【インタビュー】外国籍人材に活躍してもらうための組織づくりのポイント

労働力不足が深刻化する中で、新たな採用ターゲットとして注目されている外国籍人材。そんな外国籍人材の採用を検討しているものの、バックグラウンドが異なる外国籍の人を受け入れることに不安を感じている人事の方も多いのではないでしょうか。

そこで今回は「外国籍人材に活躍してもらうための組織づくりのポイント」について、海外女子の就職を支援するCareer Fly株式会社(以下、Career Fly)代表の大野理恵さんが、2年前から外国人採用を始めている株式会社ゴーリスト(以下、ゴーリスト)代表の加藤龍さんにインタビューしている様子をお伝えします!

2019年2月時点で、働いているメンバーの約三分の一が外国籍人材だという同社。外国籍人材が活躍できる組織にするために、どのような取り組みをおこなっているのでしょうか?

Career Fly 株式会社 代表取締役 大野 理恵(おおの りえ)氏

Career Fly 株式会社 代表取締役 大野 理恵(おおの りえ)氏「外国籍人材とともに飛躍する」
大手人材サービス会社にて、人材派遣・紹介業を約13年経験。社会人留学をAUSシドニーで経験しビジネスコースを修了。他民族が融合した個性を柔軟に受入れるオーストラリア文化に魅了され起業を決意。2015年Career Fly(株)創業。同年、社団法人ガールパワーの専務理事として活動を開始。インド少女に対して教育支援を行う。一児の母として働く自身の経験から世界中の女性支援も同時に実施。

株式会社ゴーリスト 代表取締役 加藤龍(かとう りょう)氏

株式会社ゴーリスト 代表取締役 加藤龍(かとう りょう)氏「神様にフェイント、自然体、人生すべてネタ」
新卒第1期生として株式会社セントメディアへ入社。新規事業、人材派遣・紹介事業に従事。2005年、グループ会社の代表に就任し、営業職に特化した人材紹介事業を展開。その後IT・Web領域の新規プロジェクトを複数立ち上げ、技術系ベンチャーの経営コンサルなどを経て2010年に退職。2011年、株式会社ゴーリストを創業。HRビッグデータ事業、グローバルHR事業を展開。

外国籍メンバーを「外国人扱いしない」こと

大野:ゴーリストには現在9名の外国籍メンバーの方が在職されています。入社の段階で、外国籍メンバーに対して何か工夫していることはありますか?

加藤:外国籍メンバーだからといって「外国人扱いしない」ことを常日頃心がけています。「外国人だから」という理由で腫れ物に触るように対応をするのは一番良くないことです。「できるかどうかわからないからこれをやらせるのはやめよう」という対応はしないようにしています。また、「〇〇人」という表現自体あまり好きではないです。一人ひとりの国籍抜きに、フラットに接することが大切だと思っています。

大野:おっしゃる通りですね。一人ひとり個性がありますからね。

加藤:そうですね。その人の持つ個性や特徴、それを見抜いて引き出していくことが外国籍メンバー採用においてキーになると考えています。

また、彼らの習慣や悩みを理解し、できる限り寄り添うことも重要です。たとえば、弊社が最初に雇ったヨルダン国籍の元メンバーは、宗教上の理由でお祈りを一日に5回する習慣がありました。そのときには、お祈りのための部屋を確保するなどの対応をおこなったりしました。

ほかにも、日本語ネイティブではない彼らは「自分がきちんと言葉を理解できているか?」「自分の言葉がきちんと伝わっているか?」など、コミュニケーションに関する不安がつきものです。なので「難しいビジネス用語ではなく、シンプルな表現を心がける」「知り得る英単語を使って伝えるようにする」など、ケースバイケースで対応する柔軟性も必要です。

ルールはFace to Faceで伝える

株式会社ゴーリスト 代表取締役 加藤龍(かとう りょう)氏

大野:外国籍の方の中には「時間を守る」「報連相の徹底」という習慣がないために、日本の企業に就職したときに会社のルールに戸惑う人もいるかと思います。外国籍メンバーの方に対して、そのような企業のルールをどう伝えていますか?

加藤:弊社には「時間を守る」というルールがあります。また時間を守ることはもちろんのこととして、会議の開始時刻ぎりぎりに来るような外国籍メンバーの姿を見て、ビジネスパーソンとしてハラハラすることもあります。

なので、遅刻や時間ぎりぎりの行動については、日本の商習慣としてNGであることを対面で説明し、理解するまで話します。「会社のルールだから」という理由での説明は一切しません。その行動があなたの不利益、また待たせる相手への不利益になること、それが日本でビジネスをするときには大切なんだということをしっかりと理解し、次回からはきちんと行動が取れるよう対話を持つことを心がけています。

大野:ちなみに、遅刻するメンバーにはどのように対応していますか?

