【2020年版】外国人専門エージェントが考える日本の外国人労働者問題とは?

みなさんは、日本で働く外国人や採用企業がどのような課題を持っているかご存知でしょうか?外国人の採用企業の増加に伴い、外国人労働者も増加していますが、外国人、企業そして国が抱える問題が複数あります。今回は、外国人専門エージェントの経験者であるjopus biz編集部から、現場で感じた外国人、採用企業、国の抱える課題点と現状を解説します。そして外国人の採用を検討する企業は、何をすべきかを伝えていきます。

日本で働く外国人の増加

近年コンビニや飲食店で働く外国人が増え、日頃から外国人と接する機会が増えていると感じている方も多いのではないでしょうか。

実際に、日本で働く外国人は年々増加傾向にあり、2019年1月現在では約166万人の外国人が日本で働いています。増加している背景には、日本政府が国内の人手不足を緩和するために、外国人の受け入れを積極的に進めていることが挙げられます。

外国人労働者が増加した要因(2019年現在)

1.留学生の増加(前年比4.4%増)
日本政府が2008年に策定した留学生30万人計画を受け、留学生の受け入れをする大学、専門学校、日本語学校の数も増加しました。受け入れ先の増加に伴って2017年には外国人留学生が30万人を突破しました。留学生のうちアルバイトをする学生が大半で、貴重な労働力になっています。

2.技能実習生の増加(前年比24.5%)
1993年に導入された技能実習制度および外国人研修制度により、日本国内における技能実習生が急速に増加しています。外国人技能実習生が就業できる職種は、2020年現在82職種148作業(主な職種は金属加工・溶接・塗装・介護・食品加工)があります。在留資格別では増加率が著しく、現在、日本国内で働いている技能実習生数は約41万人です。


3.専門的・技術的分野に長けた外国人の増加(前年比18.9%増)
語学や技術職などある専門分野に長けた能力を有している外国人、いわゆるホワイトワークで働く外国人も年々増えています。増加背景は、技術職の人材不足、海外進出における現地の文化慣習、言語が話せる人材の需要の高まりです。人数(専門的・技術的分野の在留資格)は、約32万人です。


4.永住者、日本人配偶者の増加(前年比率7.3%増)雇用情勢の改善が着実に進み、「永住者」や「日本人の配偶者」などの身分に基づく在留資格の方々の就労が進んでいます。身分に基づく在留資格を有した外国人の数は、約53万人です。
【参考】厚生労働省「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和元年10月末現在)

日本政府が抱える問題

前段の通り、政府が労働者の受け入れを積極的に行っていますが、まだまだ整備が整っているとは言い難い状況です。外国人労働者、外国人留学生を含む在留外国人に対して対応が遅れている問題が複数あります。

外国人の相談体制

2019年4月の入管法改正に合わせ、2018年12月に外国人材の受け入れ・共生に関する関係閣僚会議が開催されました。その会議で公表された総合的対応策のなかに「行政・生活情報の多言語化、相談体制の設備」が挙げられています。2019年3月の時点で、行政による一元的な相談窓口は、対象となっている全国111自治体の約9割が設置したものの、対応できる人数に限りがあるなど、人手が足りず、ボランティア頼みの行政で課題もあります。

相談窓口では、多言語対応が必須です。しかし、地方では多言語が話せる人材不足が大きな要因となり、窓口の設置が遅れている背景があります。

外国人の子供の教育

日本で働く外国人が増え、母国から家族で引っ越し日本で暮らすケースも増えています。家庭内では、子供と母国語で話す家族が多いため、日本語に触れ合う時間が家庭内では少ないことなどから日本語の教育が遅れている場合があります。

幼稚園や小学校では、日本語が使われているため、そもそも日本語の文法などを教える授業はありません。外国籍の子供たちは日本語そのものが分からない状態のまま、初等教育が始まってしまうことで授業についていけない問題が発生しています。2019年に文部科学省が発表した外国人児童生徒等教育の現状と課題によると、日本語指導が必要な外国籍の児童生徒数は、全国で約3万人と言われています。

そういった背景を受け、一部の行政では、ボランティアを中心に日本語学習の場を設けていますが、全国的には進んでいないのが現状です。

不法就労、出稼ぎ留学生、悪質なブローカー

入管法改正や外国人の受け入れの緩和から、不法に日本に滞在し、生活している外国人が増えています。彼らは「出稼ぎ留学生」「偽装留学生」と呼ばれることもあります。最大の要因は、ブローカーと呼ばれる、日本へ不法な目的で外国人を斡旋している業者が増えてきていることです。

