外国人エンジニアを採用する際に、多くは技術・人文知識・国際業務(技人国)の区分で在留資格で申請することが通例です。
しかし技術・人文知識・国際業務以外にも「高度専門職」と称する在留資格で外国人エンジニアを採用することもできます。「高度専門職」に該当するエンジニアは多くないですが、企業・外国人双方に非常にメリットのある在留資格です。今回は、どのような人材が高度専門職に該当するのか事例をあげて解説します。
高度専門職とは
高度専門職とは、日本の経済活動に貢献してくれるような高度な専門性を持った外国人が取得できる在留資格のことです。具体的な人材例としては、高度な専門性を持ったエンジニアや優良大企業の経営者、優れた研究成果をもつ博士号取得者などが挙げられます。
また高度人材という言葉もよく使われますが、高度人材とは専門的知識や技術力を持つ外国人を広く指します。技術・人文知識・国際業務なども含めた人材のことを指すため、高度人材全員が高度専門職の在留資格が与えられるわけではありません。つまり、高度専門職は在留資格を意味し、高度人材は該当する外国人を意味します。
高度専門職の大きな特徴は、外国人への出入国在留管理上の優遇措置が与えられることです。日本経済に貢献する人材が前提なので、日本で就労する上で最高レベルに優遇されます。そこで高度専門職のメリット、デメリットを合わせて説明します。
メリット
メリットとして。7つの優遇措置が認められます。
- 複合的な在留活動が可能
- 在留期間5年の付与
- 在留歴に係る永住許可要件の緩和
- 配偶者の就労
- 一定の条件を満たした場合、親の帯同
- 一定の条件を満たした場合、家事使用人の帯同
- 入国・在留手続の優先処理
【1】複合的な在留活動の許容
通常の在留資格は、許可された在留資格で認められている活動しかできません。しかし高度外国専門職は、大学での研究活動(「教授」の在留資格)と併せて関連する事業を経営する(「経営・管理」の在留資格)など複数の在留資格にまたがるような活動をおこなうことができます。
採用企業も高度専門職の外国人には、開発業務以外に経営業務など幅広く任せられます。
【2】在留期間「5年」の付与
在留期間が初回から「5年」付与されます。技術・人文知識・国際業務の在留期限、「3ヵ月」「1年」「3年」「5年」となっており、はじめて就労の在留資格を申請する場合、在留期限が「5年」で下りるケースは稀です。初回の申請は「1年」、次回の申請で「3年」など、基本的に更新を重ねて在留期間が伸びます。
そのため、初回から在留期間が必ず「5年」付与されることは、外国人にとって、更新の心配などがないので、安心して就労することができます。また採用する企業側も更新する回数が減るので、負担も少ないので非常に助かる優遇措置です。
【3】在留歴に係る永住許可要件の緩和
永住許可は、原則として継続して10年以上日本に在留していることが条件です。しかし、高度人材外国人の場合は、最短で引き続き1年または3年の在留で永住許可の対象となります。永住者は在留期間がないので、将来母国に帰国する、また仕事などで頻繁に帰国する場合などメリットが多くあげられます。
【4】配偶者の就労
高度専門職の外国人の配偶者(妻または夫)は要件を満たさない場合でも就労(技術・人文知識・国際業務)の在留資格に該当する就労活動をすることができることになります。
【5】一定の条件の下での親の帯同
高度専門職の外国人の世帯年収が800万円以上の場合で、7歳未満の子供の養育、または妊娠中の自身や配偶者の介助・家事の支援などの日常的な活動のために、その父母(配偶者の父母を含む)の在留が認められます。
【6】一定の条件の下での家事使用人の帯同
外国人の家事使用人の帯同は、在留資格「経営・管理」「法律・会計業務」等で在留する限られた外国人が対象です。しかし高度専門職では要件を満たせば外国人の家事使用人を帯同することが認められます。
【7】入国・在留手続の優先処理
高度外国人材に対する入国・在留審査は、優先的に早期処理が行われるので、就労開始時期が早められます。入国事前審査に係る申請については申請受理から10日以内を目途。(通常は60日前後)在留審査に係る申請については申請受理から5日以内を目途。(通常は30日前後)
デメリット
デメリットは、そもそも該当する人材が少ないことです。日本語レベル、年収、学歴など過去の経歴も合わせて見るので、要件を兼ね備えた人材は多くはありません。
また高度専門職ビザは会社に紐づいて認められるものなので、転職した場合は、転職先が高度専門職の基準を満たしているかどうかを確認が必要です。そのため、転職することで高度専門職の在留資格が認められず、技術・人文知識・国際業務などのビザに変更する可能性があります。
高度人材ポイント制とは
高度人材ポイント制とは、「高度人材に対するポイント制による出入国在留管理上の優遇措置」という制度です。さきほど説明し優遇措置を受けるため(高度専門職の在留取得)に
「学歴」「職歴」「年収」「研究実績」「その他ボーナス」などの項目を点数化して、客観的に外国人人材の専門性を測る制度のことです。このポイント制度は、70ポイント以上獲得すると認められます。
また高度人材ポイント制は、活動内容によって項目が異なります。活動内容は、高度学術研究活動「高度専門職1号(イ)」、 高度専門・技術活動「高度専門職1号(ロ)」、高度経営・管理活動「高度専門職1号(ハ)」の3つに分類されます。
外国人エンジニアは「高度専門職1号(ロ)」が当てはまります。そこでどのような人材例であれば該当するのか紹介します。
「高度専門職1号(ロ)」に該当する外国人エンジニア例
該当する可能性がある人材例を新卒、中途と2パターン紹介します。
学歴:大学院卒業(20点)
学歴:法務大臣が告示で定める大学を卒業した者(10点)※有名大学が対象、以下確認
年齢:~29歳(15点)
年収:400万(10点)
日本語能力試験:N1取得者(15点)
【合計ポイント】70点
有名大学の大学院を卒業見込み、N1取得、初年度年収が400万以上のケースは高度人材ポイント制の70点に達します。
学歴:大学卒業(10点)
学歴:法務大臣が告示で定める大学を卒業した者(10点)※有名大学が対象、以下確認
年齢:~34歳(10点)
職歴:5年~6年(10点)
年収:600万(20点)
日本語能力試験:N2取得者(10点)
【合計ポイント】70点
有名大学を卒業し、職歴が5年以上あり、N2取得、年収が600万以上のケースは高度人材ポイント制の70点に達します。
※
1.世界大学ランキングに基づき加点対象となる大学
2.スーパーグローバル大学創成支援事業(トップ型及びグローバル化牽引型)において補助金の交付を受けている大学
3.外務省が実施するイノベーティブ・アジア事業において「パートナー校」として指定を受けている
まとめ
高度専門職は、外国人本人・企業双方に大きなメリットがある在留資格です。特に新卒の場合、有名大学の留学生はN1取得していることが大半なので、初年度の年収次第では該当する企業もあるのではないでしょうか。
外国人本人が高度専門職の在留資格を認知していないこともあるので、企業側で外国人本人に確認できると理想的です。また制度について、出入国在留管理庁の窓口に直接電話で質問することができるので、不明点は問い合わせをすることをおすすめします。
【外国人在留総合インフォメーションセンター(出入国在留管理庁)】
(平日)電話番号:0570-013904
【参考】高度人材ポイント制による出入国在留管理上の優遇制度(出入国在留管理庁)