外国人学生を新卒採用!来日の不安を払拭する愛のあるサポートとは?【誠信システムズ株式会社】

「外国で生活する」ことにあなたはどんな不安を抱きますか?生活環境も人間関係も今まで経験したことのない場所に移り住むのはとても大変です。日本で働きたいと希望する外国人にとっても、日本人が海外で暮らすことと同じように不安を感じています。

今回は、外国人学生を新卒採用している誠信システムズ株式会社(以下、誠信システムズ)専務取締役の金澤 瞳さんと課長の関根 周平さんにインタビューしました!外国人社員を迎え入れるために実際に行っている施策とは?外国人と働く上で大切にしていることなどお話を伺ってきました。

話し手:誠信システムズ株式会社 専務取締役 金澤 瞳(かなざわ ひとみ)さん

中国・黒竜江省牡丹江市生まれ。ご主人の仕事の都合で1998年に来日、現在は帰化している。ご主人が誠信システムズの創業に携わり、事務面をサポートするため専業主婦を経て同社に入社。現在は採用活動にも携わり、採用〜入社後の社員のサポートや組織作りなどに従事している。

 

登場人物:誠信システムズ株式会社 課長 関根 周平(せきね しゅうへい)さん

都内某大学 情報マネジメント学部卒業。IT(情報技術)の専門知識・スキルに加えて、企業の会計・財務、マネージメント・組織運営に関する知識とノウハウを学習。2015年11月誠信システムズ入社。現在は人事として採用全般を担当し、海外での採用活動にも足を運んでいる。

 

事業内容について教えていただけますか

関根さん:通信会社やメーカーの開発プロジェクトなど、”生活に欠かせない社会貢献性の高いサービス”のシステム開発案件に携わっています。

お客様の業界は様々で、これまでの実績としては、携帯電話の4Gや5Gなどの”通信系開発”、銀行や証券会社の業務システムに係る”金融系開発”、電子カルテシステムなどの”医療系開発”があります。セキュリティー面が高い仕事が多いので、弊社の社員がお客様の会社へ常駐という形で、1社につき1チーム5~15名ほどで形成しています。

それぞれのチームの中で半数以上は外国人社員です。海外に向けたサービスをお持ちのお客様が多いので、国籍がグローバルであることで仕事の広がりを感じています。

半数以上が外国人とのことですが、外国人採用を始めたきっかけはなんでしょうか

関根さん:初めて外国人採用を検討した頃は中国との仕事が多く、中国の企業からシステム開発の業務を受託する”オフショア開発”の案件も多くありました。そのため、中国企業との架け橋となる中国人社員を採用したことが外国人採用をはじめたきっかけです。

その後、英語圏の仕事を頼まれることが増え、「英語ができるエンジニアが欲しい」とお客様からご要望があったので英語の話せる外国籍の方を採用しました。とても勤勉で日本語と英語が堪能だったのでコミュニケーションは全く問題ありませんでした。気がつけば、日本人、中国人、ベトナム人と多国籍な会社になっていましたね。

どのように優秀な外国人を採用されていますか

関根さん:国籍は分け隔てなく採用しているので、2019年時点の社員構成は1/3が日本国籍、2/3が外国籍と、採用実績は外国籍の社員の方が多いです。弊社ではこれまでの開発経験よりも「勉強して技術を磨いていきたい」と意欲的でポテンシャルの高い方を採用したいと考えているので、専門学校や大学での新卒採用に力を入れています。

日本で意欲的で優秀な学生を新卒採用するのはハードルが高いため、以前は日本の大学を卒業した外国人留学生を採用していました。より採用の幅を広げるため、2018年からは韓国・中国・ミャンマーを現地訪問して採用活動を行っています。今年もミャンマーの大学では70名ほど面接しました。どの国でも英語が堪能な方が多く、中には5ヵ国語を話せる方とも出会いました!

