【インタビュー】「外国人採用は長期的目線で」多様な価値観が合わさることで社内に起こる化学反応とは

外国人労働者の需要が高まるなか、受け入れ拡大に向けた出入国管理法の改正も話題となっていますが、外国人採用に興味を持ち始めた企業の人事担当者の方も多いのではないでしょうか。

そこで今回jopus.biz編集部は、2年前から外国人採用を始めている株式会社ゴーリスト(以下、ゴーリスト)代表の加藤龍さんと、ゴーリストに入社2年目のパタマダ チナパさんのお2人に話を伺い、外国人採用の魅力を探ってきました!

ゴーリストは主に、HRという人事業界のビックデータ事業と、日本で働く外国人を増やすためのグローバルHR事業の2つの事業を行っている会社です。2019年2月時点で、メンバーの20%が外国人だという同社。社内がグローバル化したことにより、一体どのような変化が起こったのでしょうか。

株式会社ゴーリスト 代表取締役 加藤龍(かとう りょう)さん

「神様にフェイント、自然体、人生すべてネタ」
新卒第1期生として株式会社セントメディアへ入社。新規事業、人材派遣・紹介事業に従事。2005年、グループ会社の代表に就任し、営業職に特化した人材紹介事業を展開。その後IT・Web領域の新規プロジェクトを複数立ち上げ、技術系ベンチャーの経営コンサルなどを経て2010年に退職。2011年、株式会社ゴーリストを創業。HRビッグデータ事業、グローバルHR事業を展開。

株式会社ゴーリスト リードエンジニア パタマダ チナパさん

「美しい世界へ」
インド出身の25歳。2012年に早稲田大学へ入学しライティングと統計学を学ぶ。同大学を2016年に卒業。2013年、Algo株式会社創業し、2015年退社。2017年11月に株式会社ゴーリストに入社し、AI職種分類、Jopus Career/Jopus Scoutの開発を担当。

インタビュー目次

1. 多様な職種【外国人=エンジニアだけではない】

Q: 外国人採用を考え始めたのはいつ頃からですか?

加藤さん: 実は外国人採用をしたいというのは、起業したての頃からずっと思っていました。

もともと「1カ国10人、5カ国50人の会社にする」という“全員が経営者”で、アジアで展開するという会社のファーストメッセージを持ってたんです。創業の頃から、アジアでやるぞ!というのは決めてて。

まずその1歩目として、起業して1か月目にバングラディッシュに会社を立ち上げたんですよね。もともと、外国人と一緒に働きたいという気持ちはあったんです。実際に採用を始められたのは……2年前くらいからですね。

チナパさん:僕も今、入社して1年とちょっとです。日本で勉強してからインドに戻って、また日本に就職しに来ました。

Q: 社内で働いている外国人のみなさんは、主にどういった仕事をしていますか?

チナパさん: 僕は主にプロダクト開発をしています。あとはゴーリストが最近、機械学習に力を入れているので、AIチームのリーダーもやっています。

加藤さん: あとはエンジニアもいるし、日本で働く外国人のカウンセラーもいます。他にも、今はホーチミンにも会社があるので、現地のベトナム人には日本語のデータベースの加工業務を任せています。

「外国人=エンジニア」と思われがちですけど、弊社では営業周りやオペレーションなどもやってもらっています。

エンジニアだと言語はJava等なのであまり言語能力は必要ないかもしれないですけど、やっぱり営業などの日本人とのコミュニケーションが必要な仕事は、どうしてもハードルが高いですよね。最初は、難しいかな?と思っていたのですが、やってみるとみんな意外に「出来るやん」というのが、今のうちの状況です。

Q: 外国人メンバーと働くことに関して、最初は不安や心配事は何かありましたか?

加藤さん: あんまりなかったです。もともとアウトローな人材の集まりだったので、日本人だけでもすでに多国籍企業感があったんですよね(笑)。

なので、むしろ外国人メンバーのほうが、日本の礼儀をしっかり身につけていて、お辞儀や目を見て挨拶ももちろんできるので、日本人より日本人らしいくらい(笑)。

チナパさん: 僕自身も就職する前は、日本の文化に馴染めるかどうかや働き方などに不安はありました。「ずっと仕事してるのかな」とか、「仕事楽しいのかな」とか。

でも実際にゴーリストのオフィスに来て社員の方と話をしたら、ワイワイしてて、とてもいい雰囲気で。そのときに「ここで絶対働きたい!」と思ったんですよね。そこで不安はまったくなくなりました。結局はみんな、同じ人間なんですよね。

加藤さん:本当に。日本語だけ話せたら、だいたい大丈夫だと思いますね。

2. 外国人メンバーの力で生まれる外資系企業とのビジネス

Q: 外国人メンバーによって業務面でプラスになったことはありますか?

