前編では、株式会社Lang-8(以下、Lang-8社)での採用方法や入社前の独自の制度「お試し期間」について、代表取締役の喜 洋洋さんにお話を伺いました。「お試し期間」を設けてから、入社後のミスマッチが少なくなり社員の定着率も向上したそうが、それ以外にも社員の定着率に関わる大切な要素があるとのこと。
後編では、2019年6月にLang-8社中途入社された黄 依紜さんも含めて、外国人と働く上で大切にされていることについて、おふたりにお話を伺ってきました!
話し手:株式会社Lang-8 代表取締役 喜 洋洋(Yangyang Xi/き ようよう)さん
中国で生まれ、4歳から日本で育つ。大学在学中、中国語を学ぶため1年間上海に留学。留学中に語学を教え合った経験から現サービスの発想を得て、帰国後にシステム制作を開始。大学卒業と同時にLang-8社を起業し、現在は語学学習サービスなど多数展開している。
登場人物:株式会社Lang-8 黄 依紜(Yiyun Huang/こう いうん)さん
台湾出身。2011年に来日し、京都精華大学デザイン学部イラストレーション学科に入学。大学卒業後は、グラフィックデザイナー・WEBデザイナーとして活躍後、2018年の夏にUI/UXデザインと出会い独学で勉強を開始。2019年6月にほぼ未経験でLang-8社に中途入社し、現在はUI/UXデザイン中心の業務を担当している。
株式会社Lang-8 事業内容
◆Lang-8(ランゲエト)(https://lang-8.com/)
語学学習者自身が書いた外国語の文章を海外の方に添削してもらったり、反対に海外の方が書いた日本語の文章を添削する相互添削型SNS。
◆HiNative(ハイネイティブ)(https://hinative.com/ja)
語学学習者が自身が勉強したい言語を海外のネイティブスピーカーに直接質問することができるO&A型の外国語学習アプリ。
◆HiNative Trek(ハイネイティブ トレック)(https://trek.hinative.com/)
実践的な英語の問題を1日1題回答することで着実に英語力を伸ばすことができるサービス。
2007年6月設立。『Lang-8』を皮切りに『HiNative』など、語学学習者とネイティブスピーカーを繋ぐサービスを複数展開。「世界中のネイティブスピーカーの知と経験を共有する」ことをビジョンとし、語学学習者同士が、お互いの言語を活かして気軽に質問しあえるサービスの開発・運用をしている。
黄さんにお伺いします。黄さんは実際に「お試し期間」を経て入社されたそうですが、実際に経験してみていかがでしたか
黄さん:前職ではもちろん「お試し期間」などはなく採用面接、内定、入社という流れだったので、入社前からの会社の情報量が大きく違いました。お試し期間中に「こんなに知っていいのかな?」とこちらが戸惑うくらい会社の情報がしっかりと入ってくるので、入社後にギャップを感じることもありませんでした。実際に社員同士のやりとりなども見られるので、社内の雰囲気も伝わってきて安心して入社できました。
お試し期間中の仕事はデザイナーの先輩から仕事を振ってもらっていたのですが、分からないことがあれば直接相談することができました。デザイナーの先輩だけでなくエンジニアの方も一緒に考えてくれたりして。入社後に一緒に仕事をするイメージが沸いたので、この期間を経験できたのはとても良かったです!
