建設業界×外国人技術者採用!会社の存続を賭けた外国人採用とは?【金子機械株式会社】

*新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、オンラインでインタビューを実施いたしました。

日本国内でも人材不足が顕著な業界の1つが建設業界。会社の存続を賭けて、若手人材を確保しようと努力しているなかで、外国人採用に踏み切る企業も少なくありません。ただ、建設業界は、外国人労働者を多数受け入れている業界でもありますが、特定技能や技能実習など短期間での受け入れが多く、人材不足の解消に至っていないという現状があります。

今回は、建設機械レンタル業を行っている金子機械株式会社 代表取締役 金子直樹さんに「会社の未来を考えた外国人正社員採用」についてインタビューしました。建設業界での外国人採用とはどのようなものなのか、外国人採用に至るまでのストーリーについてもお伺いしてきました!


話し手:金子機械株式会社 代表取締役 
金子直樹(かねこ なおき)さん

1973年横浜市生まれ。1997年東海大学法学部を卒業後、金子機械株式会社に入社。建設機械レンタルに関わる機械整備、営業、経理など全ての分野を経験後、2008年に代表取締役に就任。海外製建設機械を日本に導入するなど希少機械のレンタルを東日本を中心に展開。海外にも出荷するなど事業の拡大を図っている。


企業情報

【会社名】金子機械株式会社 (http://kanekokikai.co.jp/
【創業】1945年
【従業員人数】103名(うち、外国籍 5名)
【海外拠点】なし(2020年8月現在)
【外国人採用歴】

  • 2018年 モンゴル籍の技術職5名採用
  • 2019年 ミャンマー籍の営業職1名採用
  • 2020年 モンゴル籍の技術職1名採用

【事業内容】 建設機械の総合レンタル業及び販売・修理・買取

創業は1945年。70年以上にわたり建設業界・建設機械レンタル業で業界のなかでも「技術力」でイニシアチブを握ってきた実績をもつ。工場や現場の細かなニーズを的確に把握したうえで、作業を円滑に行うための提案を行うなど顧客目線で事業を展開。シャベルなどの一般汎用機のみならず、専門的な基礎工事機械も多く取り揃え、それらの機械の整備や修理まで一貫して担当できる知識と経験豊富なスタッフを多く抱えている。

事業内容とビジネスモデルをお教えいただけますか?

弊社は、昭和20年より建設現場などで使用する建設機械のレンタル業を行っています。建設機械を購入し、それをお客様にレンタルしていただき、最終的に機械を売却するというビジネスがメインです。建設機械レンタル業は、機械を購入して、その機械をお客様に長くレンタルしてもらうことで利回りを得るビジネスモデルです。ですので、お客様にいかに長く機械をレンタルしてもらえるかが重要なんですね。

ただ、利回りだけを考えてビジネスに注力してしまうと、機械を利益のための存在と捉えすぎてしまうんです。実際の建築機械というのは、工事現場で作業するための道具ですので、使い勝手や故障が起きないように整備されていることが本来最も重要なことなんです。

しかしながら、世の中の主流としては、いかに効率よくレンタルさせるのかというところが重要視されているのが現状です。機械が良いか悪いかというのは二の次になってしまっています。そこで、弊社では原点に立ち返って、あくまでも機械は機械として捉えて、自社で機械を修理し、整備できる環境を整えています。そのために高い技術力を持った職人を雇用しています。弊社の高い技術力は他の会社にはない強みです。

それ以外にもお客様に機械を購入していただいたり、機械を修理して使えるようにするという仕事も行っております。実際のお客様の使用状況なども想定して、提案型でお客様に機械の選び方から、よりよい使用方法などをご提案させていただいております。

御社の強みは「技術力」とのことですが、より具体的にお教えいただけますか?

