国内での人材不足の深刻化するなかで、大手企業のみならず中小企業などでも外国人採用を積極的に行っている企業が増えつつあります。実際にどのような規模の企業が、外国人採用を成功できたのか、具体例も含めて外国人採用と就労ビザについて詳しく解説します。
目次
ビザと在留資格の違い
外国人が日本に在留するためにはビザが必要なのでしょうか、それとも在留資格が必要なのでしょうか。答えは、日本国内に外国人が滞在するためには「在留資格」が必要です。
ビザとは正式には査証といい、日本で入国審査を受けるために必要な推薦書です。海外にある日本大使館や領事館で発給されます。つまりは日本に上陸する際に必要なものです。
一方、在留資格は外国人が日本に入国し、在留するためのものです。在留資格が与えられると、在留資格で定められた範囲内での活動を日本国内で行うことができます。
外国人が日本で働くために必要な就労ビザ
外国人が日本で働くためには、在留資格の中でも就労が許されている在留資格、通称「就労ビザ」を取得する必要があります。日本で外国人を採用する場合、一般社員の就労ビザはおおよそ在留資格「技術・人文知識・国際業務」に分類される場合が多いです。
在留資格「技術・人文知識・国際業務」では、自然科学の分野(理系分野)もしくは人文科学の分野(文系分野)に関する技術や知識を必要とする業務に従事できます。具体的な職種でいうと、システムエンジニア、通訳、経営コンサルタント、デザイナーなど幅広い職種が該当します。
*頭文字をとって「技人国(ぎじんこく)」と略されることが多いです。
また、在留資格「技術・人文知識・国際業務」を持った外国人を雇用する以外にも、在留資格「高度専門職」など、より高度な知識や技術を身に付けた外国人を雇用する場合も増えつつあります。
▶︎「高度専門職」に関連する記事をみる 【高度専門職】高度専門職1号・2号と優遇措置について解説 |
中小企業や設立したばかりの会社でも外国人を採用できるのか
日本の入国管理局では、外国人を雇用する企業や個人事業主の信用度や安定性などに応じて、企業を1から4までのカテゴリーに区分しています。カテゴリーで区別しているのは、会社規模などによって申請書類や審査期間を変えているからです。
中小企業や設立したばかりの会社の場合ですと、多くがカテゴリー3やカテゴリー4に該当するかと思います。カテゴリー1やカテゴリー2に比べると審査が厳しくなりますが、外国人を雇用する必要性や事業の安定性、継続性などを証明することができれば、中小企業や設立したばかりの企業でも優秀な外国人を採用することができる可能性があります。
外国人採用の3つ参考事例
ここまでは、外国人を採用するために必要な就労ビザについての解説と、中小企業や設立したばかりの会社でも外国人材を雇用できるのかについて説明しました。では、実際にどのような企業が外国人材を採用しているのでしょうか。
【関東地方】従業員数60名の建設会社(CADオペレーター)
【企業情報】
・業界:建築
・従業員数:60名
・初の外国人採用
【採用された外国人】
・国籍:インド、ベトナム
・学歴:(母国大学)建築学部 ※2名とも
・語学レベル(日本語):ビジネス~日常会話 N2、N3レベル
・担当業務:CADオペレーター
建築業界で外国人を正社員として雇用したい場合、多くは在留資格「技術・人文知識・国際業務」を取得する、もしくはすでに持っている外国人を採用することになります。
この際に注意しなければならないことの1つとして、上記の在留資格では建築現場での軽作業など単純作業は認められていません。ですので、担当してもらいたい業務内容と採用したい外国人の在留資格の活動内容が合っているかどうかしっかりと確認しましょう。
【近畿地方】従業員数20名の専門商社(海外営業)
【企業情報】
・業界:専門商社
・従業員数:20名
・外国人採用の経験あり
【採用された外国人】
・国籍:バングラディシュ
・学歴:(母国大学)経営学部
・語学レベル(日本語):ビジネス N2レベル
・担当業務:海外営業
在留資格「技術・人文知識・国際業務」では上記のCADオペレーターのような理系分野の職種だけでなく、文系分野の職種の方もいます。
例えば、「人文知識」では、経営マネジメントや貿易などに関わる会計業務などが該当します。加えて「国際業務」の場合は、主に通訳・翻訳の仕事をすることが可能です。
ですので、外国人材を営業や企画職などで採用する場合も、おおよそ在留資格「技術・人文知識・国際業務」が該当する可能性が高いです。
【関東地方】従業員数30名の出版社(海外企画)
【企業情報】
・業界:出版
・従業員数:30名
・初の外国人採用
【採用された外国人】
・国籍:イタリア
・学歴:(母国大学院)アジア研究
・語学レベル(日本語):ビジネス N2レベル
・担当業務:海外企画
在留資格「技術・人文知識・国際業務」のうち、「人文知識」と「国際業務」では各々の分野ごとに担当できる業務内容の違いはありますが、実際の業務レベルで考えると基本的に人文知識と国際業務の両方にまたがる仕事を担当する場合が多いです。
まとめ
会社の規模によっては、「就労ビザ」の申請書類の種類や審査期間に差があるものの、中小企業や設立したばかりの企業であっても優秀な外国人を採用することができる可能性は十分にあります。日本国内での人材確保が難しくなってきているなかで、海外にも視野を向けることで、国内では採用が難しい優秀な人材を確保できるかもしれません。
▶︎「就労ビザ」に関連する記事をみる 【就労ビザの申請方法】国内採用と海外採用での申請フローについて解説 |
【参考】
・外務省 | 就労や長期滞在を目的とする場合
・出入国在留管理庁(旧:入国管理局) | 各種手続案内
・出入国在留管理庁(旧:入国管理局) | 在留資格一覧表
・法務省 | 日本での活動内容に応じた資料【在留資格認定証明書交付申請】