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より良い市場を求めて、日本企業のグローバル化がますます加速しています。それに伴って、国内外問わず優秀な人材を確保しようとする企業が増えてきています。ですが、採用後に外国人材をどのようにマネジメントすれば良いのか悩んでいる企業の方も多いのではないでしょうか。
今回は、タンザニア、モンゴルをはじめ世界各国に日本の中古車を販売・輸出している株式会社ビィ・フォアード(以下、ビィ・フォアード)取締役・ゼネラルマネージャーの末盛 貴弘さんに「多国籍社員のマネジメントとキャリアアップ」についてインタビューしました。
話し手:株式会社ビィ・フォアード 取締役・ゼネラルマネージャー 末盛 貴弘(すえもり たかひろ)さん
明治大学法学部卒業。都内の日産系自動車販売会社で12年間、人事業務に従事。採用から労務、給与まで一連の人事業務を経験。その後、自動車買取店勤務を経て、株式会社ビィ・フォアードに入社。2013年8月取締役に就任。現在は人材採用から資金調達まで、管理部門の担当役員として会社の屋台骨を支えている。
◆株式会社ビィ・フォアード(https://corporate.beforward.jp/company/)
創業は2004年。社員数は199名で、うち65名の外国籍社員が在籍している。日本の中古自動車・部品を世界200以上の国や地域に販売・輸出をする越境ECサイトを運営。また、サイトの運営以外にも、現地へのデリバリーなど、販売から輸送まで一気通貫でビジネス展開している。
◆販売ポータルサイト「beforward.jp」(https://www.beforward.jp/)
月間6000万PVを誇る、中古自動車だけでなく日本製品をはじめとしたさまざまな商材を販売するポータルサイト。掲載商品のクオリティの高さから、新興国を中心として多くのユーザーからの支持を集めている。
初めて外国人を採用されたのはいつ頃でしょうか
2009年ごろにウズベキスタンの方を採用したのが初めての外国人採用でしたね。現在では、日本を含めて30ヶ国以上の国籍の社員が在籍しています。過去に在籍していた方も含めると、50ヶ国ほどの方々と出会ってきていると思いますね。
どのような採用方法で外国人の方を採用されてきたのですか
日本で働きたい外国人求職者の集まるサイトや求人媒体などを使用して募集しています。それ以外ですと、外国人社員からの紹介で採用に至る場合も多いです。彼らは、日本各地にある出身国のコミュニティに属している場合があり、そこから友人を連れてきたりすることもありますね。
海外で採用することも稀にはありますが、日本に外国人社員を連れてくることは、ビザの申請などの面で非常に大変なんです。基本的には日本国内にいる外国人材を採用しています。すでに日本に住んでいる方を採用した方が、弊社で働き始めるまでの期間が、海外で採用した場合と比べると短いですからね。
外国人材を採用される際に重視しているポイントはありますか
過去に何をやってきたのかという実績を重視していますね。これは、日本人を採用する際にも当てはまります。過去の実績をしっかり聞くことで、弊社にマッチする人材なのか人物像を見極めています。
ただ、外国人採用の際に追加で確認する事項があるとすれば、「現地の言語」、「現地の商習慣」がわかる方は積極的に採用していますね。我々は、日本の中古自動車や部品を世界200の国や地域に販売・輸出をする越境ECサイトを運営しております。そうしますと、英語やフランス語などのメジャー言語だけでなく、現地のマイナー言語を話せる人材がいると、お客様の対応や、現地のエージェントとのコミュニケーションが非常にスムーズになります。
また、「現地の商習慣」という観点からいうと、新たな地域に販路を広げるためには、その土地ごとの独特のビジネスのやり方を理解しておくことが大切です。特に、我々は新興国を中心にビジネスを展開しておりますので、日々状況が変わります。その点を理解して、対応できる外国籍の方は積極的に採用していますね。
さまざまな国籍の方が在籍されているそうですが、入社研修などはどのようにされていますか
研修については各部署に任せていますね。というのも、外国人採用の場合、ビザの申請などの関係で入社時期がバラバラになりがちなので、まとめてOJT(実際に業務を経験することで仕事を覚えること)を行うことが難しく、個別に対応してもらった方がスムーズに入社後の教育が行えるからです。
研修では、主に弊社のビジネスノウハウの共有や、独自開発したシステムの使い方などを教えていますね。弊社にはたくさんの国籍の方が在籍しているので、誰でも同じように作業ができるよう、システムや業務フローの「見える化」を徹底しています。先輩社員からすると、自分のやっていることがバレてしまいますので、サボりにくいとは思います(笑)
外国人社員のマネジメントを行う際に、気をつけていることはありますか
「明確にハッキリ伝える」ということを大切にしています。やっぱり言語の問題はどうしてもありますので、ちゃんと相手が理解できるまで伝えるようにしています。
例えば「給料」とは何かとなった時に、日本人は成果に対する評価にプラスして、その会社に属していることでもらえるお金と思っている部分があると思います。
一方で、外国籍の方は、成果に対する報酬が給料としか考えていない方もいます。そのような場合、成果と報酬の関係が曖昧ですとモチベーションが下がってしまいます。なので、「この給料は何に対する報酬なのか」という点を明確化して、教えてあげる必要性があるんですね。
やはり彼らも頑張った分だけ評価される環境はモチベーションが上がりますし、会社にとっても評価をちゃんと行えば、しっかりと力を発揮してくれる社員は大切な存在です。
外国人社員のキャリアアップについてお教えください
外国人社員本人の気持ちを優先しています。と言うのも、外国人社員の場合、日本でお金を稼いで、5年、10年したら本国に帰りたいと考えている方もいますし、日本に残ってキャリアをグレードアップしていきたい方などそれぞれで異なります。ですので、実績を積み上げることで、キャリアを伸ばしていけるようなシステムにしています。
実際の例で言うと、もともと同業他社にいて、そこから弊社に転職してきたモンゴルの方がいるのですが、今までの経験を活かして、弊社でも実績を積み上げてきました。モンゴルでの商売のやり方もわかっていますし、彼自身のポテンシャルもあって、最終的には営業部門の責任者として活躍しています。
最後にこれから外国人社員を採用したいと考えている会社に何かアドバイスがあればいただけますか?
ビザ(在留資格)などの更新や申請は大変だと思いますが、日本にはない、いろんな文化を持った方と一緒に仕事をするのは楽しいと思いますね。外国人採用に対して不安はあると思いますが、外国人社員と仲良くなることで、いろんな視野が広がるんじゃないかと思います。
編集後記
「外国人採用」といっても、日本人と採用基準を大きく変える必要性はありません。外国人社員に求める業務内容や過去の実績を元に、採用後にどう外国人社員に活躍してもらうかを採用側が描けるかどうかが重要です。また、ビィ・フォアードの実例のように、採用後にも外国人社員に日本でのビジネスのあり方や常識などを理解してもらうために、必要事項を「明確にハッキリ伝える」ということを大切にすることが重要です。
はじめて外国人採用を行う際には、不安や心配事が多いとは思いますが、まずは「どんな人と一緒に働きたいか」と考えることから、外国人採用に一歩踏み出してみてはいかがでしょうか。