弊社ではグローバルなシステム開発の案件も多いので、海外のエンジニアとの橋渡しをするブリッジSE(ブリッジシステムエンジニア)の活躍の場が広がっています。語学力を活かしながらシステム開発に携われるので、その点に魅力を感じてくださる優秀で意欲的な方は是非採用したいと考えています。

海外で新卒で採用する上で心がけていることはありますか

関根さん:初めて来日する学生は不安が多いので、就労ビザの申請など入社まで様々なサポートをしています。入社後も入社から3年間は弊社で寮を用意して、家具だけでなく生活用品は一通り揃えて提供しています。新入社員のご家族にも、社員へのサポートが充実している会社だと印象を持って安心してもらえれば嬉しいですし、外国から入社してきてくれる新入社員を少しでも家族のように受け入れられるよう体制を整えています。

また、生活面だけでなく、分からないことや困ったことはすぐに相談できるような環境にしています。例えば、母国の家族が病気なので心配しているなど、プライベートな相談を受けることもあります。日本で働く上で必要な法律や税金の制度などについても、外国人社員には理解が難しいので、なるべく分かりやすく根気強く説明しています。

外国人社員に対し、どんな印象をお持ちですか

金澤さん:ハングリー精神が強く、チャレンジ精神が高い方が多いですね。また物事をストレートに言う人が多いので社員間で意見が衝突することもありますが、お互いに本気で話し合うので、それは悪いことだとは思っていません。

一方で、気兼ねなく話したことが、外国人社員には気に触ることがあると感じています。宗教や文化については偏見を持つのではなく極力本人の口から聞くようにして、話す内容には気をつけるようにしています。

常駐先のチーム編成で配慮されていることはありますか

関根さん:常駐先へ伺うチーム編成では同じ国籍の先輩をつけるなど、なるべく相性を見て決めています。先輩や上司がチーム内でサポートしてくれるので、家族のような雰囲気は強いと思います。同じ国出身の先輩がいれば新入社員も母国語で話せるので、日本語で伝えきれない部分がカバーできたり、母国語を話せる安心感を得られたりと新入社員の精神面のフォローにもなります。

多国籍メンバーが在籍する会社として、何かコミュニケーションで工夫されていることはありますか

関根さん:普段は常駐先で勤務しているため他の常駐先のメンバーと顔を合わせる機会が少ないので、社内イベントを充実させています。BBQ大会では社員に企画・準備から入ってもらい、なるべく母国の料理を振る舞ってもらうようにしています。そういった場での何気ない会話から”宗教的に豚肉が食べられない”など、社員を知る良い機会になっています。

つい先日、全社員で社員旅行に台湾へ行ってきたのですが、日本で就労している外国人が海外旅行するのに必要な手続きなど、事前に調べることが多くとても苦労しました。多国籍なメンバーが集う弊社ならではの問題ですよね。苦労した点もありましたが、普段家族から離れて生活している外国人社員にとって社員旅行はとても楽しいイベントだったようなので、これからも続けていきたいと考えています。

金澤さんは中国のご出身だそうですが、どうして日本で仕事をするようになったのでしょうか

金澤さん:私は主人の仕事の関係で21年前(1998年)に来日しました。当時は日本語もあまり話せず、電車の乗り方や買い物の仕方も分からなかったので、日本での生活はとても不安でしたね。子供も小さかったので、仕事はせずに専業主婦をしていました。

日本での生活にも慣れてきた2007年、主人が誠信システムズを立ち上げました。立ち上げメンバーのほとんどがエンジニアだったので、メンバー全員がシステム開発など忙しい日々を過ごしていました。そんな日々が続くと書類整理や経理などが全く回らなくなり、専業主婦だった私が会社に入って社員のサポートをすることになったのです。それがこの会社で働くきっかけでした。中国から来日した頃は、まさか日本でIT企業を経営することになるなんて想像もしていなかったんですけどね。

私自身、日本にやってきた頃に不安を感じながら生活していた経験があるので、外国人社員の気持ちがよく分かります。1つでも不安が減るように受け入れ体制は整えていきたいですし、入社後も弊社を選んで来日してくれた社員が不安を感じることがないよう、会話することを大切にして愛情をもって寄り添えたらと思っています。

