企業が外国人を採用する場合は就労ビザの申請が必要です。ただし就労ビザの申請で必要となる書類は、外国人が海外にいるか日本にいるか、日本にいる場合は転職者か留学生かで異なってくるのをご存知でしょうか。
そこで今回は外国人採用に必要な就労ビザの取得方法、雇用契約書など書類の種類と手続き方法をわかりやすく解説していきます。これから採用予定の外国人を抱える人事担当者の方はぜひ参考にしてください。
就労ビザ申請前に雇用契約書を作成する
就労ビザの申請は入国管理局で行いますが、申請前に本人(外国人)と雇用契約書を交わしておく必要があります。雇用契約書は日本で正式に働くことを示す書類となるので、申請前までに必ず作成し、本人(外国人)に渡しておきましょう。
なお雇用契約書の内容は、日本人を採用する場合とほぼ同じです。ただし以下の点に注意して作成してください。
- 業務内容が、採用する外国人の学歴や職歴に対応したものである
- 「本契約は日本政府により入国(在留)許可されない場合は発効しないものとする」と記載する
- 外国人の母国語の雇用契約書も用意しておく
1については、採用予定者(外国人)のこれまでの経歴が、採用後に従事する職務内容とかけ離れたものである場合、ビザが発行されない可能性があります。
2については、正式な雇用契約書があっても就労ビザが発行されないケースがあります。その場合、入国許可が下りたことを発効条件と明記しておかないと、入国が認められなかった場合でも雇用契約自体が有効になってしまうためです。
3については企業側と外国人側で誤解を避けるために、また後々のトラブルを避けるという意味でも作成しておくと良いでしょう。
就労ビザの申請に必要な書類
「就労ビザ」とは日本で就労や長期滞在を目的とする場合に必要となる査証(ビザ)です。外国人が日本に入国する際に必要となる書類の一部ですが、入国後は日本で各目的にしたがって活動することを示す「在留資格」を根拠に滞在することになります。
外国人を雇用するケースを以下の3つのケースに分けて、就労ビザ申請の流れと必要書類を見ていきます。
- 海外にいる外国人を現地で採用し、日本で雇用する場合
- 日本に留学中の外国人留学生を、日本で採用し雇用する場合
- 日本で働いている外国人を、日本で採用し雇用する場合
1. 海外にいる外国人を現地で採用し、日本で雇用する場合
外国人の採用予定者が海外にいる場合の流れは次の通りです。
- 企業が「在留資格認定証明書」を日本の入国管理局に申請する
- 発行された「在留資格認定証明書」を海外にいる外国人(採用予定者)に送付する
- 海外にいる外国人(採用予定者)が現地の日本大使館で就労ビザを申請する
「在留資格認定証明書」を申請するための一般的な必要書類は次の通りです。なお在留資格の種類や、雇い主の種類(上場企業か中小企業か、国・地方公共団体か)で多少違いがある点に留意しておいてください。
- 在留資格認定証明書申請書
- 写真2枚
- 日本での活動内容に応じた資料
日本での活動内容に応じた資料とは次の書類を指します。
- 雇い主の商業・法人登記簿謄本および損益計算書の写し
- 雇い主の事業内容を明らかにする資料(勤務先等の沿革、役員、組織、事業内容等が詳細に記載された案内書1通)
- 雇用契約書
- 本人(外国人)の学歴や職歴が記載された履歴書
- 本人(外国人)の学歴および職歴その他経歴を証明する書類(大学等の卒業証明書、在職証明書等)
- 直近の年度の決算文書の写し1通
2. 日本で働いている外国人を、日本で採用し雇用する場合
転職者(外国人)または企業が入国管理局に「就労資格証明書」を申請し、転職先の業務と在留資格に関連が認められることを確認します。認められた後は「在留資格変更申請」で対応可能か検討します。
就労資格証明書の交付申請に必要な書類は次の通りです。
- 就労資格証明書交付申請書
- 資格外活動許可書(交付を受けている方のみ)
- 在留カードまたは外国人登録証明書または特別永住者証明書(外国人本人が申請する場合以外は写しを提示)
- パスポートまたは在留資格証明書(提示できないときはその理由書)
- 身分を証する書類(弁護士、行政書士等申請取次者が申請する場合のみ)
- 日本での活動内容に応じた資料(転職先にかかるもの)
加えて上記の「在留資格認定証明書」にかかる「日本での活動内容に応じた資料」が必要になります。
3. 日本で留学中の外国人留学生を、日本で採用し雇用する場合
滞在目的が変わるため、在留資格を「留学」から就労が可能な資格へ変更する必要があります。ただし、留学中に修めた内容と就職先の業務が関連していることが条件となります。事前に十分確認しておくほうがいいでしょう。
在留資格変更申請に必要な書類は次の通りです。
- 在留資格変更許可申請書
- 写真1枚
- 在留カードもしくは外国人登録証明書(外国人本人が申請する場合以外は写しを提示)
- 資格外活動許可書(許可書を取得している方のみ)
- パスポートまたは在留資格証明書(提示できないときはその理由書)
- 身分を証する書類(申請取次者が申請する場合のみ)
- 日本での活動内容に応じた資料(転職先にかかるもの)
加えて上記の「在留資格認定証明書」にかかる「日本での活動内容に応じた資料」が必要になります。
まとめ
いかがでしたでしょうか。2018年10月の臨時国会において成立した改正出入国管理法では、就労を目的とした2つの新しい在留資格が創設されました。改正法では従来認められていなかった「単純労働分野」への受け入れに道が開かれ、外国人採用の大きな転換点となりそうです。詳細は法務省の命令に委ねられていますので、今後の展開にも注視しておきましょう。