日本では、まだあまり「リファラル採用」が普及していませんが、海外では、リファラル採用が求人サイトや人材紹介よりもメジャーな採用手法として行われています。外国人と比較すると、日本人は自分の会社について積極的に話す人が少なく、文化的な違いからリファラル採用の導入が遅れているのが現状です。しかし、Jopus Biz編集部が独自に行ったアンケート調査(以下、Jopus Biz編集部調べ *1)によると、日本で働く外国人のうち90%は採用活動に協力したい、とリファラル採用に対して協力的な姿勢です。なぜ外国人は、採用活動に協力したいのか、リファラル採用のメリット・デメリット、リファラル採用を成功するためのポイントを5つ解説していきます。
目次
リファラル採用とは
リファラル採用とは、自社の社員から採用要件にあった人材を紹介してもらう採用手法のことです。リファラル採用は、日本ではそれほどメジャーではありませんが、世界の多くの企業で行われている採用手法です。
例えば、欧米では、企業の80%が取り入れている主要な採用手法で、アメリカに限って言うと約85%の企業が何かしらのリファラル採用を導入しています(*2)。欧米だけでなく、中国やインドなどのアジアにおいてもリファラル採用が非常に重視されています。リクルートワークス研究所の中国の人材サービスによると、企業にとって「リファラルが一番良い採用手法」という調査結果が発表されています。また同研究所のインドの人材サービスでも採用経路として「求人サイト(82%)」の次に「従業員によるリファラル(73%)」が続きます。リファラル採用は、グローバルな視点で見ると非常にメジャーな採用手法となっています。
日本では、2015年頃からリファラル採用サービスが出てくるようになり、導入する企業が徐々に増えています。
リファラル採用は、日本に昔からある縁故採用と同じ採用手法と思われている方もいますが、実際は全く異なる採用手法です。縁故採用とは、経営者や役員など幹部社員が、血縁者などを自社に紹介する採用手法です。本人のスキルや経験よりも、紹介者の影響力で採用に繋がることが多いです 。
一方、リファラル採用は、全社員が紹介者になることができ、スキルや適性を見極め、採用を判断します。
外国人のリファラル採用のメリット・デメリット
日本総合研究所の 「人手不足と外国人採用に関するアンケート調査」によると企業の外国人の募集・採用方法として、「求人広告の掲載」や「学校経由」に続き、「外国人コミュニティのつながりで採用」と外国人独自のコミュニティを活用し、採用に繋げている企業がいることがわかりました。
では、実際に日本で外国人をリファラル採用する際のメリットとデメリットには、どのようなことが考えられるでしょうか。今回は、jopus biz編集部が日本で働いている外国人50人に対して「リファラル採用」に関するアンケートを実施し、そのアンケート結果を元に、リファラル採用のメリット・デメリットを深掘りしていこうと思います。
メリット
外国人の母国愛が活かせる
jopus biz編集部調べ(*1)によると、『もし自分の会社があなたの国の方を採用したい場合、積極的に協力したいですか?』の質問に対して、「ぜひ協力したい(50%)」「機会があれば協力したい(44%)」と外国人の90%以上が、採用に協力したいと述べていることが分かりました。
自社を紹介したい理由としては、「働いている会社が良い会社だから」「母国で困っている人を助けたいから」と答える外国人が86%でした。
日本で働く外国人は、母国を離れて暮らしていているので、日本での生活や就職の難しさを外国人自身が経験しています。そのため、「母国のために何かしたい」「困っている母国の人を助けたい」という思いが強く、その思いをリファラル採用で活かすことができます。
また日本には外国人独自のコミュニティがあります。jopus biz編集部調べ(*1)によると、日本で同じ国籍の友人が5名以上いると回答した外国人は38%います。直接の知人でなくても、コミュニティ内の知人、そのまた知人など日本で働く同じ国籍の人との強いネットワークを持っている外国人が多いです。それらの外国人コミュニティのネットワークを活かすことができることもメリットにあげられます。
従業員エンゲージメントの向上
社員はリファラル採用に携わることで、自社について考え、候補者に伝えることにより、当事者意識が育成されます。当事者意識が育成されることで、従業員エンゲージメントの向上、離職防止にもつながります。
また外資系企業を除く日本企業の大半は、外国人社員の人数が少なく、孤独感を感じやすいため、同じ国籍の外国人と一緒に働くことで、安心感を得られ易いです。その結果、社内でのコミュニケーションの活性化や離職防止へ繋がるでしょう。
