外国人採用成功の秘訣は「信頼」。高度人材を中心とした企業づくりとは(前編)【株式会社DOI HOLDINGS】

「外国人採用」や「外国人雇用」と聞くと、日本国内では人材不足を補うための採用というイメージが強いのが現状です。ですが、そのような労働力不足を補うためだけの採用ではなく、企業成長のキーパーソンとして雇用をするという視点から外国人採用を見直していくことが重要です。

今回はIoT事業をはじめ外国人人材紹介など幅色い事業を行っている株式会社DOI HOLDINGS(以下、DOI HOLDINGS)取締役会長の土井 信幸さんと国際採用担当 グェン・クアン・リーさんに「高度人材を中心とした企業づくり」についてインタビューしました。前編では、管理職としてDOI HOLDINGSで活躍されているリーさんの今までの体験を元に、おふたりに外国人社員のキャリアステップについてお話を伺ってきました!

話し手:株式会社DOI HOLDINGS 取締役会長 土井 信幸(どい のぶゆき)さん

慶應大学大学院卒業。株式会社リコーに約10年勤務。クラウドコンピューティングの基礎技術の開発や営業職などを同社で経験後、2012年に土井電機代表取締役に就任。現在は取締役会長としてKAKEHASHIキャリアズなど、IoT事業だけでなく、外国人人材紹介サービスの提供にも関わっている。

 

話し手:株式会社DOI HOLDINGS 国際採用担当 グェン・クアン・リーさん

2010年、日本経済大学からのインターンシップ生として土井電機株式会社(現、株式会社DOI HOLDINGS)に入社。同社にて生産管理を担当後、管理職として資材の発注、製品の製造から納品まで全てを担当。現在は、「外国人の人材紹介に関わりたい」と国際採用担当として活躍している。

 

株式会社DOI HOLDINGS 企業情報

 

◆株式会社DOI HOLDINGS(ドイホールディングス)(http://doi.holdings/
創業103年。株式会社NTTドコモ衛星外部アンテナ用取付金具、接続端子管、ヒューズなどの製造・販売提供を行ってきた。その後、事業を選択・縮小し子会社のドイデンキに移管した。現在は投資会社となっている。
◆DOI INVESTMENTS PTE PLC (http://doi.investments
海外で日本語学校を運営し、技能実習生、特定技能の人材育成を支援するシンガポール法人。KAKEHASHIキャリアズ(http://kakehashi.careers/)という、日本語インターンシッププログラムによる、優秀な留学生や高度人材の活用・採用のサポートする外国人人材紹介サービスも提供している。
◆ドイデンキ株式会社(http://doi-elec.com/
新たにエネルギーの供給支援のためのIoTソリューション事業を展開している。エネルギー事業部門、防災事業部門の2部門からなる。

株式会社DOI TRUST

不動産賃貸事業を展開している。

◆鍼灸美容研究所『こきゅう南青山』(http://kokyu-m.com/
台湾宮廷式鍼灸の理論と手法を基盤とした独自研究開発の美容鍼灸・鍼灸施術を提供している。

リーさんとの出会いについてお教えいただけますか

土井さん:2010年に日本経済大学から「ベトナム人留学生を1名インターンシップで受け入れてくれませんか?」と連絡をいただいたことがきっかけです。当時は、インターンシップが今ほどメジャーではなかったこともあり、留学生をインターンで受け入れてくれる日本企業が非常に少なかったんです。

ただ、ちょうど2010年は私が4代目の社長に就任したばかりで、「何か社風を変えたい」、「何か変化を起こさないといけない」ということで、「留学生」が入ってくるということにはウェルカムな状態だったんですね。そこで、今まで経験のなかった留学生のインターンシップの受け入れに踏み切ってみたんです。

当時はインターンシップがメジャーではなかったとのことですが、インターン生を受け入れるということに不安はなかったのでしょうか

土井さん:不安というよりも「この人を放っておけない」という気持ちが非常に強かったです。

私自身、イギリスに留学した経験があるんですが、その留学先で就職活動もやっていたんです。そのときに本当に大変な思いをしました。就職先の探し方や、ビザの手続きだけでなく、住居の問題や銀行口座の開設方法などイギリスでの就職活動でいろんな壁にぶつかりました。また、当時は移民問題などがイギリス国内で盛んに議論されていた時期ということもあり、外国人が就職しにくいという状況もありました。結局、私は労働ビザがおりなくて、帰国してから一部上場の企業で働き始め、その後に弊社の4代目社長になったんです。

そのような経験があったので、当時、インターンシップでやってきたリーさんを通して、昔、イギリスでの就職活動に苦労した自分の姿が重なって見えたんです。自分が辛い経験をしてきたからこそ、今目の前にいるリーさんが弊社のインターン生として働くことが「この子にとっていい経験になる」と思ってインターンシップを受け入れました。

リーさんが貴社に入社しようと思った理由は何ですか

リーさん:大学3年生のときにもうほとんど卒業に必要な単位は取りきっていました。なので、日本の大学を卒業したら、やっぱり日本で働きたいと思っていたんです。ちょうどその時期に子供が生まれて、家族が増えたことで「日本で就職したい」という思いに加えて「家族のために長く日本に住みたい」と思うようになりました。

