経営者・人事の皆さん!
皆さんの会社では、外国人社員のみならず、日本人社員も組織で幸せに働けていますか?昨今、会社経営の現場では、「従業員満足」「モチベーション」「エンゲージメント」などという言葉が飛び交うようになってきました。
そこで今回は、「エンゲージメント」の中でも企業が戦略的に採用・育成していくことを考えている外国人社員のエンゲージメントの高め方について解説したいと思います。
目次
エンゲージメントを正しく理解しよう
日本企業は、他先進国に比べてエンゲージメントへの取り組みが遅い・弱いといわれています。しかし、グローバル化の流れの中で、大手企業やスタートアップ企業などでは、競争環境の変化からエンゲージメントの重要性が認識され、取り組みが始まっています。
加えて、外国人社員の採用背景にも合致する部分として、国内市場は成熟期を迎え、海外進出で次のチャンスを見出さなければ持続的な成長が困難になっています。そのような状況のなかで海外での販路拡大を目指し、外国人社員の採用を行うということは、組織の改革も必要になってきます。当然、世界で競争していくことになると海外の会社との戦いになり、先進国と呼ばれる諸外国には、エンゲージメントの高い組織、社員と勝負していくことになります。そういうなかで日本企業の多くもエンゲージメントを高める経営努力を始めています。
人事の世界では、「エンゲージメント」という概念を以下のように定義しています。
一般用語としてのエンゲージメントは、使われる文脈によって、婚約・約束・契約など色々な意味があり、一単語の日本語で表すのは難しいです。そのなかで、人事の世界では2種類のエンゲージメントの定義があります。
- 企業と従業員の関係からなる『従業員エンゲージメント』のことで、「従業員一人ひとりが組織に愛着を持ち、従業員と企業が一体となってお互いに成長し合い絆を深める関係」のこと。
- 仕事と従業員の関係性からなる『ワークエンゲージメント』のことで「仕事に関連するポジティブで充実した心理状態であり、活力、熱意、没頭によって特徴づけられるもの」のこと。
また、人事戦略コンサルティングのグローバル企業であるウイリス・タワーズワトソンでは、以下のように定義されています。
参考URL: https://www.willistowerswatson.com/ja-JP/Insights/2019/10/hcb-nl-october-yoshita-okada
※(米国にあるグローバルリサーチ部門が、従業員の意識と業績成長との関係について、40年間以上にわたり調査研究を実施している。その成果として、現時点においては、将来的な業績成長と最も強い関係性を持つのは、従業員エンゲージメントの進化系であるところの、「持続可能なエンゲージメント」(Sustainable Engagement)であることが明らかになっています。)
従業員エンゲージメントを「会社・組織が成功するために、従業員が自らの力を発揮しようとする状態が存在していること」と把握している。この状態をつくるには、3つの要素が必要である(以下図参照)。
ウイリス・タワーズワトソン社
上記のようにエンゲージメントを定義したしたうえで、実際にどうやって進めていくのかを考えていきましょう。
エンゲージメントを高める目的と効果を知ろう
人事におけるエンゲージメントの考え方が理解出来たら、エンゲージメントを高める目的や効果などのメリットを知りましょう。
企業・組織においてエンゲージメントを高める目的は、企業の大きさ、従業員の人数や多様性、組織課題などによっても様々な目的が置かれることが多いですが、代表的なものとしては、以下のように挙げられます。
【目的】 ・自社のビジョン、ミッション、バリューなどの経営理念などの共感を高める ・自社に対する帰属意識、愛着を高める・自社の成長に関与する者として、圧倒的当事者意識を高める。 |
そして、その目的に対してエンゲージメントを高めることで、生み出される効果は、以下のようなものがあります。
【効果】 ・離職率が下がる ・高生産性で且つ、高品質になる ・顧客満足度が高まる・売上、利益の成長率が高くなる |
上記のように自社の現状分析・現状把握をしっかり行い、組織課題・人的課題の洗い出しを行いましょう。
その上で、上記のような課題解決の効果を狙い、しっかり目的を置き、施策を走らせる。
次章で述べるポイントから現状把握を行い、施策を進めていくことをお勧めします。
エンゲージメントを高めるための4つのポイント
エンゲージメントを高めるには、以下の4つのステップで行っていくのがおすすめです。
- 1.エンゲージメントサーベイで、社員の現状把握をする
- 2.社員の目標と自社の目標に接点を持たせる
- 3.社員の当事者意識を高める
- 4.継続的にモニタリングする
1.エンゲージメントサーベイで、社員の現状把握をする
