【年間400件の申請業務を経験した専門家に訊く】就労ビザの更新(在留期間更新許可申請)で必要な書類・準備とは?

外国人を中途採用し、就労ビザの更新を控えている際に必要書類の準備やビザがおりるまでの期間を事前に把握することでスムーズな申請ができます。今回は、年間400件もの申請業務を担当されている竹田紘己行政書士事務所の竹田紘己先生に「就労ビザの更新(在留期間更新許可申請)で必要な書類・準備とは? 」をお伺いしました。

*今回の記事は、就労ビザのなかでもホワイトカラーの外国人が取得している在留資格「技術・人文知識・国際業務」を想定して書かれています。「技術・人文知識・国際業務」の在留資格申請をした方は、ぜひこの記事を参考にしてください。

在留期間更新許可申請(ビザ更新)とは

在留期間更新許可申請とは既に在留資格を持って本邦に在留している外国人が、在留期限後もその在留資格を引き続き所持するための更新手続きになります。

申請準備から更新までの流れ

申請期間

一般的に、在留期間更新許可申請(以下「更新申請」といいます)は、在留カード記載の「在留期限」の日の3ヶ月前から申請することが可能です。早くから申請しておけば在留期限前に許可が出ることも可能であり、その場合でも有効期限は元の在留期限から1年後になります。

例えば、2020年10月1日迄の場合、2020年9月15日に新しい在留カードを受取っても在留期限は2021年10月1日までとなります。

もし、在留期限ギリギリの更新申請になってしまった場合、上記の事例でいうと、在留期限は2020年10月1日です。その前日の2020年9月30日に申請すると、審査の結果は、1日〜2日では出ないことが多いので、その場合は「特例期間」といって、在留カード記載の在留期限を超過しても在留が可能となります(「特定期間」は、最大2カ月間あり、その間に審査の結果が出ますので、結果が出るまでその在留カード上の「在留資格」が延長されているとみなされます)。

この場合、例えば、許可申請の審査結果が許可となり、11月5日に在留カードを受取ったとしたら(在留期限の起算点はその日になるので)1年の在留期間だとしたら在留期限は2021年11月5日となります。

新型コロナウイルス感染症の影響で、2020年3月から7月まで、在留期限の満了をむかえる方には、特例として、在留カード記載の在留期限から3ヶ月延長されるという特例がありました(以下「コロナ特例」といいます)。

このコロナ特定に関しては、以前の記事でも触れましたが、その3ヶ月延長された期間にさらに特例期間がつくわけではありません。従って、在留カード上の在留期限を超えてから申請しても、許可後の新しい在留カードに記載される「在留期限」の起算点は「許可が出た日」ではなく「以前の在留カード記載の在留期限」からとなりますので注意が必要でした。

2020年8月以降に期限をむかえる方は、その対象外になっていますので、上記の取り扱い通りとなっています。

申請書類

在留期間更新許可申請には、活動内容を証明する資料として以下のものなども含めた書類を添付します。

【会社側から提出する書類の一例】

  • 会社の「在職証明書」
  • 会社の「源泉徴収等の法定調書合計表」
  • 会社の「登記簿謄本」
  • 会社の「パンフレットやホームページのコピー」など

【外国人側から提出する書類の一例】

  • 申請人の「在留カード」
  • 「履歴書」や「卒業証明書」「成績証明書」など

前回の許可時から転職した場合は、前回の職場の退職証明書などを外国人側に提出する場合もあります。

申請書類は、申請に慣れていないと準備に時間がかかります。特に、会社にお勤めになっている申請人の方は、平日に市区町村の役所に行って納税証明書や課税証明書(非課税証明書)(以下「納税証明書等」といいます)などを取りにいくにも時間が取れないことも考えられます。

納税証明書等は、証明する年度の「1月1日現在」の住所地で証明しますので、引っ越している場合は、郵送などで請求をし、発行までに時間がかかるので余裕を持って準備をしましょう。

申請提出

申請準備も時間がある程度かかりますが、申請書を提出しに行く時にも時間がかかると想定しておくとよいでしょう。

申請する場所は、申請人の住民票所在地にある地方出入国在留管理局になります。本局や支局、出張所など管轄が別れていますが、申請をしに行く日は、概ね半日から1日予定を開けておく方が良いです。

場所にもよりますが、本局は混みやすいので、その場合は出張所に行くのも選択肢の一つになります。

会社の人事担当の方などで、申請人の方の更新申請を手伝う方は、これらのことも頭に入れておいて、申請人が更新申請がしやすように、会社を休ませてあげるなどの理解が必要です。

もし、休めないなどの特段の事情がある場合は、行政書士に申請の取次を依頼するのも選択肢の一つになります。

ビザ更新の審査基準

審査の基準は、出入国在留管理庁が明確に発表しています。次の8つになります。

  1.  行おうとする活動が申請に係る入管法別表に掲げる在留資格に該当すること
  2.  法務省令で定める上陸許可基準等に適合していること
  3.   現に有する在留資格に応じた活動を行っていたこと
  4.  素行が不良でないこと 
  5.  独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること
  6.  雇用・労働条件が適正であること
  7.  納税義務を履行していること
  8.  入管法に定める届出等の義務を履行していること 