技術力が高いというのは難しい機械を扱えるということなんですね。そうすると競合他社との競争に勝てるということでもあるのです。どういうことかと言いますと、建設機械と言ってもいろんな種類があります。皆さんが日常よく目にするショベルなどの機械は、一般汎用機といって非常に整備が楽な機械なんです。弊社の場合は、そのようなメンテナンスが簡単な機械だけでなく、非常に整備が難しい基礎工事用の機械を中心に取り扱っています。

基礎工事用の機械は、複雑かつ精密な機械ですので高い技術力がないと整備ができません。そのため、大手企業のように全国に営業所がある場合、それぞれの営業所に満遍なく高い技術力を持った人員を配置するというのは難しいので、技術力をあまり必要としないショベルなどの一般汎用機を選びがちなんです。ただ、そうすると、技術者が少ないのでちょっとした不良やトラブルでメーカーに修理を依頼せざるを得ない状態になってしまいます。

先ほども申し上げた通り、建設機械レンタル業のビジネスモデルは基本的に機械を長くレンタルしてもらって利益を出すというシステムになっているんですね。なので、レンタル期間が長ければ長いほど利益が高い仕組みなんです。そのため、機械の修理をメーカーに依頼する期間や修理費用などは、時間とコストを費やしているだけではなく、利益を得られる時間が減ってしまっているということにもなります。なので、高い技術力を持った職人を雇っていない会社の場合、修理すれば使える機械でも早めに売ってしまって、新しい壊れにくい機械を買うということをしています。最終的に何に違いが出るかと言いますと、利益率に差がます。新しく機械を買うといっても、建設機械は非常に高価なので、頻繁に買い替えていると非常にコストがかかります。長く機械を使い続けてもらえることで、その間は利益が発生しているので、最終的な利益率が変わってくるのです。

弊社は決して大きな会社ではありませんが、利益率を守ことで社員の給与や職場環境の整備などに投資をして、安心して仕事をできることに重きを置いています。また、社員や会社だけでなく、利益を世の中に還元して経済を回すという使命も持って仕事をしています。我々が仕事で利益を出すことが、結果として経済活動をよりよくしていくものであると思っています。

技術力を持った職人の方がいることが、非常に重要なんですね。では、若手人材よりもベテラン人材を採用した方が即戦力になるのではないでしょうか?

長期的な会社の成長を考えると、若手人材の採用は必須です。ベテラン人材ばかりだと、定年退職などで一気に退職されてしまう可能性があります。ベテラン社員がいなくなったことで、サービスの品質が落ちるようなことがあってはならないと思っています。サービスの品質を保ち続けるためには、技術職の年代がバラけている必要があります。そのためには、若手人材を採用することが必要不可欠です。

ただ、建設業界は、ブルーカラーというイメージが強いためか、若い人からの人気があまりない業界です。そのため、若手人材を採用するのは非常に難しい状況が続いています。弊社でも新卒採用は行っているのですが、毎年採用予定人数を確保できない状況が続いています。

工業高校や大学の工学部などで勉強された日本人の学生さんもいるにはいるのですが、基本的にその方々は車業界に吸収されていってしまいます。車業界は高校や大学と太いパイプを持っている場合が多く、建設業界に来てくれる学生さんはほとんどいないというのが現状です。ですので、国内だけでは、若手人材の採用が難しいと考え、外国人採用に踏み切ったという背景があります。

実際に外国籍の方を採用されるまでに至った経緯をお教えいただけますか?

若手の人材採用に悩んでいたところ、2018年3月頃に弊社の経営管理部マネージャーから「外国人の採用はどうでしょうか?」と提案がありました。 経営管理部マネージャーから詳しく話を聞くと、他社も含めた人事・広報の集まりに参加した際に、外国籍社員を多く雇っている人材会社から外国人採用の良さやモンゴル人材の話を聞いたとのことでした。その集まりの後、 経営管理部マネージャーは外国人採用について話をしてくれた人材会社さんに直接訪問して、実際の働いている外国籍社員の様子などを見学したとのことで、その時の話もしてくれました。非常に優秀な外国人メンバーがいきいきと働かれている様子を目の当たりにして、若手でやる気のある人材を確保する1つの手段として、「外国人採用はとてもよいのではないか」と提案してくれたんですね。