喜さんに質問です。他にも社員の定着率を上げるために工夫していることはありますか
喜さん:工夫していることというよりは、僕自信が自分のマインドを変えたことによって、以前よりも社員の定着率が良くなっていると感じています。
創業当初、僕も創業メンバーも寝る間も惜しんで働いていました。創業時のベンチャーはどこでもそうだと思うんですけど。それでも「どうしてもっと早くできないんだ」と僕はスピードに不満を抱いていて、当時の社員は朝8時に出社し、土日も働いてくれていました。そんな働き方を続けていると社員が僕に付いてこなくなり、どんどん辞めてしまったんです。
そんな過去の経験を反省し、今では優秀な人が自分の会社で働いていてくれることに心から感謝するようになりました。また、以前は「僕が何を考えているのかが不明瞭だ」という意見もあったので、今年に入ってからは自分の考えやビジョンを社員にきちんと伝える場を設けています。僕のマインドの変化により、社内の雰囲気もとても良くなりましたよ。
今現在、社員の方とのコミュニケーションで特に心がけていることは何でしょうか
喜さん:心がけているのは社員の話をきちんと聞くことですね。1ヶ月間1on1(1対1で面談すること)を続けたことで離職率が下がったという他社の事例があるそうなので、僕も1on1を取り入れるようにしています。
あと、社員が良かれと思ってやったことは後から口出ししないと決めています。例えば、僕の不在時に「社長に怒られるのが嫌だから」という理由で何も取り掛からずスピードが落ちてしまうのは、会社にとって機会損失になると考えています。「セキュリティ・お金・個人情報」に関わることでなければ、社員には失敗しても積極的にチャレンジしてもらいたいので、もし僕の意図と違ったことであっても行動に移して欲しいと伝えています。そう伝えてからは、みんな自ら考えて行動するようになりましたね。
黄さんは、実際に1on1など上司とのコミュニケーションについてどのように感じていますか
黄さん:今まで働いてきた日本の会社では、1on1のような社長や上司に直接相談できるような制度がなかったので、私個人をちゃんと見てくれている安心感があります。全体のミーティングでは言いづらいことも、1on1だと相談しやすいのでその点も嬉しいですね。困ったことがあってもすぐに相談して解決できるようになったので、とても働きやすい環境だと感じています。
社員間のコミュニケーションで会社として大切にされていることがあるそうですが、詳しく教えていただけますか
喜さん:弊社の文化として「HRTを極めよう」というバリューを掲げています。これは「H=Humility(謙虚)」「R=Respect(尊敬)」「T=Trust(信頼)」を心がけてコミュニケーションを取ろうと社員に伝えているものです。
開発組織なので仕事上テキストでやりとりすることが多いのですが、発信者の意図とは違ってテキストだと冷たく捉えられたり誤解が生じることがよくあります。発信者に対して文面上で疑問を感じても、相手の意見を尊重する気持ちで好意的に解釈しようと思うことで、発信者との関係性は大きく変わってきます。HRTを極めていれば気持ち良く仕事をしていけるので、社員のみんなには意識してもらうようにしています。
黄さんは社員間のコミュニケーションについてどう思いますか
黄さん:みんな思ったことをすぐに言い合える環境なので、困ったことがあれば都度相談してすぐに解決できています。仕事での疑問があっても周りの皆さんが助けてくれるので、とても良い環境だと感じています!
最後にこれから外国人社員を採用したいと考えている会社に何かアドバイスをいただけますか
喜さん:採用にあたり、外国人を採用したいと採用活動をするよりは、「欲しい人材がたまたま外国人だった」というのが一番自然な状態なのかなと思います。
これからは外国人を採用できた方が、ビジネスの対象が全世界となってチャンスが広がるはずですし、日本人だけでなく外国の方も採用のターゲットにすることは母数が大幅に増えるので良い人材を採用できる確率も上がります。今後採用活動をされる中で、採用基準に合った方がたまたま外国人なのであれば、一緒に働いてみるのも良いのではないでしょうか。
編集後記(前編)
初めての外国人採用では、採用側も採用される側も不安を感じることでしょう。Lang-8社の実例のように、入社前に会社で働くイメージをしっかりと持てる「お試し期間」のような施策を行うことも大切です。また、入社後に上司とのコミュニケーションを定期的に行うことで、結果として社員の定着率が向上するようです。外国人社員を迎え入れるイメージが沸かないという会社は、会社の規模や風土に合った方法で「お試し期間」や「1on1」のような制度を取り入れてみるのも良いかもしれませんね。是非、参考にしてみてください。