日本人や外国人という垣根を超えて、優秀な人材を採用するためには?【羽田市場株式会社】

中小企業を中心に、多くの業界で人手不足が深刻化しています。高いスキルやバイタリティを持った優秀な人材を確保するためには、国内外を問わない戦略的な人材確保が必要不可欠です。

そこで今回は、羽田空港内に独自に設置された鮮魚センター「羽田鮮魚センター」を拠点として、全国で水揚げされた鮮魚を中間流通なしで漁師から直接仕入れ、最速のルートで飲食店などへ配送する新たな流通サービスを展開されている羽田市場株式会社(以下、羽田市場)取締役 CFO三輪 航平さんに「はじめての外国人採用」についてインタビューしました。はじめて外国人を採用するまでに、どんな不安や悩みがあったのでしょうか?それらの不安をどのように解決したのかお話をお伺いしました。

話し手:羽田市場株式会社 取締役 CFO 三輪 航平(みわ こうへい)さん

ゴールドマン・サックス証券、モルガン・スタンレー証券等でM&Aや資金調達業務に従事。その他外資系コンサルティング・ファーム等にて勤務。スタートアップ業界では、ライドシェア・サービス「notteco」のローンチおよび上場企業への売却、スタートアップの資金調達を多数サポートしてきた。2016年4月、羽田市場の取締役CFOに就任。三菱地所、スシロー、農林中央金庫などの大手企業から総額10億円以上の資金調達を実施。

登場人物:羽田市場株式会社 グエン・ティ・フオン・タオさん

ベトナムの大学を卒業後、2012年に本国の大手消費者金融に入社し、4年間データアナリストとして経営戦略作成のために顧客債務状況、経営利益や返済リスクなどのレポートを作成。2016年に来日し、日本語学校に1年間通い、2017年にN1の日本語能力資格を取得。2018年に現在の羽田市場に入社し、経営支援の事務や顧客出荷データ作成、経営資料集計、請求関連などの業務を担当。

現在どのような事業をされているのか教えて頂けますか

弊社は2014年10月に設立した業員数も30名ほどの小さなベンチャー企業です。お客様に素早く安全で美味しい魚介類をお届けすることが私たちの仕事です。具体的には、羽田空港内に独自に設置された鮮魚センターから、全国の飲食店へ最速のルートで鮮魚を届ける流通サービスを展開しています。

私たちのサービスの大きな特徴は大きく3つに分けられます。1つ目が築地を利用しない独自の鮮魚入手ルートを持っていることです。おおよそ東京で出回っている魚は築地市場経由で消費者の元に届けられるのですが、その築地市場を経由せずに、羽田空港内に独自で持っている「羽田鮮魚センター」から、その日に水揚げされた魚を仕分け梱包、加工して国内外の飲食店やスーパーなどに販売して卸しています。

2つ目は、「空輸」という独自の流通ルートです。通常の流通過程で介在していた中間業者を省くことができ、漁師さんの取り分が増えるだけでなく、流通過程での手間や時間も大幅に減らすことができました。

最後は、「トレーサビリティ」という調達から廃棄までの履歴情報を追跡することができるシステムを導入していることです。羽田市場で取り扱っているのは、漁師直結の新鮮な魚介類なので、産地の漁師などと直接やりとりをすることで、「いつ」「どこで」「だれが」「どのような漁法で」獲ったかまで把握できます。そのおかげで新鮮さだけでなく、食の安全性の担保もできるようになりました。

最初は「外国人採用」に対してどのようなイメージを持たれていましたか

最初は「外国人を雇う」ということに対して、社内に知見を持っている人間がいなかったこともあり、「複雑な採用要件があるんだろうな」とか「雇用手続きが大変なんだろうな」という漠然とした不安がありましたね。

「外国人採用をやってみよう」という段階になった時も、外国人採用にまつわる法律や法改正のニュースをうまくキャッチアップできていなかったので、「意図せず法律に違反した採用をしてしまわないだろうか」と心配していました。