今まで外国人社員と働く中で大変だったことはありますか

金澤さん:一番印象に残っているのはスリランカ出身の社員を採用した時ですね。入社後にビジネスマナーの研修を受けてもらった後、いざ現場で仕事を始めてみると、彼は連絡もせず遅刻を繰り返していました。何度注意してもなかなか直らないし、どこか響いていない感じがしていました。

そこで「どうして遅刻するの?」と本人からじっくりと話を聞いてみることにしました。そこで分かったのが、スリランカでは小さい頃から学校を遅れても叱られたことがなく、仕事や学校に遅刻することに対して咎められない風習で生まれ育ったということでした。「遅刻すること(時間を守らないこと)はいけないこと」ということが、今までの人生に無い感覚だったのです。

そこで改めて「なぜ無断で遅刻することがいけないことなのか」を説明すると、ようやく彼の中できちんと理解ができたようでした。何度注意しても直らなかった遅刻癖も理解してからはすぐに直り、お客様へのホウレンソウ(報告・連絡・相談)もきちんとできるようになりました。

スリランカ出身の社員の方を採用される前にも外国人採用をされていたと思うのですが、そのような問題は無かったのでしょうか

金澤さん:今までの外国人採用は中国籍や韓国籍ばかりで、スリランカ出身の社員を採用したのは彼が初めてでした。日本から近隣の国である中国や韓国は、日本と文化が近いので、このようなトラブルを感じることがあまりありませんでした。彼を採用するまでも外国人社員と共に仕事をしてきましたが、国や地域が変われば常識がこんなにも違うのかと驚いたほどです。この経験からじっくり会話する大切さを学び、今でも社員とのコミュニケーションに活かされています。

文化の違いなどを感じられた上で、今は外国人採用についてどのようにお考えでしょうか

金澤さん:今9ヵ国もの国籍のメンバーが在籍しているのですが、「採用してみないと分からないな」というのが正直な感想です。生まれ育った環境によって物事の考え方は違いますし、日本人にとっての当たり前が、彼らにとっての当たり前だとは言えないのです。異なる文化の人が同じ組織に属する訳ですから、必ず差異が生じることがあるものだと思っています。

スリランカ出身の社員との経験から、何か問題が起きた時は”会話”をすることを大切にしています。「この社員はダメだ、この国はダメだ」と決めつけるのではなく、きちんと会話する時間を取って、本人の意見や意思を聞くようにしています。外国人社員が生まれながらに持つバックグラウンドの考え方を理解した上で、「日本はこういう考え方や風習がある国だよ。こういう社会なんだよ。」と説明すると、今まで生まれ育った国や地域の感覚とは違う部分を認識し、日本の文化に合わせるよう努力してくれています。

ありがとうございました。それでは、最後にこれから外国人社員を採用したいと考えている会社に何かアドバイスがあればいただけますか

金澤さん:外国人採用は日本人採用に比べるとリスクが高く、労力もかかります。それでも、外国人社員はポテンシャルや技術力が高い方が多いですし、なにより仕事に対して情熱があり、「採用して良かった」と感じる場面がたくさんあります。

仕事をする上で国籍は関係ありません。大切なのは「社員それぞれがどんなこと(仕事)をしたいのか耳を傾け対話すること」、そして「社員に愛を持って接すること」だと思っています。理解し合うには時間も要するかもしれませんが、対話を続けることでお互いに深く理解することができます。外国人を採用後に何か問題を感じることがあれば、どうか諦めずに対話を続けてくださいね。

編集後記

海外で採用活動をするにあたり、金澤様は会社説明会で「私がお母さんになります」と仰るのだそう。寮や生活用品など日本での暮らしを会社がバックアップしてくれ、さらに金澤様や関根様のように愛を持って迎え入れてくださる上司・先輩がいる。その存在は外国人社員にとって大きな安心を与えてくれることでしょう。社員への愛情溢れる取材となりました。

初めて日本で仕事をする外国人は、仕事だけでなく生活面にも大きな不安を抱えています。会社が全てを整えることはコスト・労力を考えると難しいかもしれませんが、会社としてサポートできることは何かと考えてみることから始めてみても良いかもしれませんね。是非、外国人採用を始めてポテンシャルが高く優秀な社員を採用していきましょう。