外国人労働者に対する日本語教育に関して、政府、地方自治体及び雇用企業による支援義務を明記した日本語教育推進法の成立から1年が経過した。
政府関連機関や行政と共に外国人雇用企業の支援を進める内定ブリッジ株式会社では、今年度、自治体による日本語教育に関する企業支援制度の実態について、全国47都道府県に対し、ヒアリング調査を実施した。調査概要は以下の通り。
今年度、企業における日本語研修の実施に関して、助成という形で直接的に企業を支援している自治体の事業数は、9都県10事業であった。多くの自治体が昨年の新たな在留資格、特定技能の創設や、同年施行の日本語教育推進法などを当該事業開始のきっかけとして挙げた。
日本語教育について専門的な知見を有する国際課が企業を直接的に支援する事業を担当している都道府県は存在せず、ほとんどが労働政策を担う部署がこれらの事業を予算化し運用している実態が明らかとなった。また、縦割り行政ではなく、複数の部署や関係者と連携し、より包括的な行政支援を目指そうとする自治体もいくつか確認された。
助成率の規定は概ね半額助成が多く、また上限額については幅があることが確認された。この他、教育対象となる外国人スタッフの在留資格に関しても、留学生への研修をその対象として部分的に認めるものから、技能実習生への研修実施についてのみ認めるもの、高度人材を中心に認めるものなど、各自治体がその地域の特性や支援の目的などによって異なる制度設計をしていることが確認できた。
助成事業の一部は、その申請において、当該研修を担当する日本語教師の専門性の証明や研修内容、研修計画が求められている。しかし、「教育を担う者は誰でもいい。日本語教育の素人でも構わない」「本事業に関して、日本語教育の研修効果は特に求めていない」と回答した自治体もあるなど、形式上は企業や技能実習生の管理団体における日本語教育の実施を後押しする制度であるものの、企業支援の目的が別のところに設定されているものもあった。
東京都、茨城県、福井県の3都県では、オンラインによる日本語教育を専門の民間事業者に委託する形で、その地域で働く外国人スタッフに対して、より広域的な日本語教育の機会を提供しようという取り組みを進めている。この支援事業は、都あるいは県全域で働く全ての外国人スタッフが等しく日本語教育サービスを享受できる可能性を有する仕様となっている点で、新しい取り組みと言えるだろう。
調査期間:2020年7/15(水)〜8/4(火)
調査対象:47都道府県庁
調査方法:電話調査(1都道府県あたり1〜4部署へ電話し、ヒアリングを実施)
調査内容:当該都道府県において、外国人雇用企業または管理団体が日本語研修などを実施する際にかかる経費について、企業からの申請に基づきその一部を助成する支援制度の有無。またこれに類する支援制度の有無とその概要。
外国人の雇用が急激に拡大しており、受け入れる企業の体制整備が求められている。活躍する外国人スタッフの日本語スキル向上は、安全性を確保し、業務効率を高め、企業の事業を成長させることに繋がる。地方自治体は、今後更に地域における外国人雇用の実情や課題に応じた支援の実現が求められるだろう。
【参考URL】【全国自治体による、外国人スタッフへの日本語教育に関する助成制度の実態調査】外国人スタッフ向けに企業が実施する日本語研修を支援する助成金制度の実態調査を全国の都道府県に対して実施しました