外国人エンジニアを採用するときに必要な在留資格の条件・申請方法

外国人エンジニアを採用する場合、日本人の採用と大きな違いは在留資格(就労ビザ)です。はじめて外国人を採用する企業の中には、「在留資格の申請は大変そう」と採用に対して不安を感じる企業は少なくありません。しかし、在留資格の条件は明確なので、事前にポイントを押さえれば、エンジニアの採用は他の職種に比べても比較的採用しやすい傾向が見られます。

今回は、外国人エンジニアを採用するときに必要な在留資格(就労ビザ)の条件・申請方法をまとめたので、参考にしてください。

外国人エンジニアが取得できる在留資格(就労ビザ)

外国人エンジニアを採用するときに取得できる在留資格は、主に以下の4つです。

  1. 技術・人文知識・国際業務
  2. 高度専門職
  3. 特定活動
  4. 身分に基づく在留資格

1.技術・人文知識・国際業務

技術・人文知識・国際業務とは、エンジニア、通訳・翻訳、営業などいわゆるオフィスワークの職種に従事する外国人が取得できる在留資格です。在留期限は、1年・3年・5年と人によって異なります。企業が外国人を採用する場合、大半がこの在留資格です。そのため、後段では技術・人文知識・国際業務を取得するための条件、申請方法を解説します。

2.高度専門職

高度専門職は、就労ビザの中でも最も専門性が求められる在留資格です。名称の通り、高度人材と呼ばれる優秀な外国人が対象で、国内の活性化・国際化を目指すべく創設されました。また在留期限も一律5年と長く設定されています。エンジニアの採用では、高度専門・技術活動「高度専門職1号(ロ)」が当てはまります。高度専門職の取得条件は、高度人材ポイントと呼ばれる制度で、「学歴」「職歴」「年収」「研究実績」「その他ボーナス」などの項目を点数化して、専門性を測ります。

採用する外国人が国内外問わず有名大学・大学院出身、JLPT N1取得、年収400万以上が全て当てはまる場合は、高度人材の対象になる可能性があるので、ぜひ以下の記事で条件を確認してみてください。

3.特定活動

特定活動とは、他の在留資格に該当しない特定の活動を行う外国人が取得できる在留資格です。特定活動は、2021年2月現在46種類あり、様々なパターンが想定されます。たとえば、ワーキングホリデーや学校を卒業後、就職活動中の学生などが当てはまります。基本的に半年や1年などの短期の在留資格のため、長期就労するためには就労できる適切な在留資格(技術・人文知識・国際業務など)に切り替える必要があります。

そのため、アルバイトやインターンシップで採用することは問題ありませんが、正社員などの長期で雇用するためには就労できる適切な在留資格に変更をしましょう。

4.身分に基づく在留資格

身分に基づく在留資格とは、「永住者」、「日本人の配偶者等」、「永住者の配偶者等」、「定住者」の4種類が当てはまり、就労に制限がありません。そのため、日本人と同じように働くことができるので、在留資格の申請は基本的に不要です。

技術・人文知識・国際業務の在留資格(就労ビザ)の取得条件

技術・人文知識・国際業務の在留資格(就労ビザ)を取得するためには、外国人本人と採用企業それぞれ要件を満たすことが必要です。シンプルにお伝えすると「外国人本人がITに関する学歴もしくは10年以上の職歴もしくは情報処理の資格がある」場合は取得条件が満たしている可能性が高いです。以下で解説します。

技術・人文知識・国際業務の在留資格(就労ビザ)の取得条件

外国人エンジニア

まず外国人本人には、学歴もしくは実務経験が求められます。

【学歴】

以下の①②どちらかを卒業していることが条件です。

① 大学(短大、大学院などを含む)で卒業

国内外の大学を問わず、学士、もしくは学士相応以上の学歴を有していること。

またコンピューターサイエンスやエンジニアに関する専攻をしていることが条件です。学部がコンピューターサイエンス専門でなくても、いわゆる理工系学部に当てはまる学部であれば基礎的な勉強はしているので、要件を満たしている可能性が高いです。

一方、日本人のように文系の外国人を採用することは非常に困難です。しかし、エンジニアの職務内容でなく、翻訳・通訳の要素があるブリッジエンジニア、もしくは経済学部出身で経済分野などの専門的なサービスの構築するための企画のポジションなどは該当する可能性があるので、行政書士に相談することをおすすめします。

② 日本の専門学校を卒業

①と同じく日本の専門学校でコンピューターサイエンスやエンジニアに関する専攻をしていることが要件です。大学と違って、専門学校は特定の専門分野を学ぶ学校のため、基本的にIT分野の専門学校が当てはまります。

近年、留学生向けの総合的に「ビジネス」を学ぶ専門学校も増えており、その授業の一部でプログラミングを学んでいる留学生もいますが、この場合は不許可になるケースが増えています。なぜならメインで学んでいる専攻は「ビジネス」だからです。

日本人も通っているIT分野の専門学校であれば、要件は満たしている可能性が高いので、本人に確認し、行政書士に相談をしましょう。

【実務経験】

中途採用で外国人を採用する場合は、学歴は満たしていなくても、10年以上の実務経験があれば、在留資格「技術・人文知識・国際業務」を申請することも可能です。

ただし、実務経験を証明する書類などを集めてくる必要がありますので、申請が許可される可能性は学歴要件に比べて低くなりがちです。

【①②あてはならない場合の例外的な要件】

IT技術者については、法務大臣が特例告示をもって定める以下の「情報処理技術」に関する試験に合格する、もしくはすでに資格を持っている方も同様に申請可能です。これらの資格は、日本人が受ける資格なので合格している外国人はかなり少ないですが、一部海外での資格も認められています。

