「外国人社員の自然体を受け入れる」20人のリファラル雇用を成功させた秘訣【Airitech株式会社】

日本国内での人材不足を背景に、外国人労働者の受け入れが拡大しています。最近では、外国人社員を採用する中小企業も増加傾向にあり、海外に事業を展開したい企業や会社の変革を求める企業が積極的に外国人採用を取り入れています。しかし、ただ外国人を採用するだけでは、結果として外国人社員が活躍できず、外国人社員、企業共に辛い経験をしてしまうケースも少なくありません。

今回は、システムコンサルティング 、システム開発・支援を手掛けている、Airitech株式会社  代表取締役 山﨑 政憲さんに「外国人のリファラル採用と受け入れ体制作り」についてインタビューしました。


話し手:Airitech株式会社 代表取締役 
山﨑 政憲(やまさき まさのり)さん

1975年、高知県生まれ。高知大学大学院理学研究科化学専攻修了。横浜市のソフトウェア受託開発会社に入社し、システムダウンや性能問題に対応するサービスの立ち上げ、システム診断ツールの開発・販売などを手掛ける。2017年に独立し、Airitech株式会社を設立。2018年よりSHIFTグループに参画。


会社情報

【会社名】Airitech株式会社 (https://www.airitech.co.jp/
【創業】2017年5月
【従業員人数】70名(うち、外国籍 23名)
【海外拠点】なし(2020年8月現在)
【外国人採用歴】

  • 2018年 ミャンマー出身者
  • 2019年  アメリカ出身者
  • 2019年  中国出身者

【メイン事業 】システムコンサルティング 、システム開発・支援

システムがダウンした、機能がおかしくなったといったピンチの時に駆けつけ、原因究明と対策の立案をするサービスを提供している。「必ず問題は解決できる」という信念のもと、様々な顧客のトラブルを解決してきた。一つひとつの案件に誠実に向き合うことで、原因が分からないまま、迷宮入りしてしまった案件は1つもない。

御社の事業内容をお教えいただけますか?

弊社では複数の事業を展開してますが、メインの事業はトラブルシュートやシステム改善事業を行っています。具体的には、突然システムがダウンしてしまった、そもそもの性能が不足しているなど、様々な問題が起きたシステムに対して原因究明と解決を行っています。

そのほかの事業で言いますと、システム運用の改善や業務改善のお手伝いをするシステム運用サポート事業も提供しています。この事業なのですが、少し毛色の変わったことをやっていまして、簡単にいうと医者と似たような仕事をしています。例えば、病院ではお医者さんが患者さんに対して、レントゲンを撮ったり痛いところを聞いたりして診断をしますよね?お腹が痛いと言った患者さんに対して、いきなり「じゃあお腹を開いてみましょうか」とはならないはずです。

私たちも同じように、まずは測定し、原因箇所を診断してから最後にチューニングしていくというやり方でトラブルシュートやシステム改善事業を運営してきました。この経験は、システムの改善だけではなく、企業の生産性や収益向上にも役立つのではないかと考え、業務改善のプロセスとして事業化したのが弊社のシステム運用サポート事業です。具体的には、業務の自動化やデータベースのチューニング、プログラムの改修などを行っています。企業の戦略に合わせて、業務改善を提案する、先ほどの例えで言えば、お医者さんが患者さんに合わせて処方箋を処方するような形の事業ですね。

そのほかにも、最近は、ビックデータを管理するためのシステムやビックデータを活用する事業なども始めています。

外国人採用を始められたきかっけについてお教えいただけますか?

外国人採用をはじめたきっかけと言いますか、外国人社員との出会いは前職に遡ります。独立する前に勤めていた会社で、ミャンマーに子会社を設立することになり、その子会社の設立前の段階から会議などには参加していました。とはいえ、私自身はそこまで大きくミャンマーの子会社事業に関わることはないだろうなと当時は思っていました。

ですが、実際にミャンマーに子会社ができ、何人かのミャンマー人社員が日本にやってきてすぐの頃、いろいろな課題が発生しました。具体的に言うと、日本からミャンマーの会社に仕事を渡さないといけない、日本にいるミャンマー人社員の教育や仕事の機会の提供もしないといけないとなりまして。そこで、私が担当していたプロジェクトにミャンマー人社員を引き入れ、ミャンマーの子会社に仕事を渡すなどして面倒をみるようになったんです。

当時はなかなか外国人社員のマネジメントなどについて相談できる場所もなかったので、結構苦労しました。例えば、私がミャンマーに出張に行っているときに、日本に残っているミャンマー人社員から「仕事を辞めたい」という相談を受けたこともあります。日本に残っているミャンマー人社員に「今は踏みとどまるように」とメッセージを送りましたね。そう言っておきながら、自分が辞めてしまったんですけれど(笑)

辞めて独立後しばらく経ってから、前職のミャンマー人社員から連絡をもらったのが初めての外国人採用のきっかけでした。「仕事を辞めてシンガポールで働こうかと思ったけれども、日本に残って山崎さんの下で働きたい」と申し入れを受けまして。それで何人かミャンマー人を受け入れたのが最初のきっかけですね。そこから、弊社に在籍しているミャンマー人社員の口コミや友達伝いにどんどんミャンマー人社員が増えていきました。現在は21名のミャンマー国籍の社員が在籍しています。今のところ、人材紹介サービスを使うことなく口コミだけ、つまりはリファラルだけで外国人採用ができていますね。

外国籍の方と働く際に、何か失敗してしまった経験はござますか?