加藤さん: まずエンジニア界隈の話からすると、インターネット上にある情報の8割は英語なので、英語で情報にアクセスできるというだけでも、かなりのアドバンテージですよね。

日本語だけだと、どうしても情報が限られてしまうので。我々は情報産業でビジネスをやってるので、英語でいちはやく情報にアクセスできるというのは、かなり大きいです。

あとは、人工知能(AI)を使って何ができるかという話が出たときに、「人工知能最先端」というとアメリカやロシア、中国、インドなどの軍事が強い国ですよね。

今チナパがやってくれているんですが、外資系企業とスカイプで商談してくれて、実際にビジネスを進めることができるのは、本当に有難い。

そもそもチナパがいなかったら、インドにあるAIの会社の商品を、うちのビックデータと紐つけてみよう、という発送は一切生まれなかったんじゃないかと思います。

チナパさん: 僕自身も、会社からたくさんのことを学んでいます。

日本で働いて、英語が話せて、違う国の文化も知っていることで、かなりキャリアの可能性が広がっていると感じてます。加藤さんがいうように、海外との取引ができることは自分自身の強みですね。

3. 外国人メンバーとの触れ合いが日本人メンバーの成長にもつながる

Q: 外国人メンバーによって社内の雰囲気は以前と変わりましたか?

加藤さん: 変わりましたね。小さいことでいうと、お酒を飲むとものすごくノリがいい、日本とフランスのハーフのメンバーが入社してきたんです。

そのメンバーが、普段飲み会のときは一人で飲んでいる日本人社員に声をかけて、肩を組んで裏ピースさせたり(笑)、一緒に陽気に飲み始めるということがありました。

そういったオフコミュニケーションの強さは、すごく感じますね。僕自身がバングラディッシュに会社を持っていたり、セブに3年住んでいたので特に実感していますが、基本的に外国人メンバーはみんな明るい。シンプルに、社内を明るくしてくれる人間は貴重ですよね。

あとは日本人メンバーの成長にもつながっていると感じます。日本人って、外国人と接する機会が少ないんですよね。「外国人と触れあう」というと、自分の中でギアを1段上げなければいけなかったりとか、日本語で伝えるときも「ちょっと丁寧に話さないとな」という気持ちに自然となりますよね。

そういった、普段しない努力をすることで「自分自身のバージョンアップ」ができるんです。

4. 外国人メンバーはチャレンジ精神がとにかくすごい

Q: チナパさんは、何かゴーリストで挑戦したいことはありますか?

チナパさん: ゴーリストで本格的に機械学習を始めるというのは、僕にとっては大きなチャレンジです。このプロジェクトをしっかりやり通して、ゴーリストが「機械学習ができる会社」であると周りから認められるように頑張りたいです。

Q: 母国をでて日本に来る方は、やはりチャレンジ精神旺盛ですね!

加藤さん: そうですね。外国人メンバーが持つチャレンジ精神にはよく驚かされます。僕「ヤバイな」と思ったことがあるんです。

何かと言うと、僕は2011年に起業して、その1か月後にロニーというバングラディッシュ人とすごく仲良くなったんです。一緒にバングラディッシュに行き、そこで会社を立ち上げました。

彼と、会社のビジョンについて話をしてたときに「ロニーはどういう会社作りたいの?」と、聞いてみたんです。そしたら「俺は財閥を作りたい」と、言うんです。「だって加藤さん、日本の歴史を見たとき、財閥のような大きな会社はすぐ伸びたでしょう?バングラデッシュはまだ、その段階なんです。」と。

バングラディッシュでは、未だに竹の足場でビルを作っているような状況です。でも、人口は1.7億人と日本よりも多い。そして若者で溢れています。つまり、日本の戦後と同じ状況が今、バングラディッシュで起こってるんですよ。日本で住友とか伊藤忠ができていた段階です。

ロニーの話を聞いて、目標のスケールの大きさとハングリー精神に感心しました。自分の国のステージを客観的に見ることができていて、日本とも比較した上で「財閥を作る」という大きなビジョン。今の日本でここまでの大きなビジョンを持つ人はなかなかいないですよね。

現に彼は今、①建設業やバングラディッシュ初の②地下鉄事業と③水、④広告事業や⑤レンタカー事業を行い、着実に財閥に近づいています。何をやっても儲かる。

Q: やはり社内にもチャレンジ意欲のある外国人メンバーが多いのでしょうか?

