外国人を採用すると決めたあとに、紹介会社やハローワークに依頼する場合、求人票の作成が必要となります。基本的には日本人と同じ求人票で問題はありませんが、外国人向けに表記を工夫すると応募率が高まります。今回は、100社以上の外国人採用支援実績のあるキャリアコンサルタントが伝える求人票作成のポイント、注意点をご紹介します。外国人求職者が応募したくなる求人票の書き方を知り、ぜひ採用活動に活用してください。
目次
海外と日本の求人票の違い
一般的に、海外では求人票のことを「Job Description」と呼びます。Job Descriptionは、職務内容や目標、責任、権限や必要とされる知識、経験など、日本の求人票より非常に細かく記載されています。細かく記載されている理由としては、募集人材と候補者とのマッチングを高め、入社後の職務の査定や異動の際に客観的に判断される基準として必要なためです。
またJob Descriptionは、雇用契約書と同等とみなされているため、「Job Descriptionに記載がない業務は行わなくてもよい。」と理解されることもあります。外国人向けの求人票を作成する際には、日本語の求人票でもなるべく細かく情報を表記すると良いでしょう。
日本では、正社員を採用する場合、次の7項目を求人票に記載する必要があります。(職業安定法5条の3より)
- 業務内容
- 契約期間
- 試用期間
- 終業時間、休憩時間、時間外労働、休日
- 賃金
- 加入保険(健康保険、厚生年金、労働者災害補償保険及び雇用保険の適用有無)
- 募集者の名称
外国人向けの求人票を作成する場合も、同様に必要な項目となります。上記の必要項目を踏まえて求人票の作成に取り組みましょう。
外国人向け求人票作成の5つのポイント
外国人向けの求人票のベースは、日本人と同等で問題ありません。しかしながら、外国人が求人票を見る際に気になるポイントを把握すると外国人にとって魅力的な求人に感じられ、応募に繋がり易くなります。今回は、外国人向け求職票の作成ポイントを5点ご紹介します。
業務内容は詳細に記載しましょう
海外の求人票では、ジョブ型雇用の背景から、仕事内容、チーム編成、求められる成果、どのような課題や問題を解決してほしいかまで業務内容を細かく記載しています。日本の求人票の場合でも、外国人求職者が求人票を読んで、入社した場合にどのような仕事を任せられるのか、イメージしやすいかがポイントとなります。また外国人の場合、日本の大手企業しか名前を知らないことが多いので、企業情報も詳細に記載すると良いでしょう。
- 企業情報
- 担当するサービスやプロジェクトの内容、特徴、実績
- 担当業務内容
- チーム編成、レポートライン(外国籍の従業員が在籍する場合は、外国人社員の存在をアピールすると良いです。また上司のポジションを記載すると求職者の理解が深まります)
- 業務の魅力、身に付くスキル、入社後のキャリア形成
募集背景は具体的に
「欠員募集」や「事業好調のため増員」といった記載よりも、採用企業が候補者に何を期待しているか具体的に記載するとよいでしょう。また外国人を採用したい理由を記載すると、候補者が企業に何を求められるかが明確にになるため、ミスマッチも少なくなります。
- 3年以内に中国をはじめとしたアジア展開を見据え、海外事業の責任者を募集するため
- ベトナムとのオフショア拡大に向けて、ブリッジエンジニアの増員を図るため
応募条件には日本語レベルも記載しよう
日本人の採用と同様に、必須条件(MUST)と歓迎条件(WANT)を記載しましょう。
実務経験は、母国での経験も可能か記載すると優秀な経験者の取りこぼしが起きません。また語学レベルも必ず記載しましょう。求める日本語のレベルの表記については、「ネイティブレベル」「ビジネスレベル」「日常会話レベル」とレベル別で記載すると外国人求職者にも分かり易いでしょう。
- Javaの開発経験2年以上(海外での経験も可)
- 日本語ビジネスレベル、英語ネイティブレベル
月給・年収両方の記載があるとより良い
月給と年収、それぞれ記載があると理想です。給与については、母国を離れて暮らす外国人にとって事前にきちんと把握したいポイントになります。
また入社後のモデル年収の表記があると、日本でのキャリアプランがイメージできない候補者にとっては、有効な情報になります。
- 月給30万~50万、予定年収400万~650万
- 入社後の年収モデル(入社2年目28歳 年収450万、入社5年目31歳 600万)
福利厚生は全て記載しよう
手当や社会保険など、社内で存在する福利厚生は、全て記載するとアピールになります。また外国人は世帯主の場合が一般的なため、住宅手当などは手当額まで記載があると、入社後のイメージがしやすいでしょう。
また韓国やベトナム、欧州諸国では、退職金の支給が国で決められているため、日本でも同様に退職金が支給されると思われている候補者もいます。そのため退職金の支給の有無は、求人票に記載することをおすすめします。
外国人向け求人票の作成の3つの注意点
外国人を採用する場合に、求人票作成に関して魅力的に伝わるポイントを5つご紹介しましたが、一方で注意する点も併せてご紹介します。
国籍指定の表記は不可
職業安定法において、人種や国籍を理由とした差別的取扱いは禁止されています。国籍関係なく、本人の適性・能力による選考・採用を行わなわなければなりません。「中国人を募集」などの国籍指定、「外国人歓迎」という外国籍優遇となる表記は認められていません。そのため特定の言語が必要な場合は、「中国語がネイティブレベルで話せる方」や「中国の生活習慣や文化に対して知見がある方」などスキルや経験ベースで記載しましょう。
日本人と同等以上の給与設定をする
外国人を採用する場合、日本人と同等以上の給与を支払わなければなりません。そのため外国人だからといって、給与を低くすることはできません。在留資格を確認する出入国在留管理庁は、給与条件も審査の際に確認しています。万が一、日本人と同等の業務で給与を低く設定したことが発覚した場合は、外国人求職者は在留資格の更新・変更ができず、企業はその求職者自体を採用できない場合があります。
求人票は多言語表記だと良い
日本語が堪能な外国人でも、母国語や英語で表記があると、求人票内のメッセージの意図が伝わるので応募に繋がり易くなります。また候補者が、求人を検索する際にも英語で検索した場合にヒットすることがあり、リーチ数のアップになります。求人票内には、日本語と英語(もしくは求める言語)両方で記載することをおすすめします。多言語で記載することによって、外国人求職者にグローバルな環境であること、外国人の受け入れやグローバル展開をイメージ付けられることも採用企業にとっては、良いポイントになるでしょう。
まとめ
求人票を作成することは簡単ですが、求める人材を採用するためには、ターゲットに向けた求人票を作り込むことで、採用コストの削減や求める人材の確保ができるようになります。外国人を採用ターゲットにした企業は、年々増えてきており、採用企業が外国人の目に留まるように、工夫して求人情報を記載することが重要となります。