外国籍の社員と働くうえでの失敗より前に、日本人とのチームづくりで大失敗した経験があります。誰でもそうだと思いますが、入社してすぐはプロジェクトのいちメンバーとして頑張っていれば良いのですが、経験を積むにつれてリーダー職にキャリアアップしていくのが一般的だと思います。私自身も同様に、ある程度現場で経験を積んだのち、プロジェクトリーダーに任命され、部下を複数人持つようになりました。

しかし、最初のプロジェクトリーダーの仕事をするなかで、現場メンバーとの関係性が崩壊してしまいました。自分が何を間違っているのかわからないなかで、上司からは説教をされ、部下からは文句を言われるわで八方塞がりの状態になってしまったことがあります。当時は自分の物差しで、他人の仕事を測ってしまっていたところがあり、コミュニケーションが全然取れてなかったんですね。

例えば、部下に仕事を渡したけれども「何時間かかってもできません」と言われてしまったことがあります。それに対して「なんでこんなこともできないんだ」としか考えられなくて。自分の物差しだけで相手のキャパシティだったり、経験の差だったりを考慮せずに仕事を回していたので、部下との間に溝ができてしまったんですね。結局、ある程度プログラミングや開発ができる部下が入ってきてくれるまで、その状態が続いてしまいました。

その時の経験から「相手を中心に物事を考える」ということの大切さを考えられるようになりました。日本人とのコミュニケーションですでに失敗をしていたので、外国籍社員のマネジメントに関しては、相手を見て、こちらから何が提供できるか、会社としてどんな成長を与えてあげられるかという視点から考えられるようになりましたね。

外国籍社員とのコミュニケーションで大切にされていることはありますか?

最近は対面で話づらくなっていますが、Slack(ビジネスチャットツール)を使って、全社員とやりとりしています。70人近くになってくると流石にちょっと難しい部分もありますが、基本的には個別チャットなどで仕事やキャリアの相談などを受け付けています。

あとは、社員が活躍したら社内で大々的に取り上げるようにしていますね。100%取り上げられているとは思っていないのですが、「誰々さんがすごいことをしましたよ」という形で、誰かが活躍したらそれを全員で共有しています。ミャンマー人社員は、古き良き日本の昭和的なところがあり、自己主張されない方が多いんですね。謙遜してしまう方が多いので、なるべく会社全体で個人の仕事を評価できる体制を作り、お互いに賞賛し合える関係性の構築を行っています。

今後の事業展開などお教えいただけますか?

できれば今年中に、ミャンマーに子会社を作ろうと思っています。元々、この業界に入ったときから最終的に世界的に使われるものを作りたいと思っていました。私がプログラミングに興味を持ったきっかけはゲームだったんですけれども、ゲームって世界的に使われているものの1つだと思っています。そんな風に世界で通用するサービスや商品を作りたいと思っています。ただ、実現するためには企業としての体力が必要なので、まずは日本での基盤作りをして、それから海外へ進出するという考えがありました。

今はミャンマーに子会社を作るための準備をしているところです。ミャンマー人社員が中心となってアイデアを出して、海外に事業を展開する際には何が必要か、会社の設立には何が必要か調べてもらっています。最終的にはミャンマーの子会社単体で世界に向けた事業ができるようになれば良いと思っています。

というのも、ミャンマーの大学は英語が中心で、ミャンマーの大学を卒業した方はある程度の英語力があります。なので、世界的なサービスを作るうえでの言語的な壁も低いので、今後にとても期待しています。とはいえ、いきなり世界に向けて事業を展開する企業体力はまだないので、まずは3年間ほど日本の仕事を手伝ってもらい、5年後ぐらいに世界に向けた事業が展開できるようになっていれば良いと思います。

また、ミャンマーで事業を展開することで、家族の都合などで本国に帰らざるを得ない状態になってしまった社員の受け皿もできるのではないかと考えています。日本だけで働く環境を作るのではなく、いつミャンマーに帰ってもそのまま仕事を続けられる環境を作ってあげるのも大切かなと思っています。

外国籍の方を採用する際に、気をつけておくべきポイントなどございますか?

「ミャンマー人はすごく良いですよ」みたいな話もよく聞くのですが、国籍などを基準に外国人採用を考えてしまうと失敗してしまう可能性があるのではないかと思っています。結局は人と人との関係なので、そこをしっかり認識していないとダメじゃないかと思いますね。

ただ、外国籍社員が誰もいない環境に一人雇い入れると言うのは、大変な部分も多いので、最初はしっかりと受け入れる気持ちや体制づくりが大切だと思います。例えば、複数人の外国人を採用してみたり、採用された方のコミュニティ経由で他の方を採用したり、外国籍社員が安心できる職場環境づくりを行うことが大切なのではないかなと思います。

また、弊社の場合、私も含め社員が何かしら失敗した経験を持っています。なので、何か問題が発生した際に、ミスをした社員を責めるのではなく、お互いに助け合おうと言う気持ちが他と比べて強いのではないかと思っています。誰かがミスをしても、チームワークで乗り越えていこうという社内の雰囲気ができているので、心理的な安全性が高いのではないかと思いますね。

編集後記

外国人社員の大半がリファラル採用ということから、現場の外国人社員の当事者意識やビジョンの浸透が採用の成功に繋がっていると取材を通じて感じました。外国人採用は、意図的ではなく、前職のネットワークからはじまり、 創業3年で海外展開、ミャンマー子会社の設立を検討しているAiritech株式会社。人材がいれば後から戦略が生まれることもあるという可能性も考え、自社にマッチする人材を国籍問わず、受け入れることが採用戦略としても大切なのではないでしょうか。

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