留学生は、日本で勉学をすることが目的です。しかし前段の通り政府が留学生30万人計画を立て、在留資格も緩和された結果、勉学でなく日本でアルバイトをして稼ぐことが目的である出稼ぎ留学生も増えてしまいました。出入国管理及び難民認定法では、留学生は「週28時間以内(学校が休暇期間は除く)」でのアルバイトが認めらています。週28時間以上アルバイトは、不法就労となり、発覚した場合は、最悪強制送還の可能性があります。そのリスクがあってもでも、 生活費や借金を返すために、週28時間以上アルバイトをする留学生も一部いる現状です。

出稼ぎ留学生の一部は、入国前から母国への仕送りのための出稼目的で、アルバイトをしています。しかし、多くの場合は、日本で日本語を学ぶことが目的だったものの、日本への入国を手配をする母国の業者が悪質なブローカーだったために「日本に行けば稼げる」と騙され、法外な手数料を支払い、借金を返済するために、アルバイトで稼がざるを得ない出稼ぎ留学生も存在します。

ブローカーだけでなく、受け入れる側の日本の学校の問題もあります。留学生30万人計画で、最も恩恵を受けたのが日本語学校です。

しかし、日本語学校のなかには、ブローカーから出稼ぎ目的の出稼ぎ留学生を受け入れている学校も過去には存在していました。出稼ぎ留学生を入学試験の条件が低いハードルで受け入れ、教育のためではなく、ビジネスのための留学として受け入れをしていたということです。受け入れだけでなく、日本語学校が不法就労を斡旋していたという事例もあります。

また日本語学校だけでなく、ある大学で留学生約3200人のうち、約700人が所在不明となり、問題となった事件がありました。授業に出席しない、進級ができなかった学生を除籍し、本来は留学ビザが失効となるはずが、連絡が取れなくなり、不法滞在へと繋がりました。

そのような状況を受け、2019年から東南アジアの学生を中心に、留学生ビザの発行率が下がっています。

また留学生だけでなく、在留資格を虚偽申請して出入国管理局に提出し、不法な就労を斡旋する人材派遣会社も存在します。

不法就労や出稼ぎ留学生は、一部の外国人です。政府や関係機関が、悪質なブローカー、学校、企業を取り締まることができてない現状こそが問題なのです。

不当な労働条件で雇用する企業の対応

技能実習生を受け入れる企業をはじめ、企業が労働条件や環境において不当な扱いで外国人を雇用しています。かつて経済大国だった日本が、アジアや南米を中心とした外国人を出稼ぎ労働者として安価に雇っていた背景のためです。つまり外国人=安価な労働力、日本人より下に見ている日本人が、一定数いることが、不当な労働条件や環境に影響しています。

出入国管理及び難民認定法で定めている通り、日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を外国人労働者に支払わなければなりません。また技能実習生においても賃金は、最低賃金額以上の額を支払わなければなりません。実際は、最低賃金以下で雇用、法定休日付与義務違反で雇用している企業が、存在します。「技能実習制度の闇」とメディアが報道していたこともありました。

技能実習生などは、日本語が流暢に話せないため、前段の通り悪質なブローカーに騙された挙句、借金返済のために、SOSを言えずに、不当な労働条件下で働いているという現状もあります。

また賃金以外でも、ホテルのフロント職で内定を出された外国人が、説明もなくフロント職でなく清掃職として、配属されたというケースもあります。在留資格(就労ビザ)は、担当する職種で申請しているので、それ以外の職種で働いていた場合には不法就労にあたります。

労働者という弱い立場を利用して、外国人を不当な扱いをしていることが、外国人が失踪や自殺などトラブルが起きてから発覚しています。日本政府による早期発見や早期防止、管理体制ができていないことが、最大の問題です。

在留管理体制

日本政府は、「労働力不足に対応するため」として、2018年12月に新たな在留資格「特定技能」を設ける「改正出入国管理法」を成立させ、2019年4月に施行されました。