そんなときに、インターンで働いていた弊社でちょうど定年で1名退職されまして。人が足りていないということだったので、社長に相談して2012年4月に土井電機株式会社に入社しました。大学での私の専門が電気関係だったこともあって、その知識を活かして仕事ができるというのも大きかったですね。

リーさんが初めての外国人社員とのことですが入社されたとき、他の社員の方はどのような反応でしたか

土井さん:みんな、リーさんのことが好きでしたね。リーさんがまだインターン生だったときに、美味しいベトナムのチャーハン(コム・ザン:Cơm Rang)を作って持ってきてくれたことがあったんです。それを社員みんなで「美味しいね」と食べてから、みんなリーさんに好意を持ってくれるようになったのかなと思います。それに加えて、リーさんがいつも明るく笑顔なので、年齢層が高い職場でみんなにとても可愛がられていたんですよ。

リーさんは初めて日本の会社で働くことに不安はありませんでしたか

リーさん:私はもともと、日本の大学に進学していましたし、在学中にいろんな人々と会ってきたのでそこまで大きな不安はありませんでした。でも、やっぱり入社1日目はちょっと緊張しました。仕事をどのように知れば良いのか、どうしたらいいのかと迷うこともありましたが、2、3日目にはもう仕事に慣れていましたね。

リーさんが入社されたことで、会社としてどのような変化がありましたか

土井さん:職場がとても活気付きました。長年同じこと、同じ作業をやってきていたんですが、リーさんが現場のメンバーの知見も借りながら、率先して製造工程の改善を試みました。そのおかげか、みんなリーさんに刺激されて作業効率がよくなり、また改善策なども出てくるようになったんです。

改善策ということですが、具体的にはどのようなことをされたのですか

土井さん:具体的な例でいうと、資材管理の改善ですかね。毎月発注する資材の管理をソフトウェアを導入して無駄なくできるように工夫しようとしていたのですが、以前から働いていた日本人従業員は使い方が分からなくて挫折したんです。

ですが、リーさんは資材部品の名称や特殊な漢字を現場で覚えて、そのソフトウェアを使ってギリギリの資材発注をしたんです。ほかにも対面で資材交渉したり、納品先と日本語で交渉したりということもしていました。

そうして、リーさん主導で改善が行われていくと資材の無駄がなくなり、製造過程が改善されたことで製品の品質も見直すことができました。さらに、最終的には6人でやっていた作業を3人で担当できるようになり、人件費も下がっていったんです。

採用時からリーさんのキャリアのステップアップについては考えられていたのですか

土井さん:もちろんです。採用時は「生産管理」という立場で採用していましたが、後々はマネジメントをする立場になってもらおうと考えていました。とは言え、1年間ぐらいはどうしても現場を見ないと、人の上には立てないですし、現場の方々と同じ作業ができるという前提でステップアップしてもらわないと困るので、事実上、最初の1年間は修行期間でしたね。

ただ、リーさんはとても飲み込みが早かったので、入社から半年ほどで「資材管理」の仕事も担当してもらうようになりました。そこから、リーさんが結果を出してくれたので、飛び級で現場の方を抜いて管理職に任命しました。

リーさんはご自身のキャリアアップについてどのように思われていますか

リーさん:最初は「管理職」になるとは思っていなかったです。私自身は現場でいろいろやりたいと思っていたんです。ただ最初に担当した「生産管理」という仕事をするなかで、製造に必要な資材の部品なども少しずつ把握できるようになっていくと、半年ぐらいで「生産管理」と「資材管理」をするようになりました。そこから、さらに任される仕事が増えていって現在は私一人で資材の発注から納品まで全部担当しています。

リーさん以外にも外国人の方は働いていらっしゃいますか

土井さん:現在、正式採用しているのはリーさんだけですね。ただ、一緒に人脈のネットワークを築いていくとか、他の会社の方と一緒に協力しながら動くという形ではいろいろな国籍の方と関係がありますね。

特に、リーさんが抱えている部下とか、外国人の人材紹介サービスに関わってくれている人間は以前より広がっています。そちらの方は全部リーさんが統括して動いてるんですよ。なので、リーさんを通して他の会社との繋がりが広がっていっていますね。

編集後記(前編)

外国人インターン生を受け入れることがまだメジャーではなかった時代に、リーさんをインターン生で採用されたDOI HOLDINGS。リーさんを採用されたことで、既存事業の改善がすすみ、会社全体が大きく発展していきました。労働力不足を補うためだけの採用ではなく、事業と人材の成長を考慮に入れて外国人人材を受け入れるという土井さんの考え方は、これからの外国人採用には欠かせないことではないでしょうか。

後編では、管理職となられたリーさんの新しいキャリアについてお聞きします。製造事業の改善を主導されたリーさんですが、さまざまな理由で製造事業の一部縮小を決定。そんなリーさんの今後のキャリアとは?また、リーさんの新たなキャリアとも関係の深い「外国人採用」について、土井さん、リーさんのおふたりにお話をお伺いします。

【インタビュー:株式会社DOI HOLDINGS】外国人採用成功の秘訣は「信頼」。高度人材を中心とした企業づくりとは(後編)