とはいえ、ベトナムやフィリピンの方と話す機会は過去にあったのですが、モンゴルの方とはお会いしたことがなかったので少し不安はありました。ただ、 経営管理部マネージャー の情熱を感じて、2018年4月に社長、工場長、営業統括部長、経営管理部マネージャーの4名で、採用面接のためにモンゴルへ行きました。モンゴルにわざわざ向かわせたのは、対面で話をしないと実際の人柄やその人自身が見えてこないと思ったからです。経営管理部マネージャーが見学させてもらった人材会社の方にも手伝っていただき、15名ほど大学生を集めてもらいました。そのなかから5名を2018年6月に採用しました。

最初はあまり期待しておらず、15名集まってくださったうち、何名ぐらいが採用ラインに達しているのだろうかと思っていたのですが、お会いした全員が、どなたも選び難いほど優秀な方ばかりで、最終的にはどの方を選ぼうかと非常に悩みました。皆さん、日本で働きたいという気持ちが非常に強く、機械に関する専門的な知識やスキルを身に付けたいというモチベーションも高い方ばかりだったので本当に迷いましたね。

人柄や専門知識、そして日本で長く住みたいと考えている方を採用しました。建設業界での外国人採用というと、特定技能や技能実習生が多いのですが、それらの在留資格では、数年と短期での採用になります。弊社のように高い技術が必要で習得までに長期間かかる職務の場合だと、一人前になったところで国に帰られてしまうので、人手不足の解消にもならず、弊社の採用には合わないと思っていました。高度な技術を習得してもらうためにも日本で長く働ける就労ビザを取得する必要があると考えて、長く日本で働ける在留資格の獲得に努めました。そのおかげか、弊社にいる外国籍社員の場合は、3年から5年の在留期間を持っている方がほとんどです。

外国籍の方を採用されて、社内にどのような良い影響がありましたか?

弊社が扱っている基礎工事用の建設機械ですが、高い技術力が必要とはいえ、長年携わってきた人間にとってはある程度の慣れも出てきてしまいます。そのため、「これぐらいで十分だろう」というふうに考えてしまって、向上心が失われてしまうんですね。ですが、そこに若手、特に外国籍の人材が加わることでベテラン社員のモチベーションが向上するんです。

具体的にいうと、外国籍の若手社員は建設機械に関するスキルや知識は乏しいのですが、もっと複雑な技術を学びたいと非常に意欲的にどんどん難しいことに挑戦していくんです。そんな外国籍社員の姿をみて、「もっと自分も頑張らなくては」とベテラン社員も意欲が湧いてくるんですね。そういうふうに、社員全体のモチベーションが高まるとより良い機械整備ができる環境が整ってくるんですね。

また、新しい技術への抵抗感は若手人材の方がないですね。タッチパネルで操作する機械など、日々、新しい技術や機能を搭載した建設機械が登場してきているので、その新しい機能に素早く対応できるのは、柔軟な思考をもつ若手社員の方が有利な場合があります。

ただ、若手人材の柔軟な思考力も重要ですが、ベテラン人材の経験に基づく「機械とはこういうものだ」という基礎的な部分も必要になってきます。なので、機械の修理や整備をやり切るためには、ベテラン人材と若手人材がチームになって仕事を進めていかないと最新のサービスは提供できないのです。

外国籍の若手社員とベテラン社員が一緒に仕事をするようになってから、仕事以外のコミュニケーションも盛んになりました。外国人社員についても、一生懸命頑張るので先輩たちにとっては可愛い後輩なんですね。拙い日本語でも頑張ってコミュニケーションしてくれるので、社内での雑談が増えて、雰囲気が非常に明るくなり、笑いが増えましたね。

反対に、外国籍の方を雇用しているなかで、失敗してしまった施策などございますでしょうか?

