【インタビュー】外国人採用×リモートワークを成功させる職場環境の構築とは?

終身雇用制度が崩れ、転職が一般的になってきている現在、企業にとって優秀な人材の確保と定着は大きな課題となっています。そんな中、日本国内に限らず海外にも視野を向けて優秀な人材の獲得をめざす企業が増えてきています。

そこで今回は、「Content Marketing for Good(社会をもっとよくするコンテンツマーケティング)」という企業ミッションを掲げ、複数のwebメディアを運営されているハーチ株式会社(以下、ハーチ)代表取締役の加藤佑さんに「採用戦略と職場環境の構築」についてお話をうかがいました。ハーチでは、今回初めて外国人をリモートワークで正社員雇用しました。どのような経緯で採用まで至ったのか、また外国籍人材が働きやすい環境づくりにするために、どのような取り組みをおこなっているのでしょうか?

話し手: ハーチ株式会社 代表取締役 加藤佑(かとう ゆう)さん

ハーチ株式会社 代表取締役 加藤佑(かとう ゆう)さん「Do what you love. Love what you do.」
2007年4月に株式会社リクルートエージェント(現リクルートキャリア)に入社。リクルーティングアドバイザーとして消費財・サービス業界の中途採用支援に従事。マーケットMVP、ユニットMVG、ユニットグッドプラクティス賞など複数回受賞。2009年にリア株式会社に取締役として入社し、翌年に代表取締役に就任。50社以上のWEBマーケティング支援・EC教育事業に携わる。2013年に株式会社ニューラルを共同創業、CSR・サステナビリティ専門メディアの立ち上げに携わる。同社株式を売却し、2015年12月にハーチ株式会社を創業。

登場人物: ハーチ株式会社 コンテンツマーケター ロジャー・オングさん

登場人物: ハーチ株式会社 コンテンツマーケター ロジャー・オングさん「深イイ話を探し、子供の未来を信じ、猫が大好きな世界住人」
シンガポール出身。4年前に来日し、日本企業に就職。日本製品を海外に広げるためのコンテンツマーケターとして、事業企画、動画などのコンテンツの作成、WEB広告の運用、アクセス解析などを一手に担う。ハーチでは、日本のソーシャルグッドを世界に配信するメディア「Zenbird」のプロモーション全般と、外国人向け求人サイトのマーケティングを担当。

1. 会社の理念と個人の理念のマッチング

外国人採用を考え始めたのは、いつ頃からでしょうか

ハーチ株式会社を起業したときからですね。日本だけではなく海外でも事業展開していきたいと考えていたこともあり、「いずれ自分の会社に外国籍人材を受け入れたい」と思っていました。これまでにも留学生インターンの受け入れや、外国籍の方への業務委託をおこなってきたので、今回正社員として外国籍人材を採用することは自然な流れでした。

採用の決め手は何だったのでしょうか

ロジャーの履歴書をはじめて見たとき、彼の人柄がわかるような顔写真に惹かれました(笑)。というのは半分冗談ですが、面接時に彼と話をしていて、ハーチが大切にしている会社の理念に共感してくれたことが決め手でした。

ハーチ株式会社 代表取締役 加藤佑(かとう ゆう)さん

なぜ会社の理念への共感が大切なのでしょうか

メンバー個人と、会社双方が同じ目的意識をもって仕事をするために必要だからです。

ハーチでは「なんのためにその事業をやっているのか」、「なんのために自分たちは働くのか」ということを重要視していて、僕たちはそれを「Purpose(パーパス)」と呼んでいます。

今の時代、フリーランスなど個人でもお金を稼げるようになってきて、個々人でも仕事の理念を大切にする人が増えてきました。特に、優秀な人は「なぜ自分のこの能力をここに費やすのか?」と考えて仕事をしている場合が多いように思います。

なので、これからは優秀な個人と一緒に仕事をしたいと思ったときに、お互いに納得して働くために、会社の理念というものが非常に大切になってくると思います。

個人、企業ともにお互いに納得感を得ながら働くことができれば、仕事への満足度が高くなり、企業の成長にも繋がると考えています。

外国籍の人に会社の理念を伝えるのは難しくはなかったですか

弊社では社員の多くが英語もできますし、そこまでは難しくなかったですね。最初はSkypeを使って事業の説明なども含めた面接をしました。そこで、会社の理念や目指している企業像を伝えたり、逆にロジャー自身が僕たちの会社の理念に対してどう感じているのかを詳しく聞きました。

会社の理念を伝える以外にも、他に何か大切にされていることはありますか

ハーチでは、外国人、日本人に関係なく、入社後のギャップをなくすために、最低限同じ部署で働くメンバー全員に面接の際に会わせるようにしています。なので、ロジャーの場合もお互いを知ってもらうために、面接のあとにメンバーと一緒にランチにいきました。