今回初めて外国人の方を採用されたそうですが、外国人採用をしようと思ったきっかけについて教えてください

日本人に限らず、「やる気のある優秀な人」を採用したいと思っていて、知人に相談したことが最初のきっかけです。知人からの紹介で、外国人採用を行っている会社の集団面接応募させていただき、その面接を通してタオさんと出会いました。

タオさんの第一印象についてお教えいただけますか

初めてタオさんにお会いしたとき、「今までのスキルや自分の語学力を活かして、日本で働きたい」とお話しされていて、彼女のモチベーションの高さに非常に驚きました。タオさん以外にも高度なスキルや、日本語での高いコミュニケーション能力を持っている方はいらっしゃいましたが、弊社の求めるスキルセットにマッチしていたことと、彼女自身のモチベーションの高さが採用の決め手でした。

外国人採用に関する不安はどのようにして解決されたのですか

タオさんを紹介してくれた知人が、外国人採用にまつわるノウハウを豊富に持っていたので、外国人を採用するにあたっての注意点やポイントを彼から教えてもらいました。それ以外にも、友人や社労士に相談してみたりして、漠然とした不安を解消するための情報収集をしっかり行いました。

コミュニケーションで工夫されていることは何かありますか

コミュニケーションで大きな問題はないですね。弊社では鮮魚を取り扱っている関係上、難しい漢字もよく書類上で使用するのですが、彼女はすぐに覚えてくれているので、日本語の読み書きについては全く問題ないです。

ただ、彼女本人が「日本語を喋ることがまだまだ上手ではない」と気にされているので、複雑な話はメールなどの文章でも伝えるようにしています。今のところは、文章にすればすぐに理解してくれるので問題はないですね。

外国籍の方を採用したことで、社内で大きな変化はありましたか

現状ではそれほど大きな変化ではないです。ただ、それはタオさんが非常に優秀であり、日本人社員からの信頼があるからこその「変化のなさ」なのだと思っています。

実際に、羽田空港内にある弊社の鮮魚センター働くメンバーや営業部のメンバーは、彼女を非常に頼りにしています。まだ、彼女が入社してから1年ほどしか経っていませんが、今では色んなメンバーから仕事を割り振られて毎日引っ張りだこです。

彼女自身がコツコツと日々の業務でアウトプットを出してくれるているからこそ、既存メンバーが「この人に任せたら安心だ」という思いで仕事を任せられるのだと思っています。劇的な変化ではありませんが、日々の業務の積み重ねから信頼を作り出すということも同じくらい重要なことだと考えています。

今後の事業展開も含めて、外国人の方を積極的に採用していく計画などあるんでしょうか

国籍関係なく、優秀でやる気のある人を採用したいと常に考えています。なので、日本人、外国人関係なく「ぜひ会ってみたい」と思う人とお会いしていますね。そこはフラットに対応していこうと思っています。

今後、外国人を採用する企業に何かアドバイスをいただけますか

すでに積極的に外国人を採用されている企業もあると思うのですが、一方でまだ踏み切れていない企業の皆さんもたくさんいらっしゃると思います。かつての私たちもそうでしたが、外国人採用に関する情報が少ない状態だと不安しかないんです。なので、情報収集は非常に大切だと思います。まずは「外国人だから……」と食わず嫌いをせずに、一度お会いしてみてはいかがでしょうか?

編集後記

優秀な人材の確保は、企業そのものの発展に欠かすことはできません。日本経済においてはグローバル化が進んでいるなかで、市場はどんどん縮小しています。今後、日本人のみで安定した組織運営をしていくことは難しくなっていくでしょう。

そんな日本の状況があるなかで、「日本で働きたい!」という選択をしてやってきてくれた外国人の方々は、目的意識や将来のキャリアビジョンを明確に持っている人が多いです。三輪さんのように「優秀でやる気のある人と働きたい」と思っている採用担当の方々は、ぜひ外国人採用も検討してみてはいかがでしょうか。