採用コストの削減
リファラル採用を導入した場合、求人サイトや人材紹介と比べて、コスト削減ができます。リファラル採用で考えられる主なコストは、紹介してくれた社員へのインセンティブ(報奨金制度)です。
インセンティブ(報奨金制度)とは、人材を紹介してくれた社員に対して何かしらの報酬を支払う制度です。お金で支払う場合は、報酬額として、1万~30万に設定している企業が多いです。
jopus biz編集部調べ(*1)では、同じ国籍の方を自社に紹介する場合、どのような条件だと協力しやすいかに対して、「インセンティブがあれば嬉しいが、なくても紹介する」「インセンティブなしでも紹介する」と回答した外国人が80%ということが調査から明らかになりました。
インセンティブの導入は、リファラル採用において必須ではないので、現金報酬以外のインセンティブ(評価)なども検討したうえで設定すると良いでしょう。
採用のミスマッチを減らせる
リファラル採用では、自社と候補者のことをよく知った社員による紹介のため、マッチングの精度を高め採用におけるミスマッチを減少させることができます。また、外国人社員が外国人の求職者と母国語で話すことで、自社の情報をより正確に伝えることができ、勘違いを無くすことができます。採用でのミスマッチを減らすことで、スムーズなオンボーディングへと導くことができ、即戦力として会社で活躍してもらうことが可能となるのです。
デメリット
既存社員と異なる国籍の候補者の採用には向いていない
外国人独自のコミュニティは、基本的に同じ国籍同士で形成されがちです。そのため、既存社員と異なる国籍の候補者を採用したい場合は、リファラル採用は向いていない場合があります。
しかし、同じ国籍でなくても、中華圏(中国・台湾・香港など)での採用やアジア圏の英語を話せる人材など採用ぺルソナが広げられる場合は、既存社員が属する外国人コミュニティ経由でリファラル採用ができる可能性が高まります。
不採用時の紹介社員のケアが必要
「同じ国籍の外国人のために何かしたい」という思いが強い分、紹介した候補者が不採用になった場合は、紹介者のケアが必要です。紹介をした側は気まずい思いをしますし、紹介された側も知人経由で紹介されたにも関わらず、不採用になってしまったと言うことでショックも大きいでしょう。
リファラル採用の導入時に、社内や人材を紹介してくれる社員に向けてリファラル採用でも不採用の可能性があることを事前に伝えることが重要です。
はじめての外国人採用には向いていない
外国人のリファラル採用は、既存社員が同じ国籍の候補者を紹介することががメインになります。そのため、同じ国籍の外国人を採用していることが前提となり、はじめて外国人を採用する企業には、向いていない採用手法です。
過去に雇用した外国籍のOBやOGのネットワークを活かせば、リファラル採用が出来ないことはありませんが、既存社員でないと積極的な採用活動には繋がらないでしょう。
外国人のリファラル採用成功の5つのポイント
企業が、外国人のリファラル採用を成功させるためには、どのような点を気を付ければ良いのでしょうか。外国人特有のポイントを5つ解説します。
社員へリファラル採用を認知させる
そもそもリファラル採用について外国人社員が認知できていなければ、既存社員が知人や友人を紹介したいと感じても、実際に行動してくれることはほぼあり得ません。母国愛が強い外国人の強みを活かすためには、外国人が採用要件や自社についてどのくらい認知できているかが、ポイントとなります。
リファラル採用の導入時にまず行いたいことが、外国人社員に向けたリファラル採用の説明です。紹介する必要性、外国人を採用する理由、募集ポジションの詳細、採用したい人物像などリクルーターとして必要な情報は必ず共有しましょう。
積極的な採用情報の発信
自社の採用情報をコーポレートサイトやSNSで積極的に発信することは、リファラル採用を成功させるための、重要なポイントです。
自社の外国人社員による会社紹介や求人情報だけでは、候補者はエントリーするか判断できない可能性があります。既存社員と違う職種を採用する場合(例えば、既存社員は営業職、募集する社員はエンジニア職)は、特に業務内容などを詳細に伝えきれない可能性があります。
そのため、外国人社員の紹介だけに頼らず、自社での採用情報の発信を積極的に行うことをおすすめします。近年は、無料で利用開始できることから、SNSを利用したソーシャルリク―ティングなども活発化していますので、自社のリソースにマッチした方法で情報発信を行いましょう。
多言語対応
