出入国管理法の改正を受け、来年度以降企業の外国人採用が一層拡大される見通しとなり、企業側も外国人採用に対する準備体制を整える必要に迫られています。外国人採用では、応募者情報の確認不足などから後日様々なトラブルが発生することがあるので、万全の準備が必要になります。今回は、企業の採用担当者の方向けに、外国人採用の面接時に知っておきたい注意点についてまとめましたので紹介します。
外国人の採用面接を行う前に注意するべきポイント
外国人を採用面接する際は、次の5つのポイントに注意が必要です。
- 在留資格・在留期限
- 学歴・職歴と仕事内容の関連性
- 語学力・志望動機
- 人柄・性格
- 雇用条件の合意
それぞれ見ていきましょう。
在留資格・在留期限
外国人採用では間違えて不法滞在者を雇用しないために、外国人の在留資格および在留期限をきちんと確認しなければなりません。仮に不法就労させた場合、企業が不法就労助長罪に問われてしまう可能性があるので採用担当者の方は十分注意してください。
なお在留資格の確認では、「応募者が本人かどうか」「どのような資格で日本に滞在しているか」をチェックします。応募者には面接時に次の書類を持参してもらい、上陸許可がない不法入国者や在留期限がきれた不法滞在者ではないことを確認してください。
- パスポート
- 外国人登録証明書
- 在留カード
- 就労資格証明書
氏名、性別、年齢、国籍なども確認しますが、国籍を理由とする差別(不採用)は労働法規で禁止されているため注意しましょう。
学歴・職歴と仕事内容の関連性
外国人採用では外国人の学歴・職歴と、就労予定の仕事内容に関連性がなければなりません。以下、外国人を「新卒者」「転職者」「留学生」の3パターンに分けて見ていきます。
1. 新卒者の場合
新卒の外国人採用予定者の場合、新しい在留資格(就労ビザ)を取得する必要があります。履修内容と会社の仕事内容の関連性を確認するのに必要な書類は以下の通りです。面接時の際はきちんと持参してもらいましょう。
- 履歴書
- 履修証明書(大学・専門学校卒の場合)
- 成績証明書(大学・専門学校卒の場合)
2. 転職者の場合
採用予定の仕事に関する在留資格を持っているかについては、「在留カード」「就労資格証明書」で確認することになります。在留資格が適合しそうでも、念のため新しい就労資格証明書の交付を受けた方が安心です。
持っていなければ、新しい在留資格をとるため「履歴書」「職務経歴書」などの書類で、前職の実績・経験と採用予定の仕事内容との関連性を確認します。「関連性」については時間をかけて調査し、申請時に入管当局に明確に説明できるようにしておくことが重要です。
3. 留学生の場合
留学生のアルバイト応募の場合は、「資格外活動証明書」を持っている場合に限り就労可能ですが、1週あたり28時間以内、長期休業中は1日8時間(1週40時間)までの制限があります。また、留学生を1週28時間超の仕事に採用する場合は、「留学」から「就労」に在留資格を変更する手続きが必要となります。
語学力・志望動機
外国人の経歴と職務内容の関連性が確認できたら、仕事を長く続けてもらううえで重要な語学力や資質を確認します。
1. 語学力
「日本語能力試験」があれば持参してもらいましょう。日本語能力検定試験は外国人の日本語能力を測る最もメジャーな検定試験です。なお日本語の日常会話はできても、読み書きが苦手な外国人が多くみられます。必要に応じて面接会場で簡単な日本語の文章を作成してもらい実力を確かめてください。さらに英会話力が求められる職場なら、その能力もチェックする必要があります。
2. 志望動機・入社後の目標
日本で働ければよいという考えの外国人が近年増えているのも実情です。このような外国人は採用しても早期退職する可能性が高いので、面接担当者は志望動機や今後の目標に関する質問から、日本の社会で働いていけるだけの適性と資質を判断する必要があります。
- なぜ日本で働きたいのか
- この企業に応募した動機はなにか
- 入社後は何をやりたいか
3. 専門性
仕事に必要な専門知識について質問し、場合によっては、面接の場で簡単な模擬実践(介護の方法や接客応対などの実演)を実施するのも効果的です。
人柄・性格
十分な専門知識を持つ外国人でも、周囲との協調性や積極性など日本の職場で必要とされる人間性を確認しておくことも大変重要です。
1. 協調性・積極性
周囲との協調性にあまりに欠けていると人間関係のトラブルが起こりやすくなります。また、仕事で不明な点は早めに質問する積極性も必要です。協調性や積極性などは以下の質問から見極めてみてください。
- 今までの職場で楽しかったこと、苦労したこと、困難をどのように乗り越えたか
- 来日してからのストレス、失敗談
- 日本は暮らしやすいか、日本人の友人はいるか
雇用条件の合意
外国人応募者が、在留資格や人間的な資質に問題がなければ採用したくなりますが、その前に細かい就労条件などについて合意することが大切です。就業時間や残業時間の有無など事前に確認しておかないと、採用後でも「聞いていた話と違う」との理由で退職してしまう可能性があるからです。
1. 雇用期間・就業時間・休暇・残業の有無
雇用期間、就業時間、休暇、休憩時間、残業の有無、賃金形態などの就労条件は、細部まで漏れがないよう伝えましょう。あいまいな表現ではなく、はっきりと明確に伝え、誤解からトラブルを生まないようにしなければなりません。
また、雇用契約書や労働条件通知書は文書にして相手に交付することが義務付けられていますが、母国語に翻訳したものか英訳のものも同時に作成して交付すれば、お互いの誤解やトラブルを減らすことができます。
2. 仕事の内容と範囲
仕事の内容と範囲(権限)も明確に伝える必要があります。仕事には、準備や後片づけ(掃除)、本業に付属した付随業務などがありますが、外国人は自分の業務以外は行わない傾向があります。面接では外国人の業務範囲はどこまでなのかをはっきり伝えておきましょう。
3. 社会保険
社会保険の適用事業所で、正社員、または正社員ではない常用雇用労働者として外国人採用を行う場合は、社会保険に加入しなければなりません。社会保険は保険料の本人負担分があることから、事前によく説明し理解を得るようにしましょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか。外国人採用では、新卒者、転職者、留学生のアルバイトなどの雇用パターンに応じて必要となる書類や面接で確認する項目が異なります。外国人採用を検討している企業の採用担当者の方はぜひ上記を参考にして採用面接に臨みましょう。