加藤:やはり「こういう理由で○○分ほど遅れます」など、事前報告をするように伝えています。「遅刻する理由を伝えること」と「事前に報告をすること」、この二点は絶対に徹底してほしいと分かってもらえるまで伝え続けますね。

大野:会社のルールは伝え続けることが大切ということですね。

加藤:そうです。こちらが誠意を持って伝え続ければ、きちんと相手も応えてくれますしね。

例えば弊社の場合、遅刻しても何の報告もしなかった外国籍のメンバーに、遅刻する際の事前報告の重要性を伝え続けました。その結果、会社の勤怠連絡を管理するチャットで「10分遅刻します」と遅刻の事前報告をしてくれたという変化がおきました。そのときは「このメンバーも成長したんだな」とこちらも嬉しくなりましたね(笑)。

外国人ならではの「困りごと」を吸い上げる仕組み作り

株式会社ゴーリスト 代表取締役 加藤龍(かとう りょう)氏

大野:その他に、外国籍メンバーが働きやすい企業にするために取り組んでいることはなんでしょうか?

加藤:外国籍のメンバーが困っていることや課題を吸い上げ、解決する場を設けています。弊社の場合、外国籍メンバーと人事総務、私を交えた「Tell me MTG」というミーティングを定期的に実施しています。「今困っていることは?」「解決したい課題はなに?」という質問をぶつけ、その場でアイデアを出しながら解決できるよう努めています。

例えば「困ったときにお互いにヘルプを出しあえるようにしてほしい」という理由から、良かれと思って外国籍エンジニアの席を近くに固めていました。またその席周辺では英語での会話をOKにし、より円滑にコミュニケーションがとれるような環境にしたんですね。

すると先日のTell me MTGでエンジニアの1人から、「今の席(英語OK)を変えたい」という意見が出ました。理由を聞くと「日中、英語しか使わないから日本語が薄れていく。日本語の勉強をしたいのにこれだと上達できない」とのことでした。外国籍メンバーの学ぶ姿勢には、本当に頭が下がりますね。

大野:「Tell me MTG」の仕組み、いいですね!

加藤:そうなんです。生活のちょっとしたことから仕事面まで、さまざまな困りごとを出させるための仕組みとして大変機能しています。

そのほかの「困りごとや本音を聞く」ための仕組みとして、「ごはんを一緒に食べる」ことも重要です。一緒に美味しいものを食べることで、ぽろっと本音を聞けることも多いです。

先日もAIチームと食事したとき「機械学習が好きで仕方ない!」というエンジニアの話を聞くことができました。好きだから週末も自分で触ったりしているというので、そこまでやる気があるのならばということで新規事業として立ち上げることが決まりました。

トップダウンではないフラットな組織運営を継続するためにも、このような仕組みや取り組みをし続けることが大切だと考えています。

「やりたいことをやってもらう」ことこそが活躍の一手となる

株式会社ゴーリスト 代表取締役 加藤龍(かとう りょう)氏

大野:入社した外国籍メンバーに活躍してもらうには何が必要だと感じていますか?

加藤:外国籍メンバーだけではなく、メンバー全員に対して言えることだと思いますが「やりたいことをやってもらう」ということに尽きると思います。弊社の既存事業の延長線上で、メンバーがやりたいことをやれる状況・環境を作ることが必要不可欠です。

大野:外国籍の方は、初めからやりたいことが明確な場合が多いのでしょうか?

加藤:そうですね。日本の就職観を表す言葉として就職と就社という表現があります。外国籍の方は、就職の傾向がある。この仕事、仕事の内容そのものが面白そうだから決めた。それがたまたまこの会社だったというパターン。一方、日本の方で多い傾向は就社。この会社だからという理由が主で、仕事内容にはあまりこだわりなく決めるという傾向は少なからずあります。

外国籍のメンバーは「異国の地で働く」という、ある意味で普通の人と異なる選択をしているからこそ、より自分のやりたいことや将来のキャリアビジョンを持って就職先を選ぶ人が多いです。なので彼らのそのような思いを叶えてあげられる環境を整えてあげることが、外国籍人材活躍の一手につながると考えています。