インド人エンジニア採用を成功させるには?インド人の特徴を解説!

アメリカ、中国に続きIT大国として成長を続けているインド。2019年にインド初スタートアップ「OYO」の日本進出やスタートアップでインド人エンジニアの新卒採用など、日本でもインドのIT技術が注目されたことから、「インド人エンジニアを採用したい」といった声をよく耳にするようになりました。今回は、世界からも注目されるインドのIT市場やインド人エンジニアの特徴や仕事観を紹介します。

日本で注目されているインド人エンジニア

近年日本では、スタートアップやベンチャー企業でのインド人エンジニア採用が話題となっています。しかし、2020年6月の出入国在留管理庁の調査では、インド人の労働者数(※1)は約9,600名、国籍別でみても6位と、まだまだ採用事例が少ないのが現実です。

では、インド現地のIT業界はどのような動向なのか解説します。

(※1)高度外国人材が日本で企業等に勤務して働く場合に最も多い在留資格「技術人文知識国際業務」の国籍別の人数。

インドのIT業界

教育

「インド人は数字に強い」と一度は耳にしたことはないでしょうか?事実、インドの教育は、理数系やITC(情報通信技術)を育むことを重点に置いたプログラムが用意されています。例えば、日本では九九の暗記が小学校低学年で学びますが、インドでは幼稚園で九九を学び、小学校低学年では2桁の掛け算の暗算を学びます。インドは、ゼロの概念が誕生した場所で、数字や計算に縁が深い歴史があるので、教育において数学があらゆる技術の基礎という考えがが重視されていると言われています。

また小学校就学にパソコン操作を学んだり、小学校入学後はプログラミング等の高度な操作に取り組んだり、教育用アプリケーションを介したプログラムが実施されています。幼少期からコンピュータ―サイエンスを学べるような環境があることが大きな特徴です。

またインドではカースト制度の存在が、IT技術の発展に繋がったと言われています。ITは新しく生まれた産業で、このカーストの枠組みからはずれています。そのため、どのような身分の人でも自分の努力と才能次第で、未来を開くチャンスがあります。なので、多くの若者がIT業を目指し、IT産業はインド経済を牽引する分野まで発展しました。

業界

ヒューマンリソシア社の2020年の調査によると、IT技術者となる可能性の高い情報通信技術関連を専攻したIT分野の卒業者数は年間で約151.2万人。国別では、インドが55万人の1位となっています。またIT技術者数もアメリカ、中国に続きインドは212万人と3位になり、日本を抜いています。

前段で説明した理数教育とカースト制度だけでなく、アメリカとの時差がインドのIT産業の発展のきっかけにもなっています。2000年代のITバブルやリーマンショックから多くのアメリカのIT企業が、コスト削減からオフショア委託先を探しました。インドは、アメリカと時差がおおよそ12時間あり、アメリカでの作業終了後、インドが作業開始するため、24時間隙間なく開発ができます。またインドはかつてイギリスの植民地支配から英語を準公用語としており、アメリカ人と英語で意思疎通が図れるため、2000年代からオフショア開発先としてインドが選ばれるようになりました。

そしてオフショア拠点だけでなく、上流工程まで手掛けるようになり、アメリカの外資系IT企業がインドのシリコンバレーと呼ばれる南インドの首都「バンガロール」に集まるようになりました。今ではGAFAをはじめ、アメリカ本国以外で最大規模の開発拠点を構え、インド発のスタートアップ企業も急増しています。

特にバンガロールでは、新しい分野の専門家が育ちやすいことが特徴です。ビッグデータやIotなど新しい技術の専門家は、世界でも少ないので、各企業若手人材を育てることを重要視しています。若くモチベーションの高い人材が多く、新興国がイノベーションの発祥地と考えられていることから、シリコンバレーに次ぐ開発拠点までバンガロールが成長しています。

エンジニアの平均年収

インドの平均年収は約180万円である一方、ソフトウェア開発エンジニアの年収は300万~600万円といわれています。シニア開発エンジニアや外資系企業のエンジニアでは、年収1000万円を超える方も少なくありません。インドのIT人材は、日本のIT人材とほぼ同額の年収を手にしていることがわかります。

インド最高峰の大学、インド工科大卒の学生を獲得するためにオラクル社で年収4000万円、グーグルが3200万円と高額オファーを出したケースもあります。このように世界からインドのIT人材の技術が注目されています。

