文系出身の外国人をエンジニアとして採用することはできるのか?

日本人のエンジニアを採用する場合、大学などでプログラミング言語の修得は必須でなく、経験やポテンシャルで文系出身の人材を採用する企業は多いのではないでしょうか。近年外国人エンジニアの採用ニーズが高まっていますが、文系出身の外国人は日本人と同じように採用することはできるのでしょうか。今回は、採用担当者が知っておくべきエンジニアの在留資格について解説します。

文系出身の外国人をエンジニアで採用することは難しい

文系出身の外国人は、基本的にエンジニアとして採用することが難しいです。

なぜなら、エンジニアとして在留資格(技術・人文知識・国際業務)を取得するには、プログラミングに関連する科目を専攻していることが求められるからです。文系出身者が全て採用できないのはでなく、大学や専門学校によってはプログラミングに関する科目を取得しているケースもあるので、まずは外国人本人に科目専攻を確認すると良いでしょう。

また近年エンジニアのプログラミングスクールに通う方も多いですが、それらのスクールを卒業しても在留資格は認められません。

在留資格として認められる学位は、国内外問わず学士・修士・博士(短大・大学・大学院卒業)また日本の専門士(専門学校卒業)です。プログラミングスクールは基本的に学位は認められないからです。

しかし文系出身の外国人でも採用できるパターンがあるので、次章で解説します。

文系出身でエンジニアとして採用できるパターン

1.母国で10年以上の実務経験がある場合

母国でエンジニアとして10年以上の実務経験がある場合は、文系出身でも在留資格の要件に当てはまるので、採用することができます。この10年は、専門学校や職業訓練校などで、プログラミングを学んだ期間も含めることが可能です。また1社でなく複数社の経験も期間内に含まれます。

注意点は2点挙げられます。1点目は、10年「以上」が要件なので、1~2ヵ月期間が足りない場合は不許可となります。2点目は、当時在籍していた企業が現在倒産している場合は、経験年数に含まれないので留意ください。

そして、この実務経験は在職証明書で申請上、証明する必要があります。在職証明書は、決まったフォーマットがなく、企業に在籍していたことを証明する内容を記載します。職務経歴書の内容で問題ありませんが、その企業の代表者(企業)の印鑑・サインが必要です。

在籍が証明できれば申請は通りますが、経歴詐称など偽装書類が多いこともあり、出入国管理局は非常に厳しく在留証明書をチェックします。そのため、在籍証明書以外にも在籍したことが証明できる資料などがあればベターなので、行政書士の先生に相談することをおすすめします。

2.指定された情報処理技術に関する試験に合格、資格を取得している場合

法務大臣が特例告示をもって定める「情報処理技術」に関する試験に合格する、もしくはすでに資格を持っている方も同様に採用可能です。

これらの資格は、日本人が主に取得する資格なので合格している外国人はかなり少ないですが、一部海外での資格も認められています。

エンジニアの実務経験がない場合は、本人に資格の確認をすると良いでしょう。

対象資格

資格一覧(出入国管理及び難民認定法第七条第一項第二号の基準を定める省令の技術・人文知識・国際業務の在留資格に係る基準の特例を定める件)

3.在留資格が「永住者」「永住者」、「日本人の配偶者等」、「永住者の配偶者等」、「定住者」の場合

身分に基づく在留資格の「永住者」、「日本人の配偶者等」、「永住者の配偶者等」、「定住者」の4種類が場合は、就労に制限がありません。

そのため、日本人と同じように働くことができます。就労の在留資格の申請は基本的に不要なので、文系出身でも採用することができます。

4.学校の専攻科目と密接したシステム開発を行う場合

大学などの専門科目と密接したシステム開発を行う場合は、エンジニアとして採用ができる可能性があります。

例えば法学部出身の外国人が、法律に関するシステム開発を事業とする企業の場合、開発する上でプログラミング技術だけでなく、法律知識が不可欠と説明することができれば技術知識国際業務の在留資格を申請をすることができます。

申請をする上で、本人・企業情報を客観的に説明が必要なので、業務内容や事業計画、本人の研究内容など丁寧に申請書類を準備する必要があります。当ケースも許可難易度が高いので、行政書士の先生に依頼することをおすすめします。

文系出身でもIT企業で採用できる職種

上段で説明したケースに該当しない場合は、エンジニアとして採用は難しいでしょう。しかし、例えば面接した文系出身の外国人が良い人材でどうしてもどうしても採用したい場合は、エンジニア以外の職種の配属を検討しましょう。

たとえば、語学を活かすセールスエンジニア、翻訳通訳、ブリッジエンジニアは、採用する外国人の言語が活かせる場合は採用することができます。

また外国人の知見が活かされる海外向けのWebマーケター、Webディレクターも採用可能です。

また事務やバックオフィス全般は、日本語・外国語が不可欠の場合は問題なく採用することができます。

エンジニアを強く望む場合は….

本人がエンジニアを強く望んでいる場合、母国に帰国してもらい、業務委託として契約することもできます。日本国内での正社員や契約社員として雇用する場合は、在留資格が必要ですが、帰国しての外部委託であれば在留資格は関係ありません。日本に在留することはできませんが、在留資格の説明をした上で、本人と相談して決定しましょう。

まとめ

基本的には文系出身の外国人はエンジニアとして採用することは難しいですが、記事内で紹介したケースであれば採用できる可能性はあります。

しかしながら、10年上の実務経験、専攻科目と密接したシステム開発のケースは、採用企業だけでは申請書類の準備が困難です。そのため、行政書士の先生に依頼することを前提の上、採用を進めましょう。