加藤さん: はい。そもそも母国を出て日本へ来るという時点でチャレンジ精神旺盛で、キャリアを築きたいと考えている人が多いですからね。

ベトナムやインドなど、自分の国の経済が伸びている感覚を、肌感で知っているからこそみんな必死で頑張ろうとするんです。そういう意味で相対的に見ると外国人のほうが「チャレンジしたい」とか「もっと頑張りたい」、「結果を出したい」「お給料稼ぎたい」という気持ちが大きいと思います。

それがいい意味で、今いる日本のメンバーとも刺激しあい、全体的にチームが強化されていますね。多様な価値観が合わさることで化学反応が起きて、会社のみんながそれぞれの個人をバージョンアップしていく、という雰囲気がとてもいいです。

5. 外国人採用をする際に押さえるべきポイント

Q: 外国人採用で意識していることはありますか?

加藤さん: 日本人・外国人での違いはそんなにはなくて、会社のバリューに共感してくれるかを大事にしています。くだけた言い方をすると、基本的に採用するのは人間的に「エエやつ」です。

採用者と2人っきりでも3、4時間一緒に気持ちよくいられるかは大事にしてますね。あとは外国人に関しては、英語は必須ですが、スキルや学歴は特に気にしていません。国籍が違おうが、言語が拙かろうが、いい人を取ることをベースにしておけば、なんとかなるみたいなところはありますね。

チナパを見てわかるとおりです。もう彼、いい人オーラが滲み出てますから(笑)。

チナパさん:ありがとうございます(笑)。

Q: 外国人採用をする際に、気をつけることはありますか?

加藤さん: これはよく言われますが、ビザですかね。

採用したい外国人が今、外国に住んでいて日本に来たいと言ったときに、まずひとつはビザ要件があっているか確認が必要です。そこは合格していても、行政書士さんの伝え方によっては、謎の理由で取得までに3か月かかるような場合もあります。

それにより入社するタイミングがいきなりずれたりすることもありえるので、外国人採用に強い行政書士さんを選んでおくのが大切ですね。

チナパさん: そうですね……。私も、ビザの取得には2か月くらいかかった記憶があります。

Q: ビザ以外で会社側が、外国人メンバーが日本に滞在するときにサポートした点はありますか?

加藤さん: うちの場合は、管理部が調べながら、専門家と行政書士さんと一緒に印鑑から、家、口座などの住むためのインフラはサポートします。

そもそも外国人メンバーには「仕事」の前に「生活」があります。日本で働きたい外国人の第一の理由は「日本に住みたい」なんですよね。日本に「住みたい」から働くというのが前提にあるんです。

ゆくゆくはうちのjopusも、“働く・暮らす・学ぶ・恋する”まで、生活のインフラもサポートできるようなサービスにしたいと思ってますので。「暮らす」部分のサポートはやっぱり会社としてサポートしてあげないと。不安になってしまいますよね。

ビザの更新も忘れないように会社としてルール化しなければいけません。下手すると、不法滞在にもなりかねませんからね。今後、法律もどんどん変わっていくので、情報に強い行政書士さんとパートナーを組んでやることが大事だと思います。

チナパさん:僕も入社するとき、色々サポートしてもらいました。今でも、何かビザのことなどでわからないことがあれば、会社に聞いています。

6. 「外国人」と「日本人」をわけない“ひとりの人として向き合う”考え方

Q: 文化的な違いで外国人メンバーと接する際に気をつけていることはありますか?

加藤さん: 超レアなケースですけど、うちに過去にいたイスラム教徒のメンバーが、1日5回礼拝を個室でしないといけませんでした。

当時うちの会社は、社員をクライアントさんに常駐させていたので、常駐先に交渉して礼拝のために会議室を貸していただいていました。

あとは、ベジタリアンのメンバーは焼肉に連れていけないとか、食や宗教の違いは意識する必要がありますね。わからないときは本人にダイレクトに聞いた方がいいと思います。

人前で怒る文化も、海外ではもうあまりありません。フィリピンに行ったときに、親が子供を叱っていたら周りのスタッフが止めに入るという場面を見たことがあります。最近はそういう会社も減っていると思いますが、何かあったら個室で1on1で話すようにするなどのマネジメントが必要ですね。

あ、あとは今回ベトナムのホーチミンの会社であったんですけど、ベトナムでは旧正月の前に必ずボーナスがあると、ベトナム人メンバーから言われたんです……。ほんまかいなぁ!と思ってベトナムの他の会社を調べたら、本当でした(笑)。