インド人の特徴・仕事観

まず行動、次に改善

インドでは、「ジュガード」と呼ばれる古くから根強く残る考え方があります。ヒンディー語で「革新的な問題解決の方法」、創意工夫の精神を意味します。限られた資源の中で多くを実現する、逆境を利用する。人口が多く、貧富の差が激しいインドだからこそ生まれた精神のあり方です。

こういった考え方からまず行動して、失敗したら次回改善しようといった場面が多く見られます。失敗に対して、責任を追及するような文化も無く、すぐに行動をすることが先決とされています。

一方で自分ができないことでも「できる」「問題ない」と答える場面もあります。これは、「これから改善する」ジュガードの思考や、幼い頃から競争している中で自分がトップになりたい感覚が強く、チームで協力する文化があまりないからです。

そのため、日本企業がインド人をはじめて受け入れるときには、チームと個人の役割をまず伝えることが重要です。また最初は、本当にできるか、キャパシティを超えていないか事前に確認するようしましょう。

ハングリー精神が強い

インド人は、競争が多い環境を育ったため、前のめりでハングリー精神が非常に強いことが特徴です。周りに勝ち抜くために、自分の能力を他者にアピールすることを日常的に行います。

例えば、ミーティングの場でも発言を積極的に行い、自分の考えをはっきり伝えます。また自分が理解できないことは、踏み込んで質問をし、相手が理解できないことは、分かるまで説明します。

少しでも前に出る、自分ががむしゃらに食らいつく考えが、諦めないで取り組く姿勢にも繋がってきます。

仕事を選ぶ軸は給料

前段で記載した通り、インド人は競争の中で「勝ち抜きたい」「自分がトップになりたい」といった思考が強いため、「給料」が仕事を選ぶ軸として重視されています。給料が上がるタイミングがあれば、転職を模索することが一般的です。インドでは、転職のタイミングで給与が10~30%程度上昇されるとも言われています。

そのため中途採用の場合、前職の年収からアップして希望年収を提案されることもあるでしょう。インド人のそのような基本的な考え方を理解し、希望年収が自社の年収テーブルに合うかどうかすり合わせましょう。

またJETROの2020年の在日インド高度人材に関する調査では、約8割の企業が納得感のあるフィードバックをできていると回答している一方で、 5割超のインド人材は評価フィードバックが曖昧と回答していました。評価制度を事前に伝えて理解してもらうことも不可欠です。

インド人採用の注意点

時間にルーズ
インド人は、時間対してルーズです。性格よりインドの交通インフラが整っていないので、遅刻することが当たり前の文化です。日本人のように遅延を想定して、家を早く出るといった考え方もありません。インド人は時間にルーズな文化で育ったことを理解した上で、入社前には勤怠ルールについてしっかり伝えておきましょう。

英語環境を整える
JETROの2020年在日インド高度人材に関する調査で、日本語だけの環境の業務満足度は約60%、日本語と英語両方の環境の業務満足度は約90%と、英語の職場環境の有無が企業およびインド高度人材双方の満足度に影響していることが分かりました。

英語が話せる日本人エンジニアは少ないため、外国籍エンジニアを徐々増やすことで、英語環境を整えられ、定着にもつながるでしょう。外国人のリファラル採用などを活用することもオススメです。

英語が話せる日本人エンジニアは少ないため、外国籍エンジニアを徐々増やすことで、英語環境を整えられ、定着にもつながるでしょう。外国人のリファラル採用などを活用することもオススメです。

まとめ

シリコンバレーの約2割がインド人エンジニアと言われているように、世界からもインド人エンジニアの技術が注目されています。インドのトップ層のエンジニアは、シリコンバレーを目指します。一方で、「日本の住みやすさや安全」や「日本文化」に惹かれて日本に興味を持つ若手インド人も増えてきています。

インド人を理解する一歩として、インド人のエンジニア希望の学生を主題とした映画『きっと、うまくいく』は競争社会や文化を理解するのに非常にオススメなので、時間がある方はぜひ御覧ください。

【参考】92カ国をデータでみるITエンジニアレポートvol.3 世界の大学等におけるIT教育について独自調査(ヒューマンリソシア株式会社)

【参考】在日インド高度人材に関する調査報告書(JETRO)

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