必ず最初にするべきなのは、エンゲージメントサーベイなどによる現状の把握です。簡単にいうと、従業員向けのアンケートの実施です。
用意した質問を社員に答えてもらうことで、
- 信頼関係について、組織が抱える課題
- 従業員が会社に求めるものと、会社が従業員に求めるものとのギャップ
を自社で把握しましょう。
エンゲージメントサーベイで使う質問はGoogleFormなどを使って、自社で作成したものでも無料でやるのもよいと思いますし、いくつかのサービスが有料でもありますのでそれらを活用してもよいと思います。
経産省の研究会の発表によると、エンゲージメントを高めるための施策として、「 エンゲージメント強化は経営の競争力にも直結する重要なテーマである」として公表されています。具体的な設問などについては、米国ギャロップ社の12個の設問をあげています。
2.社員の目標と自社の目標に接点を持たせる
次のステップは、社員それぞれの目標と会社の目標の接点を見つけてあげることです。
これは、3.にもつながりますが、自分の仕事が会社にどう貢献しているのか、わかりにくくなってしまうので、接点を見つけて両者で認識をすることで、貢献している感覚を持たせることができます。
つまり、「自分は会社に貢献している」そして、「自分はこの会社にいる意味がある」と社員に思ってもらう効果があります。
それでは、どうやって接点を持たせるのがよいのでしょうか?
これは、私自身がリクルート出身ということもあり、私の実体験からおススメする方法は、Will Can Mustシート導入による、目標設定手法です。
詳しくは、以下のHPに掲載されています。
人材開発方針(リクルートホールディングス)
Will Can Mustシートを用いて、マネジメントと社員の間で目標設定をします。
そのなかで、マネジメントからの期待やその社員の開発テーマを決めていく過程で、自社の戦略、戦術の中の一つのパートをミッションとして任せることで、自社と社員の目標の接点は生み出される仕組みになっています。
これは、リクルート社が広めたものですが、今では多くの企業で形を変えて使用されているようです。
3.社員の当事者意識を高める
3つ目のステップは、社員の当事者意識の向上です。「社員各人は、上司に言われるままに働かねばならない」となってしまうと、なかなか当事者意識は生まれません。当然、社員は「その職場にいる意味」を見出せないからです。
当事者意識を高めるためにも上記のWill Can Mustシートの導入は効果的です。
また、当事者意識を高めるには、個人から小集団、会社、社会と関係の輪が広がるように考えていくことでその社員の視点は高く、広くなるので、有効的です。ぜひ、視野を広げるように面談や1on1MTGなどでも話をしていきましょう。
4.継続的にモニタリングする
そして、最後は、継続的にモニタリングしましょう。
一過性のものでは、エンゲージメントを高めることはできません。また、外国人社員のエンゲージメントを高める目的だとしても外国人社員だけ特別扱いして、施策を投入してもだめです。全ての従業員に対して、継続的に行うことで力を発揮しますので、ぜひ、中長期的に取り組んで頂きたいと思います。
そのなかで、半年に一回は、改善の状況など、現状の把握をし直すためにモニタリングしていきましょう。1.で紹介したエンゲージメントサーベイなどによる現状の把握や自社で作るものに加えて、継続的にモニタリングしていくために他社と比較するのは有効的です。
参考になるサーベイとして、世界的に有名なGreat Place to Work®(GPTW)を紹介します。
公式サイトURL:https://hatarakigai.info/
エンゲージメントと非常に近しい考え方で組織を測ることができる世界的に有名なサーベイで、日本企業も活用している企業が多いのが、 Great Place to Work®(GPTW)です。
GPTWでは、「働きがいのある会社」とは「働きやすさ」と「やりがい」の両方がかね備わった組織であるとの考えのもとサーベイを行っています。他社のスコア、ランキングなども見れますので、参考にしてみてください。
まとめ
今回は、エンゲージメントを高めるためにできることをまとめてみました。冒頭、「皆さんのの会社では、外国人社員のみならず、日本人社員も組織で幸せに働けていますか?」とお聞きしましたが、いかがでしょうか?
懸念がある、もしくは、外国人社員を採用したけれど、うまく育成・活性化できていないとお思いであれば、一度この4つのステップに沿って自社でできることを検討して頂ければと思います。今回の記事も皆様の経営にお役に立てれば幸いです。
【参考】エンゲージメント( ウイリス・タワーズワトソン社 )
人材開発方針(リクルートホールディングス)
Great Place to Work®