学歴が満たしていない、エンジニアの実務経験がない場合は、本人に資格の確認をすると良いでしょう。

日本における試験で次に掲げるものイ 情報処理の促進に関する法律(昭和45年法律第90号)に基づき経済産業大臣が実施する情報処理安全確保支援士試験

ロ 情報処理の促進に関する法律に基づき経済産業大臣が実施する情報処理技術者試験のうち次に掲げるもの

(1) ITストラテジスト試験
(2) システムアーキテクト試験
(3) プロジェクトマネージャ試験
(4) ネットワークスペシャリスト試験
(5) データベーススペシャリスト試験
(6) エンベデッドシステムスペシャリスト試験
(7) ITサービスマネージャ試験
(8) システム監査技術者試験
(9) 応用情報技術者試験
(10) 基本情報技術者試験
(11) 情報セキュリティマネジメント試験

ハ 通商産業大臣又は経済産業大臣が実施した情報処理技術者試験で次に掲げるもの

(1) 第一種情報処理技術者認定試験
(2) 第二種情報処理技術者認定試験
(3) 第一種情報処理技術者試験
(4) 第二種情報処理技術者試験
(5) 特種情報処理技術者試験
(6) 情報処理システム監査技術者試験
(7) オンライン情報処理技術者試験
(8) ネットワークスペシャリスト試験
(9) システム運用管理エンジニア試験
(10)プロダクションエンジニア試験
(11)データベーススペシャリスト試験
(12)マイコン応用システムエンジニア試験
(13)システムアナリスト試験
(14)システム監査技術者試験
(15)アプリケーションエンジニア試験
(16)プロジェクトマネージャ試験
(17)上級システムアドミニストレータ試験
(18)ソフトウェア開発技術者試験
(19)テクニカルエンジニア(ネットワーク)試験
(20)クニカルエンジニア(データベース)試験
(21)テクニカルエンジニア(システム管理)試験
(22)テクニカルエンジニア(エンベデッドシステム)試験
(23) テクニカルエンジニア(情報セキュリティ)試験
(24)情報セキュリティアドミニストレータ試験
(25)情報セキュリティスペシャリスト試験

その他、中国・フィリピン・ベトナム・タイ・ミャンマー・台湾・マレーシア・モンゴル・バングラデシュ・シンガポール・台湾での情報処理に関する資格も一部対象となるので、以下の出入国管理庁の対象資格を確認してください。

【参考】出入国管理及び難民認定法第七条第一項第二号の基準を定める省令の技術・人文知識・国際業務の在留資格に係る基準の特例を定める件

採用企業

企業に求められる要件は、以下の3つです。すべて満たす必要があるので、必ず自社が該当しているか確認をしましょう。

職務内容の専門性と関連性

前段でお伝えした本人のITに関する知識が活かせる職務内容かがポイントです。基本的にエンジニアなどの職務内容が一般的だと思いますが、データ入力などの単純作業の場合は、関連性として認められませんので注意をしましょう。

日本人と同等以上の報酬

外国籍だからという理由だけで、日本人と比べて給与を低く設定することは禁止されています。日本人と同等以上の報酬を支払うことが要件です。この要件は、出入国管理庁は、自社HPで募集している日本人向けの求人情報なども独自で厳しくチェックしています。

そのため、日本人との報酬に差が見られる場合は、書類の確認が入り、最悪不許可になります。もし「外国人=安い賃金で雇用できる」という認識を持っている場合は、認識を改め、雇用条件を見直しましょう。

企業の安定性

事業の継続性・安定性を証明することも求められます。申請書類に決算状況がみられるため、直帰2期以上が赤字の企業の場合は、財務状況の確認が出入国管理庁から入る可能性が高いです。

そのため、事業計画書の提出が求めらるので、安定性・継続性を説明できるように準備をしましょう。

申請方法

外国人本人・企業が要件を満たしていることが確認ができたら、それぞれ出入国管理庁に提出する資料を準備します。外国人本人の資料は、卒業証明書・履歴書・パスポートなど比較的に準備がしやすい書類です。

一方、企業が準備する書類は企業の規模によって異なります。上場企業であれば準備する資料は少なく、スタートアップや小規模の企業は準備する書類の量が多いです。

申請書類の詳細は、【2020年版】 図で分かる就労ビザの必須書類一式の記事を参考にしてください。

ビザは、書類準備から申請まで2週間から1ヵ月かかります。また申請後、約1ヵ月~2ヵ月で申請結果が分かります。

そのため、在留資格の申請・変更がある場合は、内定から入社まで2ヵ月~3ヵ月は見ておきましょう。

まとめ

今回は外国人エンジニアを採用するときに必要な在留資格の条件・申請方法を解説しました。申請時、書類不備の場合は、出入国管理庁の確認や追加書類が求められ、結果が分かるのにも時間がかかります。

はじめて外国人を採用する場合は、人材紹介の場合はエージェント担当者や出入国管理庁の窓口、また行政書士に相談することをおすすめします。


【参考】高度人材ポイント制による出入国在留管理上の優遇制度
【参考】出入国管理及び難民認定法第七条第一項第二号の基準を定める省令の技術・人文知識・国際業務の在留資格に係る基準の特例を定める件