販売が決定。
【2】即戦力のエンジニアを採用、2人目以降リファラル採用も進む
都道府県:京都府
事業内容:IT
従業員人数:120名
採用した外国人:母国の大学卒/イタリア人
採用理由:東京と比べ即戦力のエンジニア人材不足から採用を検討成果:京都という土地柄が外国人に魅力的に感じられ、Skype面接で現地から採用。就労ビザ許可がおりるまでの期間は、海外リモートで業務委託からスタート。採用した外国人を中心に新規サービスの開発のスピードが加速、またリファラルで2人目の外国人採用に成功。
【3】母国での経験を活かして、現場の即戦力に
都道府県:宮城県
事業内容:製造業
従業員人数:120名
採用した外国人:母国の大学卒/ベトナム人
採用理由:人手不足から他社の採用事例を参考に、採用を検討
成果:母国で日系企業での設計経験があったため、育成はスムーズに進む。学習意欲も高く、自ら日本語の勉強を社員に依頼。真面目で明るい人柄からも日本人社員の刺激となっている。

外国人を中途採用する際の注意点

企業が外国人を中途採用する際の注意点を3点ご紹介します。

1.採用ターゲットを定める

ミスマッチを減らすために、日本人と同じように採用ターゲットを設定することが重要です。ペルソナ設定のように可能な限り細かく、具体的な人物像を設定することが理想です。しかし、はじめて外国人を採用する際には、まず多くの外国人に会うことで、人材のすり合わせができるため、以下の4点でまずターゲットを絞るといいでしょう。

マインドや価値観

採用ターゲットを定めるため、企業が外国人を採用する際に最も重要とすべき点はマインドや価値観の一致です。

人材の価値観はこれまで積み重ねてきたキャリアとは一致しません。育った環境の違いはあるものの、根本的な価値観は、国籍は問いません。カルチャーマッチするか、入社後に活躍してもらえそうか、事前にお互いがきちんと確認する必要があります。

日本語能力

業務上での日本語の使用シーンを考え設計しましょう。営業や企画など社外の日本人とコミュニケーションが発生する場合は、ビジネスレベルの日本語が必要です。またエンジニアなど社内のコミュニケーションのみの場合は、日常会話レベルまで落とすと、優秀な人材を取りこぼすことなく募集できます。

日本語以外に必要な語学

日本語レベルと同様に語学の使用シーンを考え、日本語レベルを設計しましょう。英語力を測る際に、企業は「TOEIC」の点数を設定することが多いですが、TOEICの受験者は、日本や韓国などアジア圏が過半数です。グローバルでは、英語以外の母国語を話す人材の英語力を測る試験は、「IELTS」もしくは「TOEFL」が基準なので、「IELTS」「TOEFL」の試験のレベルも知っておきましょう。

企業が求人募集をする際、国籍に関する内容を記載することは法律(労働基準法、職業安定法)で禁止されています。しかし採用背景から指定したいケースもあるため、求人票には「中国語がネイティブレベル」「アメリカの文化や生活習慣に対してネイティブレベルで理解があること」など職業上必要なスキルとして記載しましょう。

業務経験レベル

日本人同様に担当業務を考え、業務経験レベルを設計しましょう。また技術職で使われる日本専用ソフトは使用経験がない外国人もいるので、具体的な業務内容から必要なスキルや経験を考えるといいでしょう。また短期的、中長期的に担当してもらう業務からキャリアプランも踏まえて考えることをおすすめします。

2.受け入れ体制をつくる

外国人を採用するにあたり、「特別扱い」するのではなく「配慮」できるように社内の受け入れ体制を整えましょう。最も大事なことが、日本人社員に「なぜ外国人を採用するのか」採用の目的を理解させることです。

受け入れの失敗例としては、外国人社員とのコミュニケーションでなかなか意図が伝わらず、日本人社員がストレスを抱え悪循環に陥ることがあげられます。しかし日本で働く外国人は、異国の地で働くというチャレンジ精神を持ち合わせており、現場に良い影響を与えます。

採用前に特別な制度を作る必要はなく、採用後に必要に応じて社内で順応できるような仕組みを作ると良いでしょう。そして経営者もしくは採用責任者が現場へ説明を尽くし、現場の受け入れ体制を作りましょう。

また海外から直接採用する場合は、日本での生活のサポート体制があると外国人は安心します。住居、在留資格(ビザ)、口座開設などがあげられます。入社した外国人に、入社時のガイドラインの作成を多言語で依頼してもらうと今後の受け入れでも活用できます。社内で対応することが難しい場合は、区官庁や自治体の外国人向けのポータルサイトや外国人専門の各サービスを利用すると良いでしょう。

▶︎「入社後のサポート」の参考事例を見る
外国人学生を新卒採用!来日の不安を払拭する愛のあるサポートとは?【誠信システムズ株式会社】
【参考】外国人生活支援ポータルサイト(法務省)   
    GTN(外国人専門の不動産賃貸仲介事業)

3.在留資格や雇用手続きの事前確認

日本人の採用と大きく異なるのが、在留資格(ビザ)の手続きが必要な点です。在留資格の手続き以外は、日本人と同じ流れで採用活動をすることができます。担当業務によっては在留資格の問題で、外国人が採用できない場合があります。

はじめての外国人採用で、自社で就労ビザを申請することは難易度が高いので、行政書士や外国人専門の採用サービスへ依頼することをおすすめします。

また社会保険も日本人と同じ手続きが必要です。採用後に必要書類や届出の準備など、事前に社内で確認しましょう。外国人用の入社手続きチェックリストを作成することもおすすめです。

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【在留資格の種類】日本で働ける外国人と働けない外国人の違いとは?【在留資格「技術・人文知識・国際業務」とは?】
どのような職種が該当するのかを詳しく解説【在留資格「技術・人文知識・国際業務」の取得条件】技人国ビザ取得のための要件とは?

