【中小企業の外国人雇用の実情】外国人労働者14%増の3つの理由

大手企業のみならず、規模の小さな会社でも外国人の雇用が年々増えているのをご存知でしょうか?その背景には日本国内の人材不足の影響もありますが、それだけでなく会社の成長を考えた際に「外国人採用」という選択肢を選ぶ企業が増加しているのです。そこで今回は、なぜ中小企業で外国人採用が行われているのか3つの理由に分けて解説します。

一歩先ゆく中小企業の外国人採用

日本国内で働いている外国人は年々増加しています。厚生労働省が公表した「外国人雇用状況」の届出状況まとめ【本文】」によると、2019年10月末現在で、約166万人の外国人が日本で働いています。前年同期で比べると約14%も増加しています。

この外国人労働者人口の記録は、平成19年に「外国人雇用状況」の届出が義務化されて以来、過去最高を更新し続けています。

また、外国人を雇用している事業所は全国に24万2,608か所あります。そのうち従業員数30人未満の事業所が59.8%(14万5000か所)を占めています。30人~99人の従業員を雇用している事業所も含めると、全体の約78%を占めることになります。

ただ、日本全国には約558万か所の事業所があります(2016(平成28)年6月1日時点)。外国人を雇用している事業所は約24万か所なので、全体から見るとまだまだ外国人採用を実施している企業は少ないと言えます。

ですが、外国人労働者数の増加からもわかるとおり、ここ数年は急速に外国人採用の需要が高まってきています。また、大手企業よりも、規模の小さな会社を中心に外国人採用が広がってきていることは注目したいポイントです。

中小企業が積極的に外国人採用を行う理由

外国人採用を行う中小企業の数が年々増加している背景の1つに、日本国内での人材不足が挙げられます。

中小企業基盤整備機構が2017年に実施した「人手不足に関する中小企業への影響と対応状況」のアンケートでは、7割の中小企業が「人手不足」を感じています。また、「人手不足」を感じている企業の半分以上は非常に深刻な状況に見舞われています。

ただ「人手不足」を解決するためだけならば、外国人採用ではなく国内での採用に集中する方法も選択肢のひとつです。では、なぜ中小企業で外国人採用が行われているのでしょうか?その理由は下記の3つに分けられます。

【理由1】若くて優秀な人材を確保しやすい

外国人採用市場を見てみると、20代~30代の若手人材を採用しやすいというメリットがあります。日本国内では人口減少と高齢化により、労働力資源が減り続けている一方で、東南アジア諸国には豊富な労働力資源があります。例えば、平均年齢で比較すると、日本の場合は約46歳(2015年時点)ですが、ベトナムでは約32歳、フィリピンが約24歳と非常に若く、豊かな労働力を持った人材が多いということがわかります*1。

そんな彼らにとっても、日本で就職することは本国で就職するより給与が高い場合が多く、余裕をもって家族を養うことができるなどのメリットがあるため、日本で働くことに対して魅力を感じている方が多いです。

また、優秀さを測る1つの基準として「学歴」があるかと思いますが、世界大学ランキングを見てみると、上位100位以内に入っている日本の大学は2つのみで、東京大学の世界36位と京都大学65位です(2020年度版)。一方で、アジア諸国に目を向けると、中国の大学は上位25位までに2校が、他にもシンガポール1校などが上位にランクインしています。

学歴だけが全てではありませんが、日本国内のみに焦点を当てて人材を探していると、より優秀な人材を見落としてしまう可能性があります。実際に、外国人採用をしている企業のなかには、国籍問わず優秀な人材を募集した結果、採用したのが外国人だったという事例も少なくありません。

【理由2】組織の成長につながる

外国人は日本人とは異なる文化や価値観をもっています。はじめて外国人採用をする企業では、その点を不安に思うこともあるでしょう。ですが、実際に外国人採用をしている経営者の方々は、外国人を採用したことで社内の活性化や組織の成長につながったと仰る方が多いです。

▶︎「外国人採用成功事例」に関連する記事をみる
外国人採用成功の秘訣は「信頼」。高度人材を中心とした企業づくりとは(前編)【株式会社DOI HOLDINGS】
外国人採用成功の秘訣は「信頼」。高度人材を中心とした企業づくりとは(後編)【株式会社DOI HOLDINGS】

日本人だけのチームでは生まれてこないような柔軟なアイデアや、新しい仕事の取り組み方など、組織そのものの改革を促し、結果として組織や企業の成長につながっていきます。また、社内にいる既存の日本人メンバーにとっても、外国人社員と共に働くことは刺激になるだけでなく、今までの自分自身の仕事のやり方を見直すよいきっかけにもなります。

また、外国人材を採用したことで、従来の日本的な働き方や組織のあり方を見直すきっかけになり、結果として日本人社員にとっても働きやすい環境になるなどのメリットに繋がります。外国人材が組織に入ることで、日本企業にありがちな時間のロスや無駄な作業を削減し、新たなビジネスやアイデアを生み出すことができる可能性がぐんと上がります。

【理由3】海外進出に踏み出しやすくなる

現在の日本国内市場は、少子高齢化の影響で、人口減少、経済規模の縮小が予測されており、内需回復を期待できない状況が続いています。そのため、企業の生き残りを賭けて、日本国内のみならず、海外への事業展開や販路開拓を考えている中小企業も少なくありません。

実際に、2019年に日本貿易振興機構(JETRO)が調査した「2019年度日本企業の海外事業展開に関するアンケート調査(2020年2月)」によると、中小企業2,828社に海外進出についてアンケートを行ったところ、約55%の企業が「海外進出の拡大を図る」という回答を出しています。

海外進出の際に貴重な戦力となるのが外国人材です。グローバル展開を考えた際、まず言語が大きな障壁になる場合が多いですが、進出したい国出身の外国籍の方を採用すれば、言語の問題が解決されます。また、進出したい国の商習慣やビジネス上のルールについて詳しい人材を採用できた場合には、言語面だけでなくビジネス面でもスムーズなやりとりが可能となります。

▶︎「外国人採用のメリット」に関連する記事をみる
外国人を採用する5つのメリット

まとめ

中小企業で外国人採用が増加している大きな理由としては、一歩先を見つめた人材確保を行い、企業の成長を促すためだと言えるでしょう。現状維持ではなく、攻めの一手として外国人採用に踏み出す企業が年々増加しているなかで、焦りや不安を感じている中小企業の方もいらっしゃると思います。まずは、「外国人採用」について調べることからはじめてみてはいかがでしょうか?一歩踏み出すことが、企業の今後の成長を促す契機になるかもしれません。


【参考】
・法務省 | 「外国人雇用状況」の届出状況まとめ【本文】 (令和元年 10 月末現在)


*1 各国の平均年齢は、CIAワールドファクトブックから引用しています。