初年度だけで最大約5万人、5年間で最大約34万人が特定技能の在留資格を取得する計画でしたが、初年度に特定技能の在留資格を取得した人数は、約4000人と大幅に計画下回り、予測していた人数の12%に止まりました。

伸び悩んだ要因は、成立後約半年で施行したため、政府、支援する機関が十分に準備ができない状況で見切り発車となってしまったためです。また在留資格を申請するためのステップが、複雑なため、受け入れ先である企業が積極的な姿勢でないことも挙げられます。

法改正以外にも、在留資格の申請は紙ベースで直接出入国在留管理庁へ申請する必要があり、オンライン化が遅れています。新型コロナウィルスの感染拡大の影響で、密を避けるために、オンライン化を急速に進めているものの、遅れが目立つ現状です。

外国人が抱える問題

日本で働く外国人は年々増えているため、外国人は問題なく働けているイメージがあるかもしれません。しかし実際は、外国人労働者の数は、日本の労働力人口の約2%と、まだまだ割合が少なく、そのため外国人が働く環境が整っているとは言い難い状況です。そこで、この章では外国人が抱えている問題を解説します。

外国人を受け入れる企業が少なく、就職自体が難しい

前段で、外国人労働者数が増えていると伝えましたが、日本で就職を希望する外国人に対して採用企業が少ないのが現状です。

留学生の例をあげると、文部科学省より公表されている「外国人留学生の就職促進について」の日本における就職を希望する外国人留学生の割合は、全体の約64%と半数以上が日本での就職を希望しています。しかし、大学(学部・院)を卒業・修了した外国人留学生の日本での進路率は、大学・大学院卒は36%、短期退学卒は49%、専門学校は28%です。日本での就職希望者のうち2人に1人が就職できるかどうかが現状です。

キャリアアップイメージが湧かない

採用企業が少ない分、外国人が就職できる企業の選択肢も狭くなります。そのため、外国人のキャリアアップのロールモデルも少ないので、外国人が日本でキャリアアップするイメージが湧かない場合があります。

また日本企業は、社員のキャリアアップについて明確に伝えない企業も多く、「この企業に勤めて、3年後どのようなキャリアが積めるか分からない」という声も少なくありません。

職場でのギャップ

文化の違いから、日本人の仕事の価値観や進め方に対してギャップを感じる外国人もいます。リクルートワークス研究所の外国人が職場で感じるギャップや抵抗によると、 日本で働く外国人が職場で感じるギャップや抵抗は、「残業が多い」「家族より仕事優先」などの仕事の価値観の違いや、「遠まわしに物事を言うので、指示が分からない」「根周りしが必要」などの仕事の進め方に違和感を感じている外国人がいることがわかりました。

外国人を受け入れる企業は、文化の違いがあることを前提に考えておく必要があります。外国人社員とコミュニケーションが取れていないとなると、離職へ繋がることも多いです。

生活に関する不安

在留外国人の増加スピードに日本の生活の多言語化が間に合っていません。具体的には、災害国家にも関わらず行政による安全に関する情報不足や、医療機関の多言語対応不足などがあげられます。今回の新型コロナウィルスにおいての日本語の情報も、行政だけの発信が届かないことを懸念し、企業や学校が積極的に多言語で発信していました。

また賃貸不動産では、就労ビザを取得し、長期的に日本に滞在することが分かっていても、大家側が「外国人だから」という理由で、賃貸契約の審査を不可にすることも少なくありません。

そのため、行政に頼るのではなく、採用企業側も生活面でのフォローをする必要があります。

企業が抱える問題

日本総合研究所「「人手不足と外国人採用に関するアンケート調査」結果」(2019年4月17日)によると、外国人を採用企業した企業のうち8割は、「外国人社員は期待以上の活躍をしてくれる」と外国人の採用に満足している傾向が高いです。しかし、残りの2割の会社は、外国人の採用による成果が得られていない状況です。では、外国人採用で成功体験を得られなかった企業は、どのような問題を抱えているのでしょうか。詳しく解説します。

社内の受け入れ体制

外国人採用を社長や一部のメンバーのみで進めた場合、現場での外国人材の受け入れに対するギャップが生じることがあります。実際に外国人材が働く現場に、外国人を採用する目的を伝えておらず、現場のメンバーが理解していないケースをよく耳にします。