採用手法

外国人の中途採用は、日本人の中途採用と同じく公的機関や人材紹介など既存の採用方法以外にも、さまざまな方法があります。ここから先では、採用方法をどのように選択したらよいかご紹介いたします。

1.外国人雇用サービスセンター

厚生労働省による外国人向けのハローワークでも外国人の採用ができます。2020年現在は、東京・名古屋・大阪・福岡とエリアは限られますが、無料で募集できるのでまず問い合わせをしてみてはいかがでしょうか。

【参考】東京外国人雇用サービスセンター
    名古屋外国人雇用サービスセンター
    大阪外国人雇用サービスセンター
    福岡学生職業センター(福岡新卒応援ハローワーク)

2.外国人専門の人材紹介サービス

採用担当者の工数の削減や外国人採用ノウハウがない場合は、採用のプロである人材サービスを利用すると良いでしょう。外国人の集客は、日本人とは別で行っているので、総合人材サービスではなく、外国人専門の人材サービスを利用することを推奨します。また在留資格の確認や採用後のアドバイスも受けられるのもメリットです。

ただし、人材紹介会社への報酬金額が発生するため、採用予算を組んで検討すると良いでしょう。

3.外国人専門の求人媒体サービス

採用人数が多い場合は、外国人専門の求人媒体サービスの活用も候補にあがります。グローバルで利用されているLinkedInやIndeedなどの求人媒体も候補にあげられますが、多言語で求人を掲載することが求められます。外国人をはじめて採用する企業は、日本で働きたい外国人に特化した求人媒体サービスを利用すると良いでしょう。

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【国内採用の手順解説】国内での外国人採用フローを6つのポイントに分けて徹底解説!

4:SNS

採用したいターゲットの利用率が高いSNSで、募集することもできます。主にアジアや欧米ではFacebook、中国ではWeiboなどがあげられます。Twitterは、日本での就職・転職を希望している外国人の利用率は低いです。そのため直接採用するよりも、知人からのリファラル目的で投稿すると良いでしょう。

採用サービス比較

中途外国人特化の採用サービスも近年増えています。サービスごとに特徴があるので、採用ターゲットに合わせた採用サービスを利用するのはいかがでしょうか。今回は各サービスの特徴をご紹介します。

【日本在住の日本語話せる外国人の紹介サービス】jopus career

特徴
・日本在住、日本語が話せる外国人の独自のデータベース
・登録者の出身国は、アジアだけでなく欧米も含む120カ国以上
・紹介実績企業の半数以上が、はじめて外国人を採用する企業で入社までの徹底サポート

提供企業:株式会社ゴーリスト
URL  :https://career.jopus.net/company/

【最短2週間で外国人と面接実施が可能な人材紹介サービス】GOWEL

特徴
・ベトナムをはじめとしたアジア人材が登録
・語学を活かした観光やサービス業での実績が多数
・最短2週間で1社限定面接会を開催
提供企業:ゴーウェル株式会社
URL  :https://gowell-japan.com/

【外国人紹介実績が1000名以上】GLOBAL POWER

特徴
・134ヵ国、約4万の外国人データベース
・外国人特化のコンサルタントが在留資格
・ビザをサポート・インバウンドなどの外国人の派遣事業もあり

提供企業:株式会社グローバルパワー
URL  :https://globalpower.co.jp/
【月間370万PV、国内最大級の外国人向けメディア】GaijinPot Jobs

特徴
・欧米を中心とした英語が話せる人材が登録
・日本在住者だけでなく海外在住者にもアプローチ可能
・データベースにスカウトサービスもあり

提供企業:株式会社ジープラスメディア
URL: https://jobs.gaijinpot.com/employer/index/index/lang/ja

まとめ

日本企業のうち外国人を採用している企業は、約10%と言われています。世界経済フォーラム(WEF)の2019年版「世界競争力報告」でも、日本の「外国人採用」の意識は下位順位となっており、外国人の採用が進んでいるとはいえません。

逆に考えると、外国人の採用をする企業が少ないので、優秀な外国人の獲得がしやすい状況でもあります。数年後、外国人の採用が当たり前になる前にぜひ検討してください。

【参考】

外国人雇用状況の届出状況について(厚生労働省)

「人手不足と外国人採用に関するアンケート調査」結果(日本総研)

世界競争力報告/Global Competitiveness Report 2019(世界経済フォーラム)