1の基準は、「在留資格該当性」といって、許可を受けようとする在留資格の「活動」や「身分」などに当てはまっているか判断し、許可する際に必要な要件となります。

2.の基準は、「上陸許可基準」といって、法務大臣(法務省)が定める基準で、1.と同様、原則として当てはまっている必要があります。

3.〜8.の基準については、許可という判断を出す際に検討する「適当(許可相当)と認める理由があるか否か」の判断基準になります。これらの事項にすべて該当する場合であっても、すべての事情を総合的に考慮した結果、変更又は更新を許可しないこともあります。 

以下、それぞれ解説します。

1.行おうとする活動が申請に係る入管法別表に掲げる在留資格に該当すること 

申請人である外国人が行おうとする「活動」が、「入管法別表第一に掲げる在留資格」(日本でする「活動」に与えれる在留資格)については、同表の下欄に掲げる活動(例:日本の会社と契約して自然科学や人文科学の知識を活かした仕事をする)に該当すること。

申請人である外国人の「身分又は地位」が、「入管法別表第二に掲げる在留資格」(外国人の「身分又は地位」に与えれる在留資格)については、同表の下欄に掲げる身分又は地位を有する者としての活動(例:日本人の配偶者として日本にいる)であることが必要となります。 

2.法務省令で定める上陸許可基準等に適合していること 

法務省令で定める上陸許可基準は、外国人が日本に入国する際の上陸審査の基準です。

しかし、入管法別表第1の2の表(例:経営・管理、法律・会計業務、医療、研究、教育、技術・人文知識・国際業務、企業内転勤、興行、技能)又は4の表(永住者、日本人配偶者等、永住者の配偶者等、定住者)に掲げる在留資格の下欄に掲げる活動 を行おうとする者については、在留資格変更及び在留期間更新に当たっても、原則として上陸許可基準に適合していることが求められます。 

3.現に有する在留資格に応じた活動を行っていたこと 

申請人である外国人が、現に有する在留資格に応じた活動を行っていたことが必要です。例えば「失踪した技能実習生」や、「除籍・退学後も在留を継続していた留学生」が、現に有する在留資格に応じた活動を行わないで在留していたことについて正当な理由がある場合を除き、消極的な要素として評価されます。

4. 素行が不良でないこと 

素行については、善良であることが前提となり、良好でない場合には消極的な要素として評価されます。具体的には、退去強制事由に準ずるような刑事処分を受けた行為、不法就労をあっせんするなど出入国在留管理行政上看過することのできない行為を行った場合は、素行が不良であると判断されることとなります。 

5. 独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること 

申請人の生活状況として、日常生活において公共の負担となっておらず、かつ、 その有する資産又は技能等から見て将来において安定した生活が見込まれること (世帯単位で認められれば足ります。)が求められますが、仮に公共の負担となっ ている場合であっても、在留を認めるべき人道上の理由が認められる場合(日本国籍をもつ未成年の子供と離れて暮らす事になる等)には、その理由を十分勘案して判断することとなります。 

6.雇用・労働条件が適正であること 

 我が国で就労している(しようとする)場合には、アルバイトを含めその雇用・ 労働条件が、労働関係法規に適合していることが必要です。 なお、労働関係法規違反により勧告等が行われたことが判明した場合は、通常、 申請人である外国人に責はないため、この点を十分に勘案して判断することとなります。

7.納税義務を履行していること

納税の義務がある場合には,当該納税義務を履行していることが求められ、納税義務を履行していない場合には消極的な要素として評価されます。

例えば、納税義務の不履行により刑を受けている場合は、納税義務を履行していないと判断されます。 なお、刑を受けていなくても、高額の未納や長期間の未納などが判明した場合など悪質なものについては同様に取り扱います。 

8.入管法に定める届出等の義務を履行していること 

入管法上の在留資格をもって我が国に中長期間在留する外国人の方は、入管法第19条の7から第19条の13まで、第19条の15及び第19条の16に規定する在留カードの記載事項に係る届出、在留カードの有効期間更新申請、紛失等による在留カードの再交付申請、在留カードの返納、所属機関等に関する届出などの義務を履行していることが必要です。

まとめ

在留資格をお持ちの外国の方にとって、ビザが更新できるかどうかは非常に大きな問題だと思います。そのため、たとえ単純更新(同一の企業で、同一内容の更新)であっても、手続きをおざなりにせず、きちんと整えて出したいですよね。

多くの方が「更新申請なんて書類を出せば通るんだろう」と簡単に考えているかもしれませんが、ご自身で更新手続きをされた結果、許可が出ずに特定活動(出国準備)になってしまってから焦って当事務所にいらっしゃる方も少なくありません。

外国人にとっても採用企業にとっても、とても大事な在留資格ですので、たかが更新手続きと思わずに専門家を頼るか、ご自身でやられるにしても、入念な準備をして手続きされることをお勧めいたします。一人でも多くの方が、無事に在留期間更新許可申請を済まされ、引き続き日本でご活躍されることを願っております。

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