ものづくりへの興味・関心、スキルアップを望み勉学に励む向上心…システム開発に携わるエンジニアの採用において、専門知識や経験だけでなく、仕事への思考・姿勢も選考段階で見極めておきたいところ。近年では、「日本の企業で就職したい」と高い向上心をもって来日する外国人も増え、その熱意を評価して外国人採用に乗り出している企業が増えています。
今回は、人材管理システムのパッケージ開発を中心に、ミャンマーにも事業部を展開されているユニテックシステム株式会社(以下、UTS)取締役の高久 利昭さんに外国人採用についてインタビューしました。外国人と一緒に仕事をする上で、どんな不安や問題があったのでしょうか? また、それを解消するための取り組みとしてどのようなことを行っているのでしょうか?採用後、一緒に仕事をする上で意識しておきたいポイントについてもお話を伺ってきました!
話し手:ユニテックシステム株式会社 取締役 高久 利昭(たかく としあき)さん
専門学校卒業後、UTSに入社。ソフトハウスの受託事業を経験後、パッケージ開発に携わる。エンジニアとして新卒入社してから勤続25年、現在は人事として採用を担当。また、システム開発の技術相談役として人材育成に従事。
登場人物:ユニテックシステム株式会社 レスクシオン・ローレンツ・ジョニーロ・ララップさん
幼い頃より日本のアニメやゲームに興味を持ち、フィリピンの大学を卒業後、日本の語学学校にて日本語を学ぶ。その後、日本の専門学校にてゲームの設計を学び、在学中にCGに興味を持ち独学で勉強する。日本でエンジニアとしてプロダクトを生み出したいと2年間の就職活動を経て、UTSに入社。現在は、新事業開発本部にて静脈認証のシステム開発を担当。
現在、どのような事業をされていますか
弊社は20年前から「ナビシリーズ」という人材管理システムを自社開発し、販売・管理をしています。元々Windowsのソフトであったため、ここ数年で、ネット環境があればどこでもナビシリーズをお使いいただけるようWeb化を進めている状況です。またナビシリーズとは別で新事業開発本部を立ち上げ、新しいものを取り入れて開発し、それをパッケージ化して販売に繋げる事業も行っています。
弊社が心がけているのは、「こういったものが売れるのではないか?」という視点で開発を進めるのではなく、お客様との会話から発想を得て、お客様の課題を解決できるようなシステム開発をすることです。弊社にとって新たなノウハウを得る成長のチャンスになりますので。
最近は、既存の人材管理システムのセキュリティをより高度なものにするべく静脈認証を取り入れたりと、新しい技術にもチャレンジしています。
「外国人採用」のきっかけについて教えてください
最初の外国人採用はUTSミャンマーの立ち上げがきっかけでした。
5年前、当時のミャンマーは「最後のフロンティア」などと呼ばれ、開発技術に長けた素晴らしい人材がたくさんいるにも関わらず、ITの環境が整っていなかったのです。そのような状況に社長が目をつけ、すぐにミャンマーでオフィスを借りることにしました。社長は「思い立ったら即行動!」というタイプですので、立ち上げに時間はかかりませんでした。
UTSミャンマーを立ち上げ、日本の案件をミャンマーで開発する、いわゆるオフショア開発から始めました。ミャンマーで事業を開始するにあたり分からないことも多かったので、ミャンマー出身の方を事務のアルバイトとして採用したことが外国人採用のきっかけです。現在、外国人の社員は日本とミャンマーを合わせて3名在籍しています。
外国人採用について何か不安はありましたか
UTSミャンマーを立ち上げる際は「働く姿勢に違いがあるのでは…しっかり働いてくれるのだろうか」という不安もありましたが、ミャンマーに事業部がある今では外国人の採用には不安を感じていません。実際、一緒に働いてみると、皆さん一生懸命仕事に取り組んでくれるので、立ち上げ前に感じていた不安はすぐに解消されました。
今回のエンジニア採用は、外国籍の方が対象だったのでしょうか
いえ、「外国人を採用したい」と思って採用活動をしていたわけではありません。国籍問わずナビシステムのエンジニアを探していました。ジョニーロ君は日本語も問題ないし、専門学校でCGを勉強していたことからプログラムにも興味があるとのことだったので採用しました。条件に合う方がフィリピン出身だった、という感じです。外国人採用をすることによって、私も社員も外国籍の方をより身近に感じるようになりました。日本語をよく勉強されているので、日本人と特に変わらず一緒に仕事ができていると思います。