ロジャーにとってもこれから一緒に働くかもしれないメンバーと話せるというのは、職場の雰囲気が掴めるので安心できる要素になると思います。一方で、経営者の立場からすると、現場のメンバーの人たちが、これから一緒に働くかもしれない人に対してどう思うのかというのも大事なことなので。また、現場のメンバーから求職者の印象などの情報を得られるいい機会でもあります。

求職者と社員、双方のミスマッチで、入社してからがっかりしてほしくないからこそ、できる限り入社前にありのままのハーチの姿を見せるようにしています。

2. 柔軟性のある働き方の実現のために

ロジャーさんは、本社で働かれているのでしょうか

いえ、ロジャーは普段は東京にはおらず、福岡で仕事をしています。面接のときに「福岡で働きたい」と彼が言ったタイミングで、ちょうど僕たちも福岡に進出をしたいと思っていたんです。会社のニーズとロジャーのニーズがマッチしたこともあって、相談の上、リモートワークという会社以外の場所で仕事をする勤務形態で採用しました。

リモートワークを始められたきっかけは何ですか

これからの世の中ではリモートワークが当たり前になっていくと思っています。特に僕たちのようなWebメディアの運営という仕事はパソコン1つあればできるので、同じオフィスに必ずしもいる必要性がありません。

実際はどうなのかで言うと、ハーチでは、IDEAS FOR GOODという、世界中の「社会」に対して良いインパクトを与える活動やアイデアを集めたウェブマガジンを運営していて、それに関わるメンバーが日本のみならず、世界中を飛び回っていたりします。なので、外国籍、日本人に関係なく、優秀なメンバーそれぞれの働き方に、会社が勤務形態を合わせる形を取っていくことが働く側にとっても企業にとっても利益があるんですね。

僕自身も人生のライフステージに合わせていろんな場所に行きたいと思っていたので、そんな風に自由に働ける職場環境を作りたいと思ったことがきっかけだと思います。

ハーチ株式会社 代表取締役 加藤佑(かとう ゆう)さん

リモートワークそのものの、メリット、デメリットなどはありますか

メリットとしては、例えば、ハーチの場合、記事の作成が主な業務なので、記事を書いているときに邪魔が入らないほうが生産性が高いんです。個人としての生産性を考えれば、リモートワークはすごく相性が良いと思います。

ただ、リモートワークは個人として部分最適は実現できても、コミュニケーションが減ることで組織としての全体最適が達成できないというケースがあります。オフィスにいる人は直接コミュニケーションが取れるのですが、「リモートワークで働いている人が孤独感を感じないだろうか?」とか、「そもそもの機械の不調などで、コミュニケーションの質が低下するのではないか?」という不安はもちろんあります。

ですが、先ほど申し上げた通り、リモートワークによってもたらされるメリットは僕たちにとってはとても大きなものなので、メリットを活かしつつ、デメリットをどれだけ組織全体でカバーできるかに注力しています。

働き方について今後の展望をお聞かせください

必ずしもリモートワークが正解だという押し付けではなく、オフィスで働きたい人はオフィスで働いてもらうようにしています。その一方で、オフィス以外の場所で働きたい人は自由に働く場所を選べるといったように、働き方の選択肢が社員全員に提供できれば良いと考えています。

特にこれからも、ロジャーのような優秀な人材と長く一緒に働いていきたいと思っているので、彼らの叶えたい夢や、日本で働きたいと思う気持ちを無下にしないような、働く人に寄り添った形での働き方の提供ができればいいなと思っています。

まだまだハーチは、人材採用でも働き方の面でも試行錯誤している段階なので、メンバーや組織全体でカバーし合いながら改善し続けていきたいと考えています。

編集後記

異なる国で生まれ育った優秀なメンバーと、同じ目標に向かって手を取り合って頑張りたいと思ったときに、会社として何を大切にしているのかを明らかにしておくことは非常に重要です。会社としての理念と個人としての理念がマッチすることによって、働いている時間を幸せなものにできるかが変わってきます。
また、多様な働き方をメンバーに提供することで、内部メンバーのワークライフバランスの改善になるだけでもなく、今後の採用にも好影響を与えることでしょう。加藤さんのお話にもあった通り、課題はあるものの、組織全体でケアしながら柔軟に対応していくことが大切です。
ワークライフバランスの整った会社は他にもたくさんあるかと思いますが、優秀な外国籍人人材と共に働き、一緒にスキルアップもできるのは、ハーチならではの会社の理念があるからなのでしょう。外国籍の人材採用に興味のある方は、企業理念を今一度見直してみると良いのかもしれません。