多国籍メンバー定着率UPの秘訣とは?入社後のミスマッチを回避する施策(前編)【株式会社Lang-8】

採用活動は莫大な時間・コスト・労力がかかるもの。苦労して良い人材が採用できても、働き始めてから会社にミスマッチを感じてすぐに退職してしまう…という悲しい結果を招いてしまうこともあります。選考中、採用側・採用される側がお互いにミスマッチがないのかどうか、きちんと見極めていきたいところですよね。

今回は、株式会社Lang-8(以下、Lang-8社) 代表取締役の喜 洋洋さんと中途入社された黄 依紜さんにインタビューしました。前編では喜さんに外国人採用で工夫されていることについて伺ってきました!

話し手:株式会社Lang-8 代表取締役 喜 洋洋(Yangyang Xi/き ようよう)さん

中国で生まれ、4歳から日本で育つ。大学在学中、中国語を学ぶため1年間上海に留学。留学中に語学を教え合った経験から現サービスの発想を得て、帰国後にシステム制作を開始。大学卒業と同時にLang-8社を起業し、現在は語学学習サービスなど多数展開している。

 

登場人物:株式会社Lang-8 黄 依紜(Yiyun Huang/こう いうん)さん

台湾出身。2011年に来日し、京都精華大学デザイン学部イラストレーション学科に入学。大学卒業後は、グラフィックデザイナー・WEBデザイナーとして活躍後、2018年の夏にUI/UXデザインと出会い独学で勉強を開始。2019年6月にほぼ未経験でLang-8社に中途入社し、現在はUI/UXデザイン中心の業務を担当している。

 

UI/UXデザインとは…?

UIは「User Interface/ユーザーインターフェイス」、UXは「User Experience/ユーザーエクスペリエンス」の略。ユーザーにとって使いやすい、分かりやすいだけでなく、楽しく快適に使ってもらえるよう製品やサービスのデザインをすること。デザインだけではなく、ユーザーインタビューなどの市場調査やサイト解析を行いながら、サービス全体の設計をすることも仕事の一部になる。

事業内容について教えていただけますか

弊社は語学を教え合う相互コミュニケーションSNS『Lang-8』や文化と外国語について分からないことをネイティブスピーカーに質問ができるQ&Aサービス『HiNative』の開発から運営までしています。

『HiNative』は全世界で500万人のユーザーにご利用いただいていて、97%のユーザーが海外の方。今では110言語に対応し、232ヵ国の国と地域からアクセスされています。「世界のネイティブスピーカーの知と経験の共有」をビジョンにグローバル展開を進めています。

『語学学習Webサービス Lang-8とHiNativeの企画・開発・運営』を事業内容にしようと考えたきっかけは何だったのでしょうか

僕は中国生まれで4歳から日本に住んでいるのですが、中国語があまり話せなかったので、大学在学中に上海へ留学して中国語を学びました。勉強のために毎日中国語で日記を書いて中国人の友人に添削してもらっていたのですが、それがすごく勉強になったのです。また、中国には日本語を勉強したい人もたくさんいて、僕も日本語を教えてあげていたので、語学を教え合えるのはいい仕組みだなと感じていました。

当時はmixiも流行っていたので、「SNSを通じて世界中の人が文章を添削し合ったら面白いんじゃないか」と思いついたのが事業を考えたきっかけです。帰国後に『Lang-8』の制作に取りかかり、12年前、大学卒業のタイミングで起業しました。

起業した当初についてお話しいただけますか

今の若い起業家はものすごく優秀で、自身でシステム開発もできるし、資金調達やマーケティングにも長け、英語も話せる方が多くいます。ところが、当時の僕はサービスの構想はあるものの、自分で開発ができなかったうえ、資金調達の手段も今と比べると難易度が高い時代だったのでとても苦労しました。さらに創業メンバーが半年で退職してしまい、2年目に採用したエンジニアも喧嘩別れしてしまったりと、なかなかうまくはいきませんでした。