採用ターゲットとなる候補者の日本語レベルをビジネス以上と設定している場合でも、多言語での企業情報や求人情報の発信を行うことをおすすめします。
日本語が流暢な外国人でも、母国語の情報と日本語の情報では、母国語の情報のほうが正確な情報を得ることができ、エントリー前のミスマッチも削減できるでしょう。
また既存社員に求人の翻訳を依頼することで、既存社員の自社への理解に繋がり、リファラル採用の活性化にも繋がるでしょう。
選考時に日本語レベルをチェックする
同じ国籍同士で会話する場合は、母国語での会話になるため、どうしても外国籍社員では日本語レベルを正確に把握が出来ない場合があります。外国人が思う流暢な日本語は、「イントネーションより敬語や正しい文法で日本語を使えているか」である場合がほとんどです。一方、日本人が思う流暢な日本語は「文法よりネイティブに近いイントネーション」と、日本語に対するギャップがあります。
そのため、紹介者から共有された候補者の日本語レベルは、参考程度にしておき、面接の場で日本語レベルをチェックすることを前提としましょう。
リファラル採用サービス導入の検討
リファラル採用の導入にあたり、社員や人事に対する負担が大きくなり、リファラル採用の効果が見えづらいという声も耳にします。運用工数や社員の巻き込み方が分からいことが要因としてあげられます。
そのような課題を抱える企業は、社員への浸透や紹介確度の向上のために、リファラル採用サービスの導入を検討すると良いでしょう。中長期でリファラル採用サービスへ投資することで、自社で採用活動を行う際のノウハウや採用サービスに頼らない長期的な採用手法の確立へと繋がります。
実際にリファラル採用を行う際に、活用できるサービスを4つ紹介します。
Jopus Connecter(株式会社ゴーリスト)
Jopus Connecterは、日本国内・国外問わず、日本で働きたい外国人と外国人を採用したい企業をマッチングするプラットフォームサービスです。自社の外国人社員が、外国人の求職者に対して母国語もしくは英語で自社の魅力や求人情報を提供することで、ミスマッチを減らし、スムーズなオンボーディングへと導きます。
料金:40万円(成功報酬型)
提供企業:株式会社ゴーリスト
URL:https://connecter.jopus.net/company/
※以下は、外国人特化のリファラル採用サービスではないため、求人情報などの多言語対応や外国人社員への理解を進めましょう。
My Refer(株式会社MyRefer)
My Referは、株式会社MyReferが提供する国内初のリファラル採用サービスです。リクルーターの社員紹介情報をリアルタイムで把握できるので、現在の課題を可視化でき、またOB/OGの再雇用の促進もできることが特徴です。
料金:要問合せ
提供企業:株式会社MyRefer
URL:https://i-myrefer.jp/
Refcome(株式会社リフカム)
Refcomeは、株式会社リフカムが提供するリファラル採用サービスです。LINEやSNSなどの繋がりを利用して、リファラル採用の促進や運用コンサルタントによるサポートを受けられることが特徴です。
料金:要問合せ
提供企業:株式会社リフカム
URL:https://jp.refcome.com/
Wantedly(ウォンテッドリー株式会社)
Wantedlyは、ウォンテッドリー株式会社が提供するビジネスSNSサービスです。採用広報としても近年注目され、求人情報の掲載はもちろん、社内の日常や企業情報をコンテンツとして発信できることが特徴です。
料金:0円~(※要問合せ)
提供企業:ウォンテッドリー株式会社
URL:https://www.wantedly.com/about/list
まとめ
リファラル採用は、コスト削減など金銭的な分かりやすいメリットもありますが、従業員のエンゲージメントの向上にも役立ちます。リファラル採用を導入することで、自社の社員が、他者に会社を紹介するために、自社の強みや弱みを考えるきっかけにもなります。そういった当事者意識の育成が、エンゲージメントへの向上にも繋がります。リファラル採用がなかなか促進しない場合でも、現場社員からフィードバックを得ることで、採用以外での自社の課題や改善に気づく機会にもなるのではないでしょうか。
*1 jopus biz編集部調べ 「日本で働く外国人50名にアンケート(調査日2020年8月20~25日)」
*2 リクルートワークス研究所「米国の社員リファラル採用のしくみ」(杉田 万起)
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