入社してから一緒に働いてみて、ジョニーロさんにどのような印象をお持ちですか
とにかく彼は勤勉ですね! 週末も新しい技術を勉強したり,、何かを作っていたりして、いつも一生懸命に学んでいる印象です。ちゃんと休んでいるのかなと心配になるくらい。
外国人だからといって、特にジョニーロ君を特別扱いすることはありません。強いて言えば、とても向上心が強く勤勉な彼なので、UTSで彼が求める成長をさせてあげられるのかと少し不安に思うくらいです。現状、楽しんで仕事してくれているようなので安心していますし、彼がこれからもエンジニアとして成長していけるよう会社としてもサポートしていけたらと考えています。
コミュニケーションで何か工夫されていることはありますか
私はジョニーロ君とは部署が違い直接一緒に仕事をすることはないのですが、彼の上司とのやり取りをみていると、上司がどの仕事にしても丁寧に説明をするように心がけているように感じます。例えば、「この仕事はこういう目的があって、これをするとこういう風に役立つ」というように。外国人社員の多くは訳も分からず仕事をしてお金をもらうことを嫌うので、意図などを一から説明して、納得しながら進めてもらうように工夫しているようです。
かなり丁寧に解説しながら進めているので、日本人の若い社員に同じように接すれば、もしかしたら鬱陶しがられるのかもしれないですね。外国人だからと特別扱いしているわけではなく、それぞれ思考に合わせて接し方を工夫して、スキルアップできるようフォローしています。
直接コミュニケーションを取る上司がキーになるわけですね
そうだと思います。語学や技術で採用基準をクリアして採用しても、現場の理解がなければ既存社員も新しく採用した外国人社員も仕事をやりづらいと思います。
その点では、ジョニーロ君はコミュニケーションも問題ありませんが、外国人採用と日本人採用が全く同じだとは言えないですね。細かいニュアンスが伝えきれないなど、どうしても言葉の壁が生まれることもあると思います。そんな時は、コミュニケーションを工夫する必要があるはずです。
彼の上司はUTSミャンマーの立ち上げに携わった人物ですので、外国人スタッフとのコミュニケーションに多少慣れていたと思います。これが全く外国人と仕事をしたことがない人物だったら、これほどスムーズにはいってなかったかもしれないですね。
今後、外国人採用を考えている企業にアドバイスはありますか
弊社はミャンマー事業部の立ち上げがきっかけでしたが、最初に外国人の方を採用する時は「仕事に対する意欲やモチベーションが低い国民性だったら…」などと先入観で不安に思う部分もありました。でも、実際働いてみると熱心に学び、自身のスキルアップのために努力する姿を目にして、今ではとても頼もしく思っています。
先ほどもお話しましたが、外国人採用は一緒に働く上司や同僚になる人たちの受け入れ体制も重要だと思います。一緒に仕事を進めるのはその部署の社員ですので、コミュニケーションの取り方などには工夫が必要な部分もあるかもしれませんね。
社員が外国人と働くことに慣れてくれれば、国籍に限らず良い人材を採用しやすくなります。弊社も社員が外国人と働くことに抵抗が無くなってきたので、今後も良い人がいれば外国人採用を続けていきたいと思います。
編集後記
今回、取材中に感じたのは「居心地の良さ」でした。終始、穏やかに取材が進み、普段からジョニーロさんを特別扱いすることなく一社員として、この穏やかな空気感の中で一緒に仕事に励まれているのだと感じることができました。
異なる文化や思考の中で過ごされてきた外国籍の方と共に仕事をしていくことに、最初は不安を持つこともあるかもしれません。しかし、仕事に対する情熱や向上心は国籍関係なく、むしろ人によっては日本人以上である場合もあります。語学におけるコミュニケーションをクリアできれば、意外と外国人採用の壁は高くはないのかもしれませんね。
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