そんな中、自分でも開発ができるようにならないと壁が超えられないと考えるようになり、2年間システム開発の勉強をして、自分で開発できるよう技術を身に付けました。

最初のサービスである『Lang-8』はPC用サービスだったのですが、僕が勉強している間に時代はPCからスマホへと変わっていました。無理やり『Lang-8』をスマホ版に作り変えるのではなく、ゼロから新しいサービスを作ろうと考えて生まれたのが『HiNative』です。
『Lang-8』のように文章を書いて添削してもらうのではなく、もっと簡単にネイティブスピーカーに質問ができる語学交換のサービスです。

初めて外国人を採用されたのはいつ頃でしょうか

2016年くらいにアメリカ人を採用したのが最初です。外国人採用を目的に採用活動をしていたわけでなく、たまたま採用したのが外国人だったという感じです。プログラミングを勉強中で英語がネイティブだったので、これからお願いできる仕事がたくさんあるだろうと採用しました。

様々な国籍の社員の方々が在籍されているとのことですが、コミュニケーションで工夫されていることはありますか

弊社は業務中のコミュニケーションを日本語で行っていますが、曖昧な表現はしないように心掛けています。日本人によくある言葉を曖昧に濁すだとか、空気を読んで仕事をしてもらうということが無いように気をつけています。「期待しているのはこういうことだよ」「この仕事をあなたに依頼しましたよ」などと明確に言葉にして伝えるようにしています。

また、これは全社員に共通したことなのですが、一緒に働くメンバーにはなるべく会社の情報をオープンにするようにしています。アルバイトでも会社のキャッシュ残高や売上が全部見ることができるようにしていて、できる限りチャットツールなどを使ってテキストで残すようにしています。

現在採用活動はどのようにされているのでしょうか

求人サイト経由で採用することも多いですが、知り合いからの紹介もありますね。黄と知り合ったのも、知人から「未経験だけどUX/UIデザイナーを希望している」と紹介を受けたのがきっかけで、僕の方から「会社を見に来る?」と彼女に声をかけました。会社に合う良い人がいれば採用したいと思っているので、採用前に人となりを知れる期間があるとお互いにとって良いですよね。

あとは、フリーランスの方に仕事をお願いして、良い方であればスカウトするというような採用もしていました。実際に仕事ぶりを見ることができるので、スカウトでの採用はとても有益だったと思います。

採用において工夫されていることはありますか

弊社では入社前に「お試し期間」を設けています。これは仕事をゼロから教える研修のようなものではなく、実務に取り掛かってもらう期間です。

今の会社の規模くらいだと、社内での一人ひとりの影響力は大きいものです。会社の雰囲気にミスマッチな方がご入社となれば、既存社員にとっても新しくご入社される方にとっても良いことではないのです。お試し期間を通じて入社前にミスマッチだと分かることは、お互いのためにとてもポジティブなことだと考えています。面接だけでは分からないコミュニケーションや仕事への姿勢などを見ることができるのもお試し期間を設けるメリットです。

エンジニア・デザイナーなどの技術職・専門職の方には、お試し期間中も正規の料金をお支払いして、実際に開発やデザインをお願いしています。期間を長く取れればベストですが、お相手の都合もあるので、最短だと週末だけで作業してもらって制作いただいたものを提出していただき、ランチなどで話をする時間を設けるというようなこともしています。

実際、この「お試し期間」という制度は社員の定着率に関わっていると思いますか

そうですね。弊社の社風に合わないと求職者の方が感じられたらお試し期間中に辞退されますし。お試し期間では入社後働くイメージを明確に持っていただけると思いますので、定着率には大きく関わっていると感じています。ただ、「お試し期間」だけでは定着率の向上には繋がらないと思います。入社後の社員とのコミュニケーションもとても重要になってきます。

編集後記(前編)

外国人人材を採用したいと思っている企業の方々の中には、まだ採用をしたことがなくて、不安を抱えていらっしゃる担当者も多いかと思います。Lang-8社の「お試し期間」の実例のように、入社前に会社で働くイメージをしっかりと持てる施策は、お互いのミスマッチを防ぐメリットがあります。ですが、その他にもまだ社員の定着率に必要な要素があるようです。どのようなことが外国人社員の定着にとって重要なのか、後編は実際にLang-8社働いていらっしゃる黄 依紜さんも含めて、より深いお話をお伺いします!

【インタビュー:株式会社Lang-8】多国籍メンバー定着率UPの秘訣とは?入社後のミスマッチを回避する施策(後編)