そういうところは驚きますが、経験を重ねながら日々、僕自身も学んでいます。あとは知り合いに聞いたりね。

それこそ、バングラデッシュはお酒を飲めないといいますよね。厳格な国なので。だからバングラディッシュ人のロニーとの会食の時も、バングラ人だからお酒が飲めない場所にしないとなぁと思っていたんですけど、彼、会っていきなり「ナマ!」って(笑)。飲むんかい!みたいな。

ロニーはバングラ人ですが、お酒もタバコも吸いますし、牛豚も食べます。

要するに、例外もあるということです。一緒くたに、「〇〇人はこうだ」と決めつけたらだめなんです。国籍で決めつけるのではなく、ひとりの人間として個別で聞く必要があります。ある種、外国と日本で分けるのもナンセンスだと僕は思っています。

7. 外国人採用は「定量」と「定性」の両面を長い目で見る

Q: 今後、外国人メンバーにどのように会社で活躍して欲しいですか?

加藤さん: 今はある程度、日本語が話せる外国人を採用していますが、いずれは英語だけで仕事ができる「ゴーリストグローバル」を作りたいと考えています。それによって採用とビジネスの可能性がさらに飛躍的に広がると思います。

たとえばチナパは、もう一人のインド人のメンバーとAIチームの責任者を担当しているので、ゴーリストが海外へ出ていくときに経営メンバーとして出れるくらいの力を蓄えて欲しいです。代表の僕が出るのではなく、外国人メンバーが今後どんどんうちの会社のグローバル事業を引っ張っていってくれることを望んでいます。

チナパさん: このような、チャレンジする機会がたくさんあることが、ゴーリストのいいところだと感じますね。

加藤さん:新卒でうちの会社に入った、ベトナム人のトゥイという女の子がいます。僕が「アジアでこういうビジネスを展開したい」という話をしたら、すぐに「じゃあ私はシンガポールに行きたいから英語をもっと頑張ります!」と、意欲的な返事をしてくれました。そういうの、すごくいいですよね。

他の外国人メンバーも、きっかけは「日本で働きたい」から始まっていますが、彼らと一緒に日本ではもちろんアジアやオセアニアと、どこでも活躍できるような企業群にしていきたいです。そうすれば自然と、いい人材が集まり、外国人が活躍しやすい環境になりますよね。

会社としても日本だけでビジネスをするというよりは、世界で展開していくほうが生き残りやすく、面白いことができるので外国人の採用比率は意図的にあげていきたいです。

Q: 今後、外国人採用を考えている方に向けてのアドバイスをお願いします!

加藤さん: 外国人を採用する際に 効果がすぐにはわかりにくいというケースはあると思うんですよね。これは外国人に限った話ではないですが。

たとえばAという課題に対してAを解決するスキルを持ち、入社して1か月で課題を達成したら「すごいやん!」と、わかりやすいですよね。

一方で、定性的な要素はすごく大事だと思っていて。今いるメンバーの活性化や、視野や可能性が広がる、視座が上がる、というのは普通、入社してから2、3か月ではわからないですよね。半年一緒にやってみて、コミュニケーションを交わしたり、新しいビジネスにチャレンジしてもらったときに、じわじわと、わかるものです。

1年後に、「定量的に売上が上がった」というのは日本人も外国人も変わらないと思います。しかし、定性的なものはわかる。要するに、三大財務諸表には載らない経営の効果や、社風の強化などは絶対に出てくると思うので、もう少し「定量」と「定性」の両面を長い目で見て、採用するのが大切だと思います。

「活躍するやつおんの!?」とかよく聞かれますが、「そりゃあ、おったらみんなとるわ!」と思います(笑)。それ以外の効果、効能は必ずあるので外国人採用にはぜひ、チャレンジしてほしいと思いますね。

8. 編集後記

今回のインタビューで印象的だったのは、加藤さんが持つ外国人メンバーへの熱い想いと、チナパさんが持つ仕事に対するチャレンジ精神です。

違う国で生まれ育ったメンバーと働くことで多様な価値観が合わさり、それぞれの国では学べないことをお互いに補い合うことができます。経済成長が著しい国で生まれ育った外国人メンバーからは、先進国で育った日本人が持つ以上のチャレンジ精神や成長意欲を感じることができます。

メンバー同士で刺激を受けあい、全体的にチームが強化されていくことで個人がバージョンアップされていくことは会社にとって大きなプラスとなります。加藤さんのお話にもあった通り、外国人採用は短期的な目線ではなく長期的にみることが大切です。

海外へのビジネスチャンスの拡大や社員の成長を促進させたいと考えている方は、ぜひ外国人採用を検討されてみてはいかがでしょうか。

9. 取材動画はコチラ

Part1

Part2

Part3

https://youtu.be/6fGY1TYKecM |