失敗談と言いますと日本語の問題があります。これは外国籍の方の問題というよりも、私たち日本人の認識の問題でした。私も含めた日本人は、外国の方が日本語をちょっとでもわかると「日本語よくできているね」って言いがちなんですよね。入社してすぐの頃は、会社に馴染んでもらうことが重要だと思っていたので、それでも良かったのですが、日本人社員から日本語を褒められた外国人社員は「この程度の日本語でいいんだ」となってしまってそれ以上勉強しようという意欲がなくなってしまったんです。

1ヶ月経ってもお客様扱いが続いていて、これはよくない傾向だと思いました。さらに拍車をかけたのが、日本人の察する文化です。外国の方が話す内容をある程度、読み取って「この間違いはこういうことを言っているのだろう」と想像して分かったように話を返してしまうんですね。それが、外国人社員本人たちの伝える力を阻害していた部分があります。オンライン研修だとか、語学研修も行っていたのですが、肝心の私たちの日常部分、ほんの些細なところから日本語教育を始めていなかったので日本語能力を改善できませんでした。

なので、日本人社員に日常的な会話から「その日本語は違うんだよ」としっかりとした口調で伝えることを周知しました。日常的な部分以外、つまり仕事現場でもちゃんと外国籍社員が話を理解できているのかしっかりと確認してもらうようにもしました。具体的には、その場で伝えた内容を復唱してもらったり、会議のあとで議論した内容をチャットで送って、理解を深めてもらったりと必ず伝わるように説明に努めました。

また日本語の上達、日本語でのコミュニケーションの活性化のため会社内にいる時はたとえ同じ母国の人同士であっても日本語で話す厳格なルールを作りました。

日本語でのコミュニケーションを改善されたとのことですが、なぜ必要だと思われたのでしょうか?

弊社の技術職は高い技術力が求められます。そのため、ベテラン社員から高いレベルの技術を教えてもらう必要があるのですが、外国籍社員の場合、日本語での説明を理解してもらわないといけない訳です。

モンゴル籍の社員の方から、入社後しばらく経って「もっと難しい技術を学びたい」というリクエストがありました。それに対して、いきなり高いレベルの技術は教えられないと伝えました。その技術を学ぶためには、ベテラン社員から学ぶ必要があり、そのためには日本語が必要になると明確に伝えました。外国籍社員たちは、高い技術を学ぶためには日本語も必要なんだというところを理解してくれ、実際に日本語を一生懸命学ぶようになりました。

最初はとても大変でしたが、日本で働くためには日本のルールや文化を理解していないと働き続けることは難しいです。試行錯誤を続けて日本のルールや文化を理解してもらう努力を続けています。具体的には、日本語のオンラインレッスンや、日本の小学生向け国語ドリルなどを利用して外国人社員の日本語能力の向上に努めています。その結果、日常会話レベルから、ある程度の難しい日本語を理解できるビジネスレベルまで日本語レベルが向上した外国籍社員も多くいます。

最後にこれから外国籍社員を採用したいと考えている会社に何かアドバイスがあればいただけますか?

グローバル化が進んでいくなかで、日本の技術が世界に対応していかないと置いていかれてしまうと思っています。グローバル化に対応するためには経営者・社長側が他の文化をどれだけ理解できる柔軟性があるか、日本ならではの独自性を理解しているか、柔軟な思考力があるかが非常に大事になってくるのかなと思っています。

例えば、団塊世代の経営者のなかには、「日本の製品が世界で一番素晴らしい」、「日本人は勤勉で働き者だ」という固定されたイメージを持っている方がいるのですが、そういった方は時代がどんどん進んでいっているということを自覚して記憶をアップデートしていかないと時代に置いていかれてしまいます。実際に、建設業界でいえば、優秀な機械エンジンはドイツ製のものが増えてきています。固定概念を持つのではなく、柔軟に思考や価値観をアップデートしていくことが重要なのではないかと思います。

編集後記

他社との差別化のために、技術力を何より強みとしてきた金子機械株式会社。サービス品質維持のための、若手技術者を中心とした幅広い年齢層の技術者採用が企業の課題でした。外国人採用のきっかけは、日本国内に少ない若手技術者の確保のためでしたが、今ではベテラン社員のモチベーション向上をはじめとした、様々な良いインパクトが企業にもたらされていると今回のインタビューを通じて感じました。

外国人の採用を検討するときに、社長や採用担当者だけでなく、現場責任者が採用面接に同席することで、現場の採用に対する理解を得ることができ、現場でのスムーズな受け入れに繋がっています。また育成を現場だけに任せるのではなく、日本語の指導など、会社全体として若手人材の育成に向き合っていることが、組織の成長を促進させていると感じる取材でした。

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