新型コロナウイルス感染拡大の影響により、来日予定だった外国人技能実習生が日本に来ることができず、農業や水産業、運送業、介護事業などを中心として人材不足が深刻化している。その一方で、製造業や飲食・宿泊業などでは、事業を縮小せざるを得ず、外国人技能実習生が解雇されるケースが相次ぐなど、外国人技能実習生を取り巻く環境で混乱が続いている。
2019年10月末現在の「「外国人雇用状況」の届出状況【概要版】」によると、外国人労働者数は約166万人と前年同期比で13.6%増加した。そのなかでも技能実習生が約38万4千人と前年同期比で24.5%増と最も増加率が高い。この調査で示された通り、外国人技能実習生によって、多くの日本企業の人手不足が救われてきている。
しかしながら、現在は新型コロナウイルスの影響により、新たな外国人技能実習生が来日できない状態が続いている。来日できる時期の目処も立っておらず、外国人技能実習生を頼りにしていた介護事業や農業などでは国内での人材確保に奔走しているものの、厳しい状況が続いている。
また、人材不足に苦しむ業界がある一方で、事業を縮小せざるを得ない製造業や飲食・宿泊業などでは、外国人技能実習生が解雇されるケースが相次いでいる。業績不振などで止むを得ず解雇する場合は、企業は同一職種で受け入れてくれる他の企業を探さねばならないが、現在の状況下では受け入れ先を見つけることも困難な状況である。
政府は、現在の新型コロナウイルス感染拡大の状況を鑑みて、失業した外国人技能実習生らに対して、従来は許されていない他職種への転職を認めると発表した。決められた業種でしか活動できない技能実習生の収入源の確保と、人材不足が顕著な介護や農業などを含む産業分野に人材を供給することを目的としている。他職種での再就職を希望する外国人の申請は、出入国在留管理庁が取りまとめており、自治体や業界団体を通じて事業者に情報が提供される仕組みだ。
今後、新型コロナウイルスの感染拡大が終息したとしても、日本と海外を自由に行き来できるようになるまでには相当な時間が必要となるだろう。インバウンド需要を見込んでいた観光業や宿泊業などの業界では失業などが相次ぐ一方、農業や介護など常に人材不足に陥っている業界でも外国人技能実習生が来日できないことで人手不足に苦しみ続けている。
今回の新型コロナウイルス感染拡大での影響を受けて、外国人技能実習生の受け入れの体制を改めて見直して行く必要があるのではないだろうか。従来の短期的な人材不足を補うための外国人雇用ではなく、日本の経済を支える一員として長く共に働いていける社会へと変わらなければならない。
【参照ページ】
コロナで受難、外国人労働者=介護・農業への就職支援—入管庁
新型コロナ感染拡大で外国人受け入れ政策は変わるか?