【キャリアパス5パターンを解説】人事担当が知っておきたい外国人社員のキャリアパスとは?

キャリアパスとは、企業が人材育成において社員が目標となる職位や職責から逆算してどのような経験やスキルを身につけるかを示した道筋のことです。自社で適した人材の配置・活用をするためにもキャリアパスを設計、運用している企業も多いでしょう。

しかし外国人雇用において、「外国人のキャリア思考が分からない」「帰国してしまうかもしれない」など日本人のキャリアパスの描き方と異なるので、どのようなキャリアパスを用意すべきか分からないと悩む人事も少なくありません。今回は、外国人のキャリア思考の観点から5つのキャリアパスのパターンを解説します。

外国人のキャリアパスの5パターン

前提として、日本の多くの企業はメンバーシップ型雇用が主流ですが、海外ではジョブ型雇用が主流です。外国人が日本型のジョブローテーションや時間をかけた人材育成を理解でできずギャップを感じ、離職に繋がってしまうことも少なくありません。

そのため、キャリアパスについて入社前や入社時に具体的に説明することが大切です。では、具体的に日本で働く外国人はどのようなキャリアパスを望んでいるのか5パターン解説します。

マネジメント パターン

メンバーのマネジメント、管理職を目指すパターンです。日本では現場出身の社員がたたき上げで管理職になり、プレイングマネージャーとしてチームの目標達成のために、部下の育成や業務管理を求められます。一方海外では、プレイングマネージャーではなく、専門職としての管理職としてキャリアアップしていきます。

日本企業の場合は、専門職として管理職を求める会社は少ないため、外国人社員からマネジメントを希望した場合は、日本での管理職の役割を説明する必要があります。

スペシャリストパターン

ある特定の分野において、専門職として経験や知識を積むパターンです。日本ではITエンジニアやデザイナーなどの特定の技術やスキルを身につけた人材が目指すキャリアパスのイメージとして先行しています。しかし海外では、業務ごとにポジションが定義されているので、営業やマーケターなどのビジネスサイドのポジションも含め、一般的なキャリアパスの考え方です。

特定の分野のスペシャリストを目指すため、管理職として昇進せずに現場の第一線で活躍し続けることができるようなキャリアパスを設計する必要があります。

ゼネラリストパターン

ビジネス全般の知識や経験を見につけキャリアアップするパターンです。日本の大企業の総合職で多く見られるようなジョブローテーションが代表的です。外国人の場合は、在留資格によって担当できる業務が限られています。たとえば営業職からエンジニア職などの大きなキャリアチェンジは一般的には出来ません。

そのため、ゼネラリストとして長期のキャリアを描く以外にもマネジメントパターンやスペシャリストパターンに移行できるような設計が良いでしょう。

帰国パターン

数年後に帰国を想定したキャリアパスのパターンです。まず外国人自身の都合で帰国するパターン、そして将来海外に支社を設立など海外展開を見据えてキャリパスを用意することもあります。

前者の場合は、なるべく具体的な年数を聞き、それに合わせてキャリアパスを考えましょう。帰国=離職になるので、ネガティブイメージもありますが、帰国したあとに現地でのビジネスのネットワーク形成やビジネスパートナーになることも考えられます。そのため、現地に帰国後のキャリアを一緒に考えることも一つの方法です。

後者の場合は、母国で起業や独立を目指している外国人社員や自社に理解があり、母国と何か繋がりのある業務がしたいと強く思っている外国人社員が適しています。在留資格の範囲内でゼネラルに業務を任せ、会社や事業の理解が深まるようなキャリアパスを用意できると良いでしょう。

独立パターン

帰国するしないに関わらず、起業や独立を目指しているパターンです。一般的には、自身で会社を設立やフリーランスで活躍することがイメージされますが、もし社内で新規事業の立ち上げや子会社設立が考えられるのであれば、それを踏まえたキャリアパスを用意しましょう。

フリーランスで独立する場合でも、互いに理解があるので、ビジネスパートナーとして関係を築けることが理想です。

外国人のキャリアパスを設計するときに重要な3つのポイント

前段のキャリアパスのサンプルを参考に社内で設計する前に、まず外国人社員とキャリアの認識をすり合わせる時間が必ず必要です。外国人のキャリアパスを設計する前に重要なポイントを3点ご紹介します。

1.本人の入社前・入社時のヒアリング

面接や入社後の面談時に将来のキャリアパスについて本人の口から話してもらうようにヒアリングをしましょう。そして自社で考えているキャリアパスを本人に伝え、入社前の互いのミスマッチを減らすことが理想です。また面接前だと面接に合格するために「何でもやります」と答える外国人が多いので、入社後に面談でもう一度話す機会を設けましょう。

また日本では外国人のロールモデルが少ないため、日本でどのようなキャリアを描けるか分からない社員も少なくありません。従って、現状自社で用意ができそうなキャリアパス例を提示して、本人の希望とすり合わせすると良いでしょう。

2.1on1などの定期的な面談

働いていく中で、社員が希望するキャリアが変わることもあるでしょう。1on1などで定期的に業務以外のキャリアの話ができるような場を作ることが必要です。日本人社員も同様ですが、週1回30分の頻度が難しい場合は、隔週1回30分もしくは月1回30分だけでもいいので、本人と定期的に話す場を設定しましょう。

3.明確な待遇や時期などを説明

キャリアパスについて話す場で、具体的な年数や待遇を説明することが求められます。そして3~5年スピード感があるキャリアパスなのか、10年近くじっくり経験を積むパターンなのかも合わせて説明できると理想的です。なぜなら、日本のように終身雇用を前提にしていないため、キャリアパスの進み具合が日本の3倍から4倍くらいの早さで考えているものと思って設計をしましょう。

前段の通り海外では、求人票通りにスキルに見合った給与が支払われ、昇進する場合も「何ができれば昇進でき、それには約○年かかり、給与がいくらに上がる」などキャリアパスが明確です。日本では、ファーストリテイリング社が公開した「年収テーブル」が近いでしょう。このような「年収テーブル」までを細かく公開している会社は多くありませんが、本人に公開できる情報は伝えたほうが、外国人社員のモチベーションアップにも繋がるでしょう。

まとめ

今回は、外国人のキャリアパスを5パターン解説しました。記事の中でもお伝えした通り、日本のメンバーシップ型雇用の考え方は海外の慣習ではすくないため、本人が描いていたキャリアパスの認識のギャップを埋めることが企業が最優先にすべきことです。そのために、まず外国人社員との対話を増やし、企業のビジョンや期待していることを伝えながら、キャリアパスを設計することが理想的でしょう。