外国人採用にまつわるトラブルと対策まとめ

人手不足により外国人採用を検討する企業が増えていますが、採用後にどのようなトラブルがあるのかを気にする人事担当者の方も多いのではないでしょうか。日本で生活し働く外国人は年々増え続けており、都内のコンビニや飲食店や宿泊施設では働く外国人スタッフの活躍を見る機会も多くなりました。

一方で、文化・習慣の違いや言葉の壁の問題からトラブルが発生することがあります。そこで今回は外国人採用に関するトラブルを「採用」「就労」「退職」ごとにまとめ、対策方法をご紹介します。事前に対策を立てておくことで外国人スタッフを上手に活用し、今後の会社の発展にぜひ役立ててください。

外国人採用に関するトラブル

外国人採用をめぐるトラブルには様々なものがありますが、ここでは発生するトラブルを次の段階ごとに見ていきます。

  1. 外国人を採用するときのトラブル
  2. 外国人が就労しているときのトラブル
  3. 外国人が退職するときのトラブル

採用時、就労時、退職時のそれぞれについて、よくあるトラブルと対処方法をご紹介します。

1. 外国人を採用するときのトラブル

外国人の採用時によく起こる代表的なトラブルは、次の3つです。

  • 在留カードの確認を怠る
  • 在留資格がない・在留期限が過ぎている
  • 雇用のミスマッチ

それぞれについて詳しく説明します。

在留カードの確認

採用したい外国人がいても在留資格がなければ雇用することはできません。外国人が日本で働く場合は就労ビザを取得する必要がありますが、この際、企業側は外国人が所有する在留カードを確認する必要があります。在留カードとは日本に中長期間滞在する外国人に所持を義務付けているカードです。外国人は在留カード記載の在留資格の範囲内でのみ日本で活動することを許可されています。在留カードがなければ原則外国人を就労させることはできず、不法就労させた場合は事業者も処罰の対象となってしまうため十分注意してください。

在留資格がない・在留期限が過ぎている

在留期間が過ぎた場合でも外国人は就労できません。そのため在留カードの有効期間を確認する必要があります。このほか、密入国者や強制送還されることが既に決まっている外国人も働くことはできません。ここで不法就労となるケースを整理しておきます。

  1. 不法滞在者(密入国者、オーバーステイ)
  2. 働く資格がない外国人
  3. 在留資格範囲外の仕事をする外国人

観光などの短期滞在目的で入国した外国人を働かせることはできません。また在留資格の一つである「留学」では原則就労することはできないため、アルバイトなどをするには「資格外活動許可」を入国管理局から受ける必要があります。また、3つ目については、通訳として来日した外国人が調理師をしているなど認められた職種以外の仕事をしている場合を指します。このほか難民認定申請中の外国人も許可なしでは就労できない点も留意しましょう。

雇用のミスマッチ

外国人を採用する際は事前に「どんな仕事が可能か」「いつまで働けるのか」「1日何時間働けるのか」など在留資格に関する確認から、「日本語力」「コミュニケーション能力」「経歴・学歴」「志望動機」「採用後に成し遂げたいこと」など本人の資質に関する調査、「業務内容」「報酬・待遇」「キャリアパス」などの条件面に関する合意が大切です。

また日本文化に対する理解度も重要です。日本での暮らしやルールを守ることができず、早期退職する外国人労働者は少ないため、在留資格の有無から私生活を含めた項目を総合的に判断して、ミスマッチによる退職を防ぎましょう。

2. 外国人が就労しているときのトラブル

在留資格などの事前確認を済ませ、問題なく外国人を採用した後でも次のようなトラブルが起きる可能性があります。

  • 外国人労働者の逃亡
  • 言葉の壁や文化の違いに関する業務上のトラブル

外国人労働者の逃亡

報酬額が最低賃金を大きく下回っていたり、過酷な職場環境に置かれた技能実習生が逃亡したりするケースが後を絶ちません。事業主が外国人を単なる安い労働力としか捉えず、十分なケアを行わないことが原因で発生するトラブルです。

外国人労働者を戦力として雇い、長く働いてもらうためには、事前に結んだ雇用契約の内容を会社側が遵守する必要があります。日本人が耐えられない劣悪な労働環境には外国人も耐えることはできません。外国人労働者は日本人と同じ待遇で迎え、さらに孤立しないように積極的に話しかけたり、相談に乗ってあげるといった工夫が大切です。

言葉の壁や文化の違いに関するトラブル

外国人は言葉や習慣・文化が日本人とは異なります。例えば、海外では基本的に与えられた業務の範囲内でしか仕事をしないため、外国人の多くは基本的に残業をするという文化がありません。外国人労働者への歩み寄りも大切ですが、あらかじめ雇用契約書に残業の有無を記載し、日本の職場環境に徐々に馴染んでもらう取り組みが必要になります。

また言葉の壁の問題もあります。外国人労働者は日本語能力がまちまちなので、同僚とコミュニケーション不足に陥りやすくなります。外国人は話しかけられないと孤独と不安を募らせてしまうため、外国人社員に対する日本語研修を定期的に実施するほか、日本人社員に対しても語学研修をすると互いの理解度が深まり効果的です。コミュニケーションを図りやすい職場づくりをしてあげましょう。

3. 外国人が退職するときのトラブル

外国人が退職するときもトラブルになるケースがあります。例えば「解雇理由に納得しない」「引き継ぎせずに退職する」「不当解雇を理由に訴えられる」などの事例です。このようなトラブルを避けるためにも雇用契約書に退職・解雇理由を明確に記載し、退職時には外国人と十分に話し合い、納得してもらいましょう。

なお退職手続きは日本人が退職するときと同様です。必要な場合は「退職証明書」を発行します。退職証明書は外国人が次の転職先で提出する書類です。このほか退職した本人(外国人)は、14日以内に入国管理局に届け出必要がありますが、知らないことが多いため教えてあげましょう。

まとめ

いかがでしたでしょうか。人手不足の現場では外国人労働力は欠かせません。外国人労働者を雇う際のトラブルを事前に把握しておけばミスマッチを防ぎ、会社の今後の発展を担う貴重な戦力となります。また採用後は積極的にコミュニケーションを図り、書面でのやり取りを重視するなど、グローバル化を意識した外国人が働きやすい環境づくりに努めましょう。