外国人社員を受け入れる=外国人社員のために特別に何かをする、受け入れの準備が大変そうというイメージで、先入観を抱いている企業も多いです。しかし特別扱いではなく国籍や文化の理解を配慮して、受け入れ準備をすることが重要です。

最初から万全の受け入れ体制を整えることは、どの企業もできません。まず入社前には、現場メンバーに外国人採用の意義や目的を理解してもらい、入社後、外国人社員には困っていることはないか?とコミュニケーションを取りながら、徐々に改善すると良いでしょう。

言語によるコミュニケーションのギャップ

外国人本人の日本語レベルによりますが、日本語が母国語でないため、採用直後は、企業側が外国人の日本語のコミュニケーションにギャップを感じているケースがあります。

具体例をあげると、日本語で口頭で指示した業務が伝わらず何往復かコミュニケーションが発生するなどがあげられます。

しかし日本語は、業務で使用すればほぼ間違いなく上達するため、コミュニケーションの数を重ねることが重要です。また業務外で、日本語学習のためにオンラインレッスンや日本語学校の講座を用意する企業もあります。

日本語を業務で使用するシーンが少ない場合は、業務外で日本語を話す機会を作るなどの工夫が必要です。

在留資格(ビザ)の変更、更新などの書類手続き

在留資格の申請をするためには、指定された資料を会社・外国人本人が用意し、出入国在留管理庁に行かなければなりません。採用企業の大半は、行政書士に申請業務を依頼しますが、オンラインではなく窓口のでの申請が原則のため、事務処理に時間を要することがあります。

また就労ビザを取得している外国人は、全員採用できるということはなく、申請内容によっては在留資格の変更が必要になります。そのため、はじめて外国人を採用する企業にとっては、在留資格の申請・変更が難しい印象を与えてしまうことで、外国人採用に踏み切れないことケースもよく耳にします。

在留資格上の制限

技能実習や特定技能を除く、日本で就業が許されている在留資格(就労ビザ)は、本人の学校の専攻内容と職務内容がマッチしていない場合は、原則、在留資格の取得が許可されません。つまりITエンジニアを採用したい場合は、ITに関連した専攻の外国人以外は、採用することができません。(永住者などの身分にもとづく在留資格は除く)

そのため、学校の専攻とは別で、プログラミングスクールなどで独学で数年間プログラミングを学ぶケースや、学校で専攻とは別で、母国で数年間プログラミング経験があるケースも共に採用することはできません。

実務ができる能力があるのに、在留資格上の制限があることは、外国人を採用する企業にとって、採用の壁となります。

まとめ

今回は、企業へ外国人を紹介経験のある立場として感じたことを記事にしました。課題としてあげましたが、もちろん外国人が日本社会に溶け込めるように、行政や企業による取り組みが行われている側面もあります。しかし、外国人の受け入れのスピードと行政や企業の取り組みが、間に合っていません。

日本が少子高齢化で慢性的な人手不足が続く中、日本人の多くは、 「日本はもっとグローバル化すべきだ」と感じていると思います。一方で、グローバル化のために必要な日本社会や企業の改革の意識がまだまだ乏しい現状です。

根本として、日本社会がまだ「外国人と共存する」イメージが湧いていない、外国人に対するネガティブイメージが、最大の要因です。「外国人は、早期退職しそう」「外国人は、言葉が伝わらず、仕事を教えるのに苦労しそう」「入社前後の手続きが大変」といった先入観がどうしても発生します。

そのような先入観は、やはり外国人と一緒に働かないと変えることはできません。一緒に働いてみてはじめて「外国人のハングリー精神」「思ってたより日本語が流暢で、コミュニケーションが取れる」そして「外国人と一緒に働くことができる」といった感情に変わります。

外国人採用を検討する企業・経営者は、ぜひ現場社員への外国人採用の目的を伝え、現場の理解を何より優先して率先しましょう。

外国人採用という新たな採用の取り組みは、まだ事例が少なく、どの企業も最初から上手く活用できている、というわけではありません。外国人社員や現場の意見を耳に傾けながら、トライアンドエラーを重ね、成功事例を作っていくべきでしょう。そういった失敗から学ぶ成功体験が、事業や組織の成長にも繋がるのでないでしょうか。

記事で提起した問題も、企業だけで向き合い、解決するのではなく、外国人社員も巻き込みながら、解決までのステップを共に歩むことが、日本社会の「外